2022年11月10日から行われていた日米共同統合演習が2022年11月19日終了した。
訓練は沖縄本島だけでなく、鹿児島県の奄美大島や徳之島など南西諸島を中心に行われた。こうした中、初めてアメリカ軍が訓練を行い機動戦闘車が公道を初めて走行するなど安全保障がクローズアップされたのが与那国島だ。

高まる台湾有事の可能性 日米で連携深め中国を抑止

2022年11月10日から2022年11月19日まで沖縄を含む南西諸島などで実施された自衛隊とアメリカ軍による日米共同統合演習。
沖縄国際大学の野添文彬准教授は今回の訓練の狙いをこう読み解く。

沖縄国際大学 野添文彬 准教授:
端的にいうと、やはり台湾有事の可能性が高まってるなかで、日米の連携を深めてなおかつ中国に対して抑止をしていくと

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統合演習では戦闘などによるけが人を日米がそれぞれの施設で受け入れる訓練や、与那国島の自衛隊施設に初めてアメリカ軍が入り情報共有の拠点となる連絡調整所が設置された。

沖縄国際大学 野添文彬 准教授:
アメリカはやっぱり台湾に非常に近い与那国を使いたいという気持ちがあってですね。与那国に自衛隊が配備された時からアメリカ側も自衛隊側も考えていたと思いますね

沖縄国際大学 野添文彬 准教授:
これからは自衛隊基地であっても米軍が使用するということはこれからもどんどん起こっていくんだろうと思いますね

機動戦闘車が公道を初走行 住民から様々な声

沖縄テレビ 嘉数圭人 記者:
日本最西端の地与那国島です。こちらから約110キロ先にあるのが台湾なのですが、今回その台湾有事を巡る国防の問題などで住民からは賛否の声があがっています

2022年11月17日には、与那国島に105ミリ砲を搭載した機動戦闘車が自衛隊の輸送機で運び込まれ、約5キロ離れた駐屯地まで県道を走行した。
機動戦闘車が県内の公道を走るのはこれが初めてで、台湾有事を想定したとみられる訓練が行われたことに住民からは様々な声があがった。

与那国町民の男性:
遺憾だよ。大変だよ。子供たちに戦争が始まるよというのを見せるような格好だよ。基地があるということは狙われるんだよ。どこからでも。ということは住民も被害にあうんだよ

与那国町民の女性:
今戦争が始まったらミサイル1つで終わりじゃないですか与那国島は。守ってくれるのは、ありがたいことではあるんですよ。だから私は賛成派です。

観光面でも非常にマイナス 風評被害も懸念…

与那国島と台湾はこれまで姉妹都市として、観光や文化など様々な面で交流を続けてきた。

ここへ来て安全保障を意識せざるを得ない現状に複雑な心境を語るのは、与那国町漁業協同組合の嵩西茂則組合長。

与那国町漁業協同組合 嵩西茂則 組合長:
一番有利な島だというふうに思ってましたけども、逆に今の状況を考えると危険な地域になってしまってね。もう観光的な面でも非常にマイナスを被るし風評被害も言われるんじゃないかと非常に懸念しています

与那国島からわずか80キロ先の海域 まさか弾道ミサイルが

2022年8月、アメリカの下院議長の電撃的な台湾訪問に反発した中国が弾道ミサイルを発射。
日本のEEZ・排他的経済水域に撃ち込まれたミサイルは、与那国島からわずか80キロの海域で島では漁の中止を余儀なくされた。

与那国町漁業協同組合 嵩西茂則 組合長:
まさか、この島近海またはEEZ内にそういう弾道ミサイルが着弾するということまでは想定してませんでしたので、あの当時を振り返ってみますとね、非常に怖い部分もあった

嵩西組合長は外交努力で有事を起こさないことが最も大切だとしながらも、防衛の観点から訓練は必要だと話す。

与那国町漁業協同組合 嵩西茂則 組合長:
むしろやるべきだと思ってますし、かえって遅いぐらいだと思いますよ。それがやっぱり抑止にも繋がると思うしね、いざというときにどうやって防衛保護をしていくか。町民を守っていくか、救出していくかというのは必ず現実として出てくるわけですから

住民の避難計画は全く進んでいない不安

一方で、演習に関する政府の説明不足によりいっそう住民の分断が進んだと感じている。
有事に備えた住民の避難計画に関しても全く進んでいないのではないかと、不安を募らせる。

与那国町漁業協同組合 嵩西茂則 組合長:
ただ公道を戦車といいますか何かそういうのが走るだけでね、それで果たして避難にはならない。防衛のための訓練であって、町民はどうするかっていうのは別問題じゃないですか。そこら辺がちょっと欠けてるんじゃないかなと思いますよ

「住民保護をセットに考えなければ不安を高めるだけ」

住民の安全をどう確保するのか議論が深まらない要因として国と県、それに市町村が互いに責任をなすりつけあっている状況があると野添准教授は指摘する。

沖縄国際大学 野添文彬 准教授:
与那国島であったり南西諸島全体島ですから、逃げるところがないっていうのでやっぱり抑止力を強化するっていうだけでなくて住民保護っていうのをセットでこういう問題を考えなければいけないと思いますしし、そういうの抜きで訓練だけ進めていくっていうのは住民の不満をますます高めるだけだと思いますね

野添准教授は訓練を強化して、抑止力を高めるのは安全保障上有効であるとしながらも仮に中国が台湾に侵攻した場合、アメリカ軍基地周辺も戦場になることは避けられないと強調する。

「戦争を避ける外交努力・ビジョンが求められている」

沖縄国際大学 野添文彬 准教授:
戦争を避けるための外交努力が大事だと思うんですよね。米軍基地が当たり前のものと考えるだけでなくて、その戦争を避けるためにどういう風に平和的な地域を作っていくのかっていうそういう外交努力も大事そうだしビジョンを考えることも求められていると思う

沖縄戦の悲惨な経験を繰り返さない為に、抑止力の強化がうたわれる一方で有事を起こさない為の議論は置き去りにされたままとなっている。

沖縄テレビ
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