夜間中学は、さまざまな理由で十分に義務教育を受けられなかった人や外国人などの「学び直しの場」だが、香川県の夜間中学は全国で唯一、不登校の現役の中学生を受け入れることで知られている。
どのような教育が行われているのかを取材しながら、学びの多様化について考えた。
「現役中学生」が通える夜間中学校
香川・三豊市にある「高瀬中学校の夜間学級」。午後5時半から授業が始まり、10代から80代までさまざまな年代の人が学んでいる。
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50代の生徒:
学校に通えていなかった、病気とかで。仕事を始めたときに自分が恥をかくことがあった。字が書けなかったり、計算ができなかったりとかで
6人が学ぶ社会科の授業。13歳のリサさん(仮名)は、2023年5月にこの夜間学級に編入した。
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リサさん(仮名・中2):
これ、かわいいよね。最初怖かったけど、フォルムがかわいいと思ってきた
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0時間目で足りない時間を補う
2016年、不登校などで学校に通えなかった人の教育を確保しようと「教育機会確保法」が成立したのをきっかけに、国は、各都道府県と政令指定都市に少なくとも1校ずつ、夜間中学を設置するよう呼びかけている。
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現在、公立の夜間中学校は全国に44校あるが、富山県を含む地方の多くには設置されていないのが現状だ。また、現状では現役の中学生は夜間中学に入れない。そうした中、国は2022年3月、香川・三豊市の高瀬中学校の夜間中学を「学びの多様化学校」、いわゆる「不登校特例校」に指定した。
通常、公立中学校を卒業するには1年間に平均1,015時間の授業を受けるとされているが、夜間中学の授業時間は約700時間。足りない分は、生徒の社会経験を考慮することで卒業を認定している。
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現役の中学生には社会経験がないので、このいわゆる「不登校特例校」に指定されている高瀬中学校では週3回「0時間目」を設けたり、複数の教科を抱き合わせた授業を行い、通常の中学生と同じ年齢で卒業認定が与えられるようになっている。
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高瀬中学校 夜間学級・城之内庸仁教諭:
住んでいる場所で、(不登校の中学生が)受け入れられるとか受け入れられないとかはあってはならないと考えている。例えば高校であるとか大学であるとか、専門的な知識を学びたいからそこに行くのとは訳が違うと思う。昼の学校もあり、さまざまな選択肢があって、その子にとってどこがいいかを提示することは、せめて義務教育ならば、わたしたち大人は行政も含め責務だと思う
夜間中学校を選択肢の1つとして
リサさんが不登校になったのは小学校5年生ごろ、人間関係がきっかけだった。「夜間中学」の存在を知り、隣の徳島県から1時間以上かけて通っている。
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リサさん(仮名・中2):
2年~3年間、それくらい学校には行けてなくて、自分でもびっくりしている。みんな優しいし、先生もなんか温かいなって今までにない感覚。無かったらだめみたいな
リサさんの母親も、心境の変化を喜んでいる。
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リサさんの母親:
夜間中学に来られるようになって、小さなことだが少しずつ前向きな言葉が出たり、本人も充実感が出始めたのかなと思う。1つの選択肢としてはありかなって。私たちにとってはすごくありがたい場所、存在だった
高瀬中学夜間学級ではリサさんのほかに中学生がもう1人通っている。山内来瞳さん、14歳だ。
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山内来瞳さん(中2):
同級生が大勢いて、うるさすぎるのが苦手で、でも勉強したかったからここがいいかなって
来瞳さんは不登校になってから、朝起きる事ができなくなっていたという。
山内来瞳さん(中2):
朝、不登校のときは起きれなかったけど、だんだん早く起きられるようになってきて、高校も頑張ればい行けるかなって
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2人は現在、中学2年生。2024年まで通うと中学卒業の資格を得ることができ、高校に進学するチャンスが生まれる。
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リサさん(仮名・中2):
勉強頑張って高校に入りたい
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山内来瞳さん(中2):
将来は教師志望で、高校は全日制に行きたいので必死に勉強している
新たな学習の場で、学びなおしを始めた2人。「不登校の現役中学生」が通える「夜間中学校」で、将来への扉が開こうとしている。
夜間中学で学ぶリサさんと来瞳さんが、再び前を向き始めた姿を見ると、不登校になっても教育の環境を替えることで新たなチャンスが生まれる先進的な事例といえそうだ。
(富山テレビ)