2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻や、台湾海峡の軍事的緊張の高まりで国民や県民の不安は増大している。そうした中、加速するのが日本の防衛力強化の動きと南西諸島におけるアメリカ軍と自衛隊の一体化だ。

有識者会議「反撃能力の保有・増強が不可欠」

2022年8月、中国はアメリカ下院議長の台湾訪問に反発し、与那国島近海や日本のEEZに弾道ミサイルを発射した。ロシアによるウクライナ侵攻で現実味が増したといわれる台湾有事。

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もし、アメリカが軍事介入すれば日本の自衛隊は2015年の安全保障関連法に基づき、後方支援の役割を南西諸島を拠点に担うことになる。

2022年11月22日、日本の防衛力強化に向けた政府の有識者会議は報告書で抑止力の維持、向上には敵基地攻撃能力いわゆる反撃能力の保有と増強が不可欠と強調。
財源は国民全体で負担することを視野に幅広い税目による負担が必要と提言した。

その6日後の2022年11月28日、岸田総理大臣は防衛費を2027年度にGDP比2%に増額するよう関係閣僚に指示。

浜田防衛相:
そのため予算は財源がないから出来ないということではなく、様々な工夫をした上で必要な内容を迅速にしっかり確保する。

沖縄戦体験者「あの時の状況と重なってくる」

東アジアの緊張を背景に加速する抑止力や防衛の議論を沖縄戦の体験者はどう思うのだろうか。

長年自身の沖縄戦の体験を語り続け今年の県功労者表彰を受けた翁長安子さん(92)。

沖縄戦の体験者 翁長安子さん(92):
けさの両新聞を読んで涙が出るほど悔しい思いをしました。学生はもちろん、障がい者まで一体になって国のため国土のために働けでしょう?

沖縄戦の体験者 翁長安子さん(92):
戦時中の大本営発表と、岸田総理が率いる有識者会議というのが、置き換えられている感じがして

安子さんは77年前の沖縄戦で旧日本軍の郷土部隊に看護要員として従軍し、戦場を生き延びた。

沖縄戦の体験者 翁長安子さん(92):
国土防衛のために沖縄を捨石とした。沖縄住民を守るどころじゃなくして、本土を守るための犠牲ですよね?あの時の状況となんかね重なってくるんですよね。

日米統合演習で与那国町では戦闘車が走行

日米統合演習の一環として与那国町では105ミリ砲を搭載した自衛隊の戦闘車が街中を走行。

与那国駐屯地ではこの演習以降もアメリカ軍との訓練が予定されている。
自衛隊とアメリカ軍の一体化が進む南西諸島。
特に先島諸島では空港や港湾を自衛隊が円滑に活用できるよう「特定重要拠点」として整備されようとしている。

沖縄戦の体験者 翁長安子さん(92):
これは台湾有事になったら間違いなく、また沖縄が捨石にされるな。またこんな目に合わないといけないのかな。民主主義の社会になっても何も変わらないんだな。

「結局犠牲になるのは力の弱い市民」

山野に散らばる夥しい数の遺骨を拾い集め魂魄之塔の建立から戦後が始まった翁長安子さん。
沖縄が再び戦場となり住民の命が失われることがないよう、政府には外交にこそ力を入れて欲しいと願っている。

沖縄戦の体験者 翁長安子さん(92):
もう私は危機感あります。話し合いの上で解決しなければ、飛び道具が飛んできてからでは遅いですよね。だってウクライナだって終わり切れないでしょ、戦争ね。

沖縄戦の体験者 翁長安子さん(92):
結局は犠牲になるのは力が弱い住民ですよね。命というものの尊厳を政治家がもっと意識してくれたらなと思うんですけれども。それが本当に薄らいでいる。

政治は最後まで外交を諦めてはならない

日本の外交・防衛政策を研究するシンクタンクは、昨今の防衛強化の方針に関して次のように提言している。

NDの政策提言:
軍事力による抑止は無限の軍拡競争をもたらすとともに、抑止が破綻すれば増強した対抗手段で、より破滅的な結果をもたらすことになる。

その上で台湾有事は避けられない定められた運命ではなく、日本有事に発展するかも日本の選択にかかっており、政治は最後まで外交をあきらめてはならないと強調している。

世界の緊張を背景に突き進む抑止力強化一辺倒の政策で本当に戦争を防ぎ、国民の命を守れるのか私たちは注意深く見ていかなくてはならない。

沖縄テレビ
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