発達した雨雲が次々と通過し、同じ場所で長時間、非常に激しい雨をもたらす「線状降水帯」が7月3日、2度にわたって熊本県に発生し、各地で橋の崩落や洪水、建物が倒壊するなどの被害が出た。
これまでのところ人的被害はなかったものの、県内に大きな爪跡を残した今回の大雨、ドキュメントでまとめた。

3日午前6時半ごろ 線状降水帯発生

2日午後10時半ごろ、合志市では車の前方が見えにくくなるほどの雨が降り続いていた。

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有田和令記者:
(7月2日)午後11時の菊池市です。次第に雨脚が強まってきました。時折、稲光も見えます

九州北部付近にある梅雨前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込み、熊本県内は大気の状態が非常に不安定になっている。

県内では、3日未明に山都町や益城町で1時間に80ミリを超える猛烈な雨を観測。

気象台は午前6時半ごろ、「熊本地方と阿蘇地方に線状降水帯が発生した」と発表した。

平年7月の1カ月分の降水量超える地点も

正午すぎには、甲佐町で1時間に79ミリの非常に激しい雨を観測。宇城市付近では、レーダーによる解析で110ミリの猛烈な雨が降ったとみられ、気象台は午後1時半に再び、「熊本地方で線状降水帯が発生した」と発表した。

7月2日夕方の降り始めから3日午後5時までの総雨量は、山都町など多い所で300ミリを超え、6月29日からの雨と合わせると、南阿蘇村では700ミリに迫り、すでに平年の7月1カ月分を超える雨が降った所もある。

カメラがとらえた大雨 ドキュメントで

2日午後11時ごろの熊本空港の情報カメラには、殴りつけるような大雨と雷が映っていた。
そして3日午前6時半ごろ、降り続く雨に気象台は、県内に線状降水帯が発生したと発表した。

大津善彰カメラマン:
午前7時、阿蘇市です。大粒の雨が降っています

水しぶきを上げながら車が冠水した道路を走る様子や、川のようになった歩道が県内各地で見られた。

後藤祐太アナウンサー:
(午前7時半ごろ)熊本市中央区です。あたり一面冠水しています。すでに腰の高さくらいまで水が来ています

山都町では荒れる五老ヶ滝川 崩落した金内橋

山都町を流れる五老ヶ滝川は、まさに濁流となって激しく水しぶきを上げ、今にも周りをのみ込みそうな勢いだった。

山都町 井手文雄教育長:
日頃、(役場から)川は見えないのが普通だが、様子を見渡した時に激しく水しぶきをあげていた。大変な異常な増水だと心配したところで、少なくとも私の経験上ではないこと

また、山都町では国道にかかる橋が崩落した。

渕上洋平カメラマン:
国道455号線です。大雨の影響で金内橋が崩落しています

住民:
やはりひどかった。雷は鳴るし、ひどく降っていた。びっくりしました。こういうことは今までなかったし、がっくりですね。あ然としました

岡崎宣彰記者:
(午前9時半)熊本市中央区の白川にかかる大甲橋の上です。白川は現在、一部で氾濫危険水位を超えています

熊本県内を走る一級河川の白川。大雨の影響で、白川流域では一時、18万1,828世帯、36万3,410人に避難指示が出された。

熊本地震の被災地・益城町では川の氾濫に土砂崩れも

また、熊本地震で2度の震度7に襲われた益城町では、木山川と岩戸川が氾濫した。

視聴者:
ここまで来たのは初めてです

視聴者:
向こうの田んぼにも川の水が超えてしまっている

西村勇気アナウンサー:
(午前9時半)氾濫した益城町の木山川そばです。道路も完全に冠水しているんですが、より川に近いところに目をやりますと、車が2台立ち往生しているのが分かります。車輪が見えないほど水が来ています

木山川の氾濫した現場周辺には、多くの流木が散乱し、まるで海のような冠水が広がった。

岡崎宣彰記者:
(午後0時半)益城町津森です。目の前を流れるのが木山川で、この下流で氾濫が起きました。木山川の横を走る県道が大きくえぐれています

氾濫した木山川の上流では、川の横を走る県道熊本高森線が、2車線にわたり崩落した。

テレビ西日本・櫻井福大記者:
益城町上空です。土砂が山の方から流れ出て、寺が倒壊しています。屋根も完全につぶれてしまっています

西村勇気アナウンサー:
現場には赤土の臭いが漂っています。お寺の裏山が崩れました。そこから流れ出した土砂が瓦ぶきの寺の本堂を押しつぶしました

寺の関係者:
6時半ごろじゃなかったでしょうかね。家内が起こすものだから見てみたら、その時は本堂の半分だけ壊れていたみたいだけど

益城町赤井にある浄恩寺では、裏山が崩れ本堂が押しつぶされた。
本堂に隣接する家屋には家族6人が暮らしていたが、けがはなかった。

熊本県営天君ダム 緊急放流検討するも見送り

堂前泉紀記者:
(午後1時半)御船町を流れる矢形川、現在も茶色い水が流れています。そして熊本県は上流にある天君ダムの緊急放流を検討しています

テレビ西日本・櫻井福大記者:
天君ダムは、一時は満水という情報もありましたが、水位が少しずつ下がっていっています

熊本県は3日午前に天君ダムの緊急放流を検討するも、その可能性は極めて低くなり、見送られている。

仲野香穂アナウンサー:
午後2時、高森町です。大雨の影響で、山から大量の水と土砂が流れ着いています。道路脇には木も流れ着いています。水路を見ると大量の石が流れ着き、水路をふさいでいます

住人:
午前6時前後だったと思います。起きようかなと思っていたら、「ドーン」と音がした。その前に雷が鳴っていたので雷が近所に落ちたかなと思って、起きて裏に回ってみたら、土砂崩れが起きていた

これまでのところ、熊本県内では人的被害の報告はないが、2度の線状降水帯は県内に大きな爪痕を残した。

(テレビ熊本)

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