最大震度6弱を記録した「大阪北部地震」から6月18日で5年がたった。この地震で問題となったのが、当時小学4年生の児童など2人が死亡した「ブロック塀の倒壊」。5年たった今、取材して見えてきたのは、いまだ身近に残り続けるブロック塀の危険性だ。

大阪北部地震から5年 高まる「直下型地震」の発生リスク

大阪府高槻市の震源に近かった地域では、まだブルーシートに覆われた住宅も残されている。

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2018年6月18日に発生した「大阪北部地震」は、最大震度6弱を記録。6人が死亡したほか、6万軒以上の住宅に被害がでた。

この大阪北部地震は、内陸の断層を震源とする「直下型地震」だった。

東日本大震災などに代表される、海底でおきる地震では、津波による被害が大きくなる傾向がある。

一方で、大阪北部地震や、阪神・淡路大震災のような、内陸の断層を震源とする「直下型地震」は、震源が浅く、都市部を大きな揺れが襲うため建物の倒壊が原因となる被害が多いのが特徴だ。

京都大学の西村教授は、いま、こうした直下型地震の発生リスクが高まっていると指摘する。

京都大学防災研究所 西村卓也教授:
南海トラフ地震の前後に内陸地震も活発になるっていうことが知られています。南海トラフ地震の前にマグニチュード7クラス阪神クラスの内陸地震が一つ二つ起こっても全く不思議はない

大阪北部地震で明らかに 基準外のブロック塀の危険性

大阪北部地震では、身の回りでよく見かける、ある建造物の倒壊による死亡事案が大きな問題となった。

大阪府高槻市の寿栄小学校で、ブロック塀の下敷きになって、当時小学4年の女子児童が死亡したほか、大阪市でも、80歳の男性が亡くなった。

寿栄小学校のブロック塀は、高さなどが建築基準法に違反していただけでなく、鉄筋の腐食など業者の施工に問題があったとされている。

粗悪なブロック塀の危険性を示す実験映像では…適切につくられたブロック塀に鉄のおもりを衝突させると、当たっても倒壊しないのに対し、鉄筋による補強が不十分なものは、当たると一瞬で崩れてしまった。

こうした不適切なブロック塀はいまだ多く残っていると指摘するのは、これまで数多くの建造物を作ってきた専門家の小林さん。

Q.ルールを外れているブロック塀は?

造景家・一級ブロック建築技能士 小林徹さん:
大量にある。建築物だから建築基準法に適合したものを作らないといけない。もっと簡単でいいやって思っている人が多かったから、これだけ色んなものができちゃった。それで(ブロック塀が)倒れて、人が亡くなって初めてちょっとやばいんじゃないのって

地震の後、全国でブロック塀の安全対策の見直しが進められ、高槻市では、現在全ての小中学校でブロック塀が撤去されたほか、公園などの公共施設でも、ほとんどが撤去されている。

フェンスの建築費用や無資格者の施工などで…進まぬ民間のブロック塀撤去

一方で、民間のブロック塀については対策が思うように進んでいない。高槻市の場合、地震直後にブロック塀の撤去費用を補助する制度を開始し、年々その上限額を引き上げてきた。しかし、申請件数は初年度以降、伸び悩んでいる。

新しくフェンスを建築するのに費用がかかることなども、撤去が進まない理由の一つだ。

また、ブロック塀の施工を無資格の人が行うことも、倒壊するリスクの高いブロック塀が減らない原因になっていると小林さんは指摘する。

Q.中の構造がいいかげんだとやっぱり(危険)?

造景家・一級ブロック建築技能士 小林徹さん:
倒れる。これなんか倒れたら一番いやだよね。これ作ったの(ブロック塀)積んじゃいけない人だよね。採点基準でいったらバツだから、こんなの出来栄え0点

小林さんは、大阪北部地震以降、全国各地で職人たちに技術指導を続けてきた。それは、自分たちが作るブロック塀が、人の命を奪うことがあってはならないと、強く思い続けているからだ。

6月17日、寿栄小学校のブロック倒壊現場を訪れた小林さん。静かに手を合わせた。

造景家・一級ブロック建築技能士 小林徹さん:
(5年前の)映像が、自分の中でもよみがえってきますよ。恐ろしいよね…。にこにこして学校に通ってたわけだからさ。重いね

一方で、5年という月日が、ブロック塀に対する危機感を薄くさせているとも感じている。

造景家・一級ブロック建築技能士 小林徹さん:
行政が後押ししてくれて、古いブロック塀とか危険なブロック塀の回収を進めようということで、初めの1年2年はそうだそうだってきたけど、時間とともに記憶と気持ちが薄れていったのはよく覚えています。でも、まだまだたくさん色んなところに危険なものがあるのが事実。これからもずっと警鐘ならさないといけないのかなと思います

安全意識の欠如によって失われた命。同じ失敗を繰り返さないためには、教訓を生かし続けなければいけない。

あなたの家大丈夫?危険なブロック塀 当てはまる点1つあれば“要注意”

ブロック塀について、国土交通省は、次のようなことが1つでもあれば、要注意だとしている。

・定められた基準より、塀が高すぎたり、厚さが不十分
・補強のための鉄筋や控え壁、地面より下の基礎部分がない
・目に見えて判断できる傾きやひび割れがある

こうした点をチェックして、1つでも当てはまれば、自治体や業者に相談して欲しいと呼びかけている。

また、東北工業大学の最知正芳名誉教授は、個人所有のブロック塀について、以下のように指摘する。

・倒壊は人に危害を与えるだけでなく、避難路を防ぐなど影響が大きい
・しかし、全て撤去するのは費用が高く、自治体の補助にも限界があり、個人の負担も大きい

そこで、ブロック塀の高さを半分にする工事を行うなどの対策でも効果はあるということで、自治体は柔軟な対応をしてほしいとしている。

(関西テレビ「newsランナー」6月19日放送)

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