白濁したスープから広がる濃厚な旨味。福岡のソウルフード「豚骨ラーメン」がここ最近、豚骨ではない「非豚骨」のラーメンが続々と登場している。“豚骨一強”だった福岡のラーメン業界に一体、何が起きているのか?

贅沢に“ノドグロ”の煮干しで出汁をとったスープが自慢

担当ディレクター:
非豚骨ラーメンが注目されるきっかけのひとつになったお店と言われている「らぁ麺なお人」さんです

福岡市中央区に2020年にオープンした「らぁ麺 なお人」。
店主の松崎七音さんは、福岡の有名とんこつ店で10年ほど働いたあと、東京で人気のしょうゆラーメンで修行を積んだ。

この記事の画像(15枚)

そんな松崎さんが手がける一番人気のラーメンが…

「らぁ麺 なお人」松崎七音店主:
お待たせいたしました、高級のどぐろらぁ麺ですね

「白身のトロ」ともよばれる超高級魚ノドグロ。その煮干しをふんだんに使って出汁をとったぜいたくな逸品だ。

担当ディレクター:
あ~、おいしいっすね。ここまでノドグロで出汁が出るのかっていうくらいパンチが効いてるんですけど、すごい上品なうまみがあります

福岡のラーメン店でほかに使っている店はないといわれるほど、高級かつ、入手困難なノドグロの煮干しを使用している。

「らぁ麺 なお人」松崎七音店主:
通常、使われているイワシなどの煮干しとかに比べて、本当に十数倍する値段になるので。めちゃくちゃ高いです

抑えられた光熱費などを“食材費”に

一体なぜ、そこまで高価な食材を使い、非豚骨のラーメンで勝負できたのか。

それは、強火で長時間炊き上げる豚骨よりもガス代がかからず、スープの仕込みにかかる人件費も抑えられるからだという。

「らぁ麺 なお人」松崎七音店主:
光熱費とかも、豚骨は何倍も違うので。そこ(光熱費)が抑えられて食材費に充てられるのが、強みというか、“売り”や“ブランド”になる

この店では、ほかにも、白トリュフのオイルが香る鶏白湯ラーメンなどが評判となり、コロナ禍でも連日盛況。2022年10月には、博多区に2号店も出店。決意を込めて、店名は「非豚骨 なお人」にしたという。

「らぁ麺 なお人」松崎七音店主:
圧倒的手応えというか、それは感じてますね。豚骨王国の福岡で、イチ個人店がオープンするってなったら、豚骨じゃないラーメンで自分の個性を表現できるラーメンの方が面白かったり、自分でやるんだったら勝機があるかなというふうに思ってました

ちゃんとコクが出てる…! 進化形「クリア豚骨」

タウン情報誌「シティ情報ふくおか」のまとめによると、2022年10月までの1年間に福岡市にオープンした約50店のうち、実に7割ほどが「非豚骨」系。

魚介や鶏をベースにしたしょうゆラーメンや、貝で出汁をとった塩ラーメン、オマールエビやトマトで出汁をとったフレンチ風まで、多種多様なラーメンが登場しているのだ。

そうした中、受けて立つ立場の豚骨ラーメンにも、これまでのイメージを覆す進化形が誕生している。

担当ディレクター:
こちらですね。のれんに紛れもなく「豚」と書かれています。どんな豚骨ラーメンなんでしょうか

2022年9月、九州最大の歓楽街・中洲にオープンした「豚そば月や」。ここで味わうことができるのが…。

「豚そば月や本店」冨永健太店長:
お待たせしました。豚そばです

「クリア豚骨」と呼ばれる透き通ったスープの豚骨ラーメンだ。

担当ディレクター:
すっきりしてますね。豚骨の臭みとかクセとか全然なくて、かと言って、物足りないわけじゃなくて、豚骨のうまみ、コクがちゃんと出てますね。めちゃくちゃおいしいです

通常は強火で1日近く炊く豚骨を、低温で火にかけて、沸騰させる時間を極力短くするなどして透明に仕上げた。

お好みで「げんこう」という、かんきつの果汁を垂らすと、豚骨のイメージを覆す、さらにすっきりした味わいになる。

「豚そば月や本店」冨永健太店長:
ちょっと、ほかと違うような、かつ中洲という土地柄ですね、飲んだあとのシメにどんなものがいいか考え、このクリア豚骨ラーメンを作らせていただきました

福岡で出店が相次ぐ“非豚骨ラーメン”について聞いてみると…

「豚そば月や本店」冨永健太店長:
僕自身も、豚骨に限らずラーメンが全体的に好きなので、いろんなお店、おいしいお店ができて、どんどん業界が盛り上がればいいなと思っておりますね

これまで豚骨の牙城だった福岡のラーメン界。「非豚骨」や「クリア豚骨」など、個性あふれるバリエーションが加わることで、より豊かなラーメン文化が育まれていくことは間違いない。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
テレビ西日本

山口・福岡の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。