共和党内から公然と批判の声

「トランプは裸の王様だ!」

共和党の中からこういう声が公然と上がりはじめた。

トランプ前大統領
トランプ前大統領
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共和党のドン・ベーコン下院議員(ネブラスカ州)は13日、トランプ前大統領がフロリダ連邦地裁で罪状認否を行なったことについて記者団から問われるとこう言った。

「王様は何も身につけていない。今こそ私たち共和党員は立ち上がってそう言うべきだ。さもなくば大統領選の予備選でトランプ氏が共和党の候補者に選ばれると、民主党がそう言って攻撃してくることになるだろう」

共和党のドン・ベーコン下院議員
共和党のドン・ベーコン下院議員

機密文書問題は「弁護の余地がない」

トランプ氏が数多くの機密文書をフロリダ州マールアラーゴの私邸に持ち帰り、権限を与えられていない者に見せたり、捜査官に求められると書類は全て返却したと言いながら、ごく一部を返したに過ぎなかったという起訴事実は弁護の余地がないとベーコン議員は言う。

起訴状で、トランプ氏は大統領退任後、数百の機密文書を、ホワイトハウスから自宅に持ち出したとされる
起訴状で、トランプ氏は大統領退任後、数百の機密文書を、ホワイトハウスから自宅に持ち出したとされる

それを「トランプは無罪だ」と言うのは、詐欺師に「愚か者には見えない衣装」と騙された王様が裸で大通りをパレードすると、「愚か者」と思われたくない国民たちが喚呼して見えない衣装を褒め讃えたというアンデルセンの寓話と同じだとするのだ。

ベーコン議員はネブラスカ州で民主党との激戦区の選出で、この問題で曖昧な対応は許されないこともあってあえて共和党ではタブーのようなトランプ批判の本音を口にしたようだが、そろそろ党内でも同様の動きが出始めているようだ。

「今回のトランプの起訴は、これまでと異なり深刻だと共和党員は個人的に認め出している」

NBCニュースのウェブサイト6月14日の記事見出しだ。

記事は、共和党内では今回のトランプ氏の起訴を表向きには「司法の政治利用」と非難しているが、トランプ氏の最大のライバルとされるフロリダ州のロン・デサンティス知事の側近は「トランプ氏の機密文書の取り扱いは、別に起訴されているポルノ女優への口止め料問題とは比べ物にならないほど深刻だ」と匿名を条件に語っているという。

「口止め料」疑惑で裁判所に出廷したトランプ前大統領(4月)
「口止め料」疑惑で裁判所に出廷したトランプ前大統領(4月)

共和党の大統領候補のライバルの中でも、マイク・ペンス前副大統領は「起訴状を読んだが、極めて厳しい容疑事実だ。私には弁護することはできない」と13日ウォールストリート・ジャーナル紙論説委員との対話で語っている。

また女性の候補のニッキー・ヘイリー元国連大使も「もし起訴事実が事実ならば、トランプ前大統領はこの国の安全保障に関して極めて無謀だと言わざるを得ない」とテレビで語っており、黒人の候補ティム・スコット上院議員(サウスカロライナ州)も「深刻な問題で、深刻に追及されている」とトランプ氏にとって憂慮すべき事態だと述べている。

しかしこうした発言も共和党内ではトランプ氏排除の動きには結び付かず、トランプ氏起訴後の世論調査で共和党支持者の間では前大統領への支持は増えこそすれ減る傾向は見られない。「トランプ氏は有罪だ」というのはトランプ支持者の間ではタブー視されているように思える。

裁判所前に集まったトランプ支持者
裁判所前に集まったトランプ支持者

アンデルセンの「裸の王様」(原題「皇帝の新しい衣装」)では、裸でパレードする王様を見た幼な子が「何も着ていないよ!」と叫んだことでタブーが解けて国民が事実に気づくのだが、トランプ氏をめぐるタブーは誰が解くのだろうか。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】

木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。