「韓国人の国民性」と題された資料には…

手元に大変興味深い資料がある。

文在寅政権の度重なる卓袱台返しに日本人が呆れかえっていた頃に開催された、ある講演会の席で配られたものだ。

韓国に大変詳しい経済人による「韓国人の国民性」と題された資料にはこう記されている。

・自分の実力をわきまえず虚勢を張る「夜郎自大」的感覚
・都合が悪くなるとすぐに他人のせいにする責任転嫁の質
・常に物事を二者択一の「聖者善悪」の価値観で図り、自分だけが道徳的に正しいと考える質
・「野蛮な日本と文明の韓国」という幻想を持ち、日本に対しては何をやってもいいのだという反日ナショナリズム

一部抜粋だが、この資料を韓国駐在経験のある日本のベテラン外交官と専門記者の二人に見せると「まさにその通り」と感服していたのを鮮明に記憶している。

これが彼の国の国民性の全てを物語っていると断言するつもりはない。

しかし、当たらずと云えども遠からずならば、いつまた卓袱台返しをされるか分かったものではないと筆者は改めてうんざりしたものだ。

異例?バイデン政権の“歓迎ぶり”

条約に定めた国と国の約束を平気で一方的にひっくり返す文在寅政権と距離を置いた当時の日本政府の判断は正しかったと思わざるを得ない。多数の日本国民も同様に考えた筈である。

しかし、時は流れ、彼の国では尹錫悦政権が誕生し、韓国政府は今月6日には元徴用工問題の解決策を発表した。少なくとも現在の韓国政府は前政権の姿勢を転換し、対日関係については時計の針を戻そうと努力していると評価すべきなのかもしれない。

元徴用工問題で、日本企業の賠償支払いを韓国側が肩代わりする解決策を発表した韓国・朴振外相(6日)
元徴用工問題で、日本企業の賠償支払いを韓国側が肩代わりする解決策を発表した韓国・朴振外相(6日)
この記事の画像(5枚)

対する日本政府は基本的には発表を歓迎している。多くの日本国民も同様だろうと推測する。しかし、諸手を挙げてというには程遠い。問題はこの先であることを誰もが知っているからだ。特に、韓国内の政治状況が変われば、いつまた豹変するか分からないからだ。

岸田首相は解決策を評価するとともに、歴代内閣の歴史認識を踏襲することを表明した(6日)
岸田首相は解決策を評価するとともに、歴代内閣の歴史認識を踏襲することを表明した(6日)

一方、アメリカ政府の反応は素早かった。韓国政府の発表から僅か数時間後の6日午後1時半過ぎには、国務省が歓迎の声明を発表したし、正確な時刻は分からないが、国務省と相前後して、バイデン大統領もわざわざ個人名で、発表は「アメリカの最も緊密な同盟国である二つの国が、協力とパートナーシップの画期的で新たな一章に進むことを示すものだ」と歓迎する声明を出した。

バイデン大統領はわざわざ個人名で歓迎する声明を出した
バイデン大統領はわざわざ個人名で歓迎する声明を出した

このバイデン政権の異例と言っても良い歓迎ぶりは、今回の日韓関係の“雪解け”の開始を意味する発表がバイデン大統領自身の肝煎りもあって為されたものでもあるからだ。

(関連記事:「バイデン大統領の日韓訪問で驚愕したこと そして危惧すること」

ワシントンの専門家は…

そこで、ワシントン在住の専門家にコメントを求めたところ、以下のような回答を得た。

「個人的な印象だが、アメリカ政府は日韓の話し合いを非常に細かくフォローしていたし、両国に合意を得るよう促していた。しかし、話し合いを仲介したり、中身に介入したわけではない。ただ、日韓両国の政府がこの先の行動で失敗すれば、両国はワシントンで面子を失うことになるだろう。しかしながら、同時に、今回合意の主役はあくまでも岸田政権と尹錫悦政権、それに両国の外務省・外交部であることを忘れてはならない」

「この先失敗すれば両国はワシントンで面子を失う」と専門家氏がわざわざ言及したのは、むべなるかな、アメリカ政府の担当者やワシントンの専門家達も今後に幾ばくかの危惧を抱いている証と思われる。

ワシントンでは「尹錫悦大統領の大胆な動きと比べると岸田政権の小心ぶりと慎重さが際立っている」との見方も…
ワシントンでは「尹錫悦大統領の大胆な動きと比べると岸田政権の小心ぶりと慎重さが際立っている」との見方も…

日本国民の対韓感情がまだ和らいでいない以上、岸田政権が慎重になるのは当然なのだが、関連して「尹錫悦大統領の大胆な動きと比べると岸田政権の小心ぶりと慎重さが際立っている」という日本政府への厳しい見方がワシントンでは既に出ていることも付記しておく。

対中、対北関係を鑑みれば、日韓両国がいつまでもいがみ合っているようではまずいとバイデン政権のみならず日本政府や韓国政府も考えているのは間違いない。日本政府は日韓両国の世論の動向と韓国政府の動きを慎重に見極めながら、雪解けを確かなものにすべく先に進もうとするだろう。

彼の地で政権が変わっても元の木阿弥にならぬよう願って止まない。

【執筆:フジテレビ解説委員 二関吉郎】

二関吉郎
二関吉郎

生涯“一記者"がモットー
フジテレビ報道局解説委員。1989年ロンドン特派員としてベルリンの壁崩壊・湾岸戦争・ソビエト崩壊・中東和平合意等を取材。1999年ワシントン支局長として911テロ、アフガン戦争・イラク戦争に遭遇し取材にあたった。その後、フジテレビ報道局外信部長・社会部長などを歴任。東日本大震災では、取材部門を指揮した。 ヨーロッパ統括担当局長を経て現職。