10月16日に開かれた沼津市議会(静岡県)の本会議で、江本浩二 議員に対する懲罰動議が可決されたものの本人は陳謝文の朗読を拒否した。これにより議会は空転し、最終的には江本議員に出席停止処分が科された。
賛成多数で懲罰動議を可決 しかし…
沼津市議会の江本浩二 議員をめぐっては、9月27日の本会議で「実は私の農地の中にも市の土地が存在しています。その土地は現在、竹林として私が管理をして、そこから毎年、タケノコを掘って利益を得ています。販売したりしています」などと自ら不適切行為を告白するかのような発言したことに端を発し、議員22人の連名で懲罰動議が提出された。
江本議員は後に「議員となって今まで16年以上、販売したことはありません」「言葉が足りずに誤解を与えてしまった」などと釈明。
この記事の画像(5枚)だが、懲罰動議を提出した議員らは提案理由の中で述べている通り「本会議において不適切な行為を容認するかのごとく発言」したことを糾弾したのであって、「発言の真偽や意図は定かではありません」と当該行為が“既遂”か“未遂”かは問題視していない。
このため当然のことながら弁明が受け入れられることはなく、10月16日に開かれた本会議で懲罰動議は可決された。しかし、江本議員が「受け入れることは出来ません」と議場での陳謝文の朗読を拒否したことから、再び懲罰動議が提出される事態に発展。
陳謝よりも重い議会への出席停止に
再び開かれた懲罰特別委員会で江本議員は「出席停止処分となれば市民の負託を受けた議員としての責務をまっとうできなくなる」などと主張したが、ついぞ発言を撤回する意思が示されることはなく、陳謝よりも重い議会への出席停止(1日間)とする処分案がまとまり、本会議で可決された。一人の議員が1日に二度も懲罰を科されるのは極めて異例のことだ。
これを受け議場からの退席を命じられた江本議員は取材に応じ、「残念ですが、出席停止は沼津市議会が下した最後の議決であるということで受け入れました。私はタケノコ泥棒というみなさんが持っているイメージを一生背負っていかなければいけない。ただ、信念に基づいて行ってきたことなので後悔していません」と明るさを取り繕った表情を浮かべた。
一方で「懲罰は勲章だと思っています。議論の中で、いろいろな要因があるものの、多数派が『こんな発言を許しておいたらヤバイ』と思って懲罰を科すわけなので勲章だと思っている」と持論も展開。
市有地の竹林に頭も悩ませるも…
江本議員は最初に懲罰動議が提出された際の10月10日の本会議で発言の機会を求め、「タケノコの伸長は目覚ましく、毎年春には官民の境界など何ら気にすることなく、我が家のヒノキ林、さらには茶畑までにも侵出し、退治しない限り立派な竹に生長します」と訴えていた。
この言葉の通り江本議員が市有地の竹林に頭を悩ませていたのは事実なのだろう。とはいえ、そうであるならば一義的には沼津市に対して竹林の整備や管理について相談するのが先決だったはずだ。ましてや江本議員は市議会議員という立場で市当局に直接、見解や現状について問いただすことが出来る。しかし、議事録を見ても江本議員が初当選以降に本会議の場で市有地の管理や竹林の整備について質問した形跡は見当たらない。
16年余りの議員生活で計5回の懲罰
一般的には国会議員であっても、地方議員であっても、一度も懲罰を科されることなく議員生活を終える人が大多数だ。ところが江本議員の場合、これまでにもすでに3回の懲罰が科されている。
1回目はまだ当選1期目の2009年3月。江本議員が本会議で質問を行った際、別の議員に向かって壇上から大声を発したり、自席に戻る途中に抗議のため詰め寄ったりしたことが議会の品位を汚したとして戒告処分が下された。
2回目は2年後の2011年2月。本会議を無断で欠席したため、議会の信用失墜につながるなどとして、議場で謝罪文を読み上げる陳謝処分となった。
そして3回目が6年半前の2017年3月。当時の市長が定例会直前まで「小脳出血」で入院していたことから、江本議員は政策判断への影響について質問した。この際、病名を「脳卒中」と誤認した上で「脳卒中を起こした際には何らかの高次脳機能障害が必ず生じている」「正常な状態ではない」と断言。市長に対する中傷だけでなく、脳卒中患者に対する差別と捉えられかねないとして、またしても陳謝文を朗読することとなった。
過去30年の間に沼津市議会で懲罰を科された議員は4人しかいない。中でも江本議員の5回は最多だ。
2023年4月の市議会議員選挙で5回目の当選を果たした江本議員。この時「江本浩二」と名前を書いた1661人の有権者は、江本議員が不名誉なことで有名になることを期待したのではなく、沼津市の発展に寄与することを期待して票を投じたはずだ。
(テレビ静岡)