新型コロナウイルスの感染拡大も落ち着き、活気が戻ってきた福岡の街。市が行った新たな屋台経営者を募る公募で、13軒が新規参入する。“屋台の家系”で育ち、開業という新たな挑戦を決めた女性を追った。

開業に向け屋台で修行!

福岡・天神の夜。満席の屋台で接客する髙野妃華里さんは、6月に自身の屋台の開業を予定していて、「修行中」の身の上だ。

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髙野妃華里さん:
ギョーザもおすすめやし、全部おすすめなんやけど、全部食べる?(笑)

髙野妃華里さん:
お待たせしましたー、めんたい卵焼きです。どうぞー

屋台の客:
うっま!

髙野妃華里さん:
屋台は、お客さんとの距離感が近いので、すっごく楽しいです。難しいのは、いろんな所から注文が入ると「え?どこが?どこやったけ?」みたいな感じになる

福岡市にある自宅では屋台で出すメニューの試作に連日、励んでいる。

髙野妃華里さん:
めっちゃ失敗!ははは。もうちょっと丸くする予定

博多名物の明太子とチーズ、「あごだし」を使ったオムレツ。こだわるのは優しい味だ。

髙野妃華里さん:
ちょっと食べてみて。明太チーズオムレツです。どう?

長女・虹花ちゃん
うまい!

髙野妃華里さん:
うまい?本当?やったー! 「おいしい」いただきました!

実の母は“屋台の大先輩”

2人の子どもの母でもある高野さん。高校と中学へそれぞれが進学することも背中を押し、屋台の開業という新しい挑戦を決めた。

髙野妃華里さん:
屋台は作業スペースが狭くて、狭い所で作業するような感じになります。多分、引き出しみたいな感じで、ちょっと付けてもらうとか、大工さんに頼んで

規定の多い屋台営業、食材にも工夫が必要となる。

髙野妃華里さん:
生ものが使えないんですよ。なので、焼いて…。おーっ、(油が)めっちゃ飛ぶ。中が75度にならないといけなくて、なので1分くらい火を通さないといけないです

2人の子どもも応援してくれている屋台の開業だが、髙野さんが最も気になるのは、母の京子さんの反応だ。

母・京子さん:
卵の味とかはすごくおいしい。タレもちょうど合ってる

高野妃華里さん:
ちょうど合ってる?おー、うれしい、いぇーい

屋台で提供する予定の「焼きめんたい重」。母の京子さんからのお墨付きをもらえたようだ。実は京子さん、3年前に亡くなった夫の定男さんと、40年ほど前に中洲で屋台を創業し、現在も営んでいる。髙野さんにとっては「屋台の大先輩」なのだ。

母・京子さん:
まだ若いから、いつでも、もし失敗したとしても、やり直しがきく年齢じゃないですか。わたしたちのやり方と違った新しい屋台を自分たちで開くっていうことで、夢が広がるというか、いろんな違ったメニューを置いてほしいですね

髙野妃華里さん:
屋台の家系で育ったので、屋台を仕事にするっていうのがすごく普通だったんですよね。なので博多に住んでいるんだったら屋台をやってみたいと思っていました

実は、髙野さんが修行をしている天神の屋台も夫の将樹さんが経営している。

夫・将樹さん:
(コロナの時は)ずっと閑散とする日が続いて、結構どうなるんだろうっていう不安がすごく大きかったです

2018年に天神で創業し、その1年後に新型コロナの感染拡大で一時、店は休業に追い込まれた。売り上げも落ち込む中、何とか持ちこたえ、ようやくにぎわいが戻ってきた。

そんな将樹さんの姿を、一番近くで見てきた妃華里さん。

髙野妃華里さん:
コロナが終わって、活気がある街、福岡の街をもっとより良く盛り上げていきたいなって

その思いで福岡市が実施していた屋台経営者の公募に応募し、見事、第3位で合格。決まった営業場所は、なんと偶然にも将樹さんの営む屋台のすぐ隣だった。

夫・将樹さん:
1つの屋台として、屋台の文化を盛り上げていけたらいいなと応援しているスタイルです

ーー客がとられるかも?

夫・将樹さん:
ちょっとライバルかな(笑)

屋台の常連客の男性:
髙野さんの屋台、めっちゃ楽しみですね。

ーーどっちに行きますか?

屋台の常連客の男性:
どっちも行きます

屋台の常連客の女性:
髙野さんは、すごくすてきな方だし、すごく美人じゃないですか。だから開店したら絶対、来たいなと思います

ふらっと寄れる「温かい屋台」にしたい

髙野妃華里さん:
楽しみが半分。不安が20パーセント。「やばい間に合うかな」が30パーセントくらいですかね。お家に帰ってくるような感じの雰囲気で、1人でもふらっと寄れるような温かい屋台にしたいなと思います

みんなが集まって心やすまる空間が広がる髙野さんの新しい屋台、その名も「ひとつ屋根の下」。2023年6月末ごろに天神で開業予定だ。

福岡市が行った新たな屋台経営者を募る今回の公募は、過去最高の5倍の倍率となり、全ての募集枠が初めて埋まった。6月以降、13軒の新たな屋台がオープンする見通しだ。

中でも条例改正などで屋台が撤退した長浜地区では、屋台営業ができる9つの区画のうち、これまで埋まっていたのは2つだけだったが、今回、空いていた7つの区画、全てで経営者が決まり、ようやくにぎわいが戻りそうだ。

天神・中洲エリアにも6軒の屋台が増える予定で、海外からの観光客も増える中、福岡の魅力アップにつながると期待されている。

(テレビ西日本)

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