2023年4月26日から開催中の花と緑の祭典「全国都市緑化仙台フェア」。連日多くの人でにぎわいを見せている。一方、イベントに合わせて実施された仙台市の整備で、会場周辺の自然環境に“異変”が起きているという声が挙がっている。

全国都市緑化フェア
全国都市緑化フェア
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誰が見ても気づく「景観の変化」

仙台市での開催は34年ぶりとなる「全国都市緑化フェア」。仙台市中心部からほど近い青葉山公園追廻地区などで6月18日まで開かれいていて、杜の都を彩る美しい花と緑は、多くの人を楽しませている。国土交通省が緑豊かなまちづくりを目指し、行っているこのイベント。一方で、付近では『ある異変』が起きていた。

フェア会場には多くの家族連れの姿も
フェア会場には多くの家族連れの姿も

フェアのメイン会場そばの長沼にある「東丸土塁」。敵の侵入を防ぐために築かれた堤防状の防壁は、3年前は緑が生い茂り、その姿を確認することはできなかった。しかし、2023年2月時点で見てみると、周りを覆っていた木が伐採されたことで、「土塁」の形がはっきり確認できるようになった。

長沼の「東丸土塁」(上)2020年8月撮影 (下)2023年2月撮影 整備によって土塁の形が分かるように
長沼の「東丸土塁」(上)2020年8月撮影 (下)2023年2月撮影 整備によって土塁の形が分かるように

付近を散歩していた仙台市民からも「さっぱりしすぎたのではないか」「最近やけに木を伐採しているなと、ちょっと切りすぎでは」といった声が聞かれる。変貌ぶりは、誰が見ても一目瞭然のようだ。

そんな環境の変化に、不安を感じている団体がいる。

姿を消した鳥たち

記者:
鳥はいますか?

日本野鳥の会 宮城県支部 小林秀樹さん:
声が遠くの方から聞こえるだけで、水辺の方には鳥影がない。きょうはまるっきり静か。

日本野鳥の会 小林秀樹さん
日本野鳥の会 小林秀樹さん

こう話すのは、「日本野鳥の会」の小林秀樹さん。仙台城跡一帯は、中心部に近い場所でありながら、オシドリ、ハヤブサといった野鳥を見ることができる貴重なスポットだった。月に一度の観察会では、15分ほどカメラを構えれば、枝に止まるカワセミの姿を捉えることも難しくなかったという。

仙台城跡付近で観察することができたカワセミ
仙台城跡付近で観察することができたカワセミ

しかし、周辺の整備によって、やぶが無くなくなり、池からは水草が無くなった。それらが原因で鳥の餌となる昆虫や小魚が減少。さらに、天敵から身を隠す場所を失ってしまったという。小林さんは「生態系が変わってしまった」と嘆いていた。

日本野鳥の会 宮城県支部 小林秀樹さん:
見た目はきれいだが、鳥たちには住みにくいところになった。
「健全な林を作るうえで適度な伐採をやった方がいい」とは意見していた。

事前に仙台市から伐採を行うことを伝えられていた小林さん。「400年前の自然を復元する」という説明を受け、間伐など、適切な整備をするべきといった意見は伝えていたという。しかし、整備後の一帯の風景は、想像したものとは異なるものだった。小林さんは「ここまですっきりするとは思わなかった」とつぶやいた。

歴史的な価値を高めるために

「花と緑の祭典」が開かれている会場の近くでなぜ、ここまでの伐採が行われているのか。整備を行った仙台市に聞いた。

仙台市文化財課 長谷川蔵人 課長:
仙台城跡が国史跡だという扱いでの整備計画。本来の姿にふさわしい形になっていないところは整備をして、なっているところは適切に保存していく計画を立てています。

仙台市によると、仙台城跡は2003年に国の史跡に認定され、保存や活用法について議論が交わされている。2021年には、整備計画が国から認可。計画の対象範囲の4万7000平方メートルに生える木々、約2000本のうち、300本近い樹木が伐採されることになった。一帯の景観を良くすることで仙台城跡を多くの人に見てもらい、「歴史的な価値を高める」ことが目的だという。

整備計画における整備対象エリアと伐採実施エリア
整備計画における整備対象エリアと伐採実施エリア

仙台市文化財課 長谷川蔵人 課長:
仙台城跡調査・整備委員会を設けていて、植物の植生の専門家も入ってもらい意見をもらいながら進めている。「史跡なんだ」と分かってもらうことが、文化財の保護の観点からは重要なので、その考え方に基づいた整備になる。

仙台市が、2022年12月から2023年3月までに伐採した樹木は合計230本。年度内に、最大であと60本ほどを伐採する方針だ。一方で、仙台市は「取材を通して、野鳥の会の思いも知った」と話していて、今後、話し合いの場を設けたいとしている。

仙台市文化財課 長谷川蔵人 課長:
そういった方々の声にも耳を傾けながら、進めていくことが大事なんだろうと思う。

仙台の美しい自然を守りながら、どうやって県内外の人に歴史や魅力を伝えていくのか。
“杜の都”が難しい問題と直面している。

(仙台放送)

仙台放送
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