8月の記録的大雨の被災地では、早期復旧に向けた取り組みが続いている。新潟県関川村で被害に遭いながらも、早期の営業再開を目指す旅館を取材した。

大雨で被災の旅館 営業できず予約は全てキャンセルに

杉本一機キャスター:
大雨から3週間。荒川の護岸が崩れた箇所では、今もそのままがれきが残っています

荒川沿いの崩れた護岸の上に建つ、一部が崩落した建物。

鷹ノ巣温泉(新潟・関川村)
鷹ノ巣温泉(新潟・関川村)
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関川村の鷹ノ巣温泉で50年以上続く旅館「喜久屋」。豊かな自然に囲まれ、源泉かけ流しの露天風呂や山菜など地元の食材を使った自慢の料理が売りで、著名人もたびたび訪れている。

荒川の護岸にある旅館・喜久屋
荒川の護岸にある旅館・喜久屋

そんな人気の温泉旅館も今回の大雨で甚大な被害を受けた。増水し勢いを増した川の流れに土台が削られ、建物の一部が崩落。

記録的大雨となった8月3日
記録的大雨となった8月3日

喜久屋 小山泰喜 副館主:
堤防決壊を確認したのが8月3日夜8時ごろ。そのころはまだ一部だったが、4日朝4時半ごろ確認したらこの状態だった

浸水の影響で温泉をくみ上げるポンプも損傷。休業を余儀なくされ、9月まで毎日詰まっていた予約は全てキャンセルせざるを得ない状況に。

被害額は建物だけでも5000万円ほどに上るとみられるが、それでも家族で旅館を切り盛りしている。

喜久屋 小山泰喜 副館主:
ぜひ復活して、なんとか皆さんにお越しいただきたいと思っている

営業再開に向け進む準備 一方で課題も

その言葉通り大雨から1週間後、まずは温泉をくみ上げるポンプを新たに調達。被害を免れた部屋に無事、温泉が戻った。

喜久屋 小山泰喜 副館主:
営業を再開する上で、一段階ステップを上がれた

ポンプを調達し温泉復活
ポンプを調達し温泉復活

さらに県の職員などが旅館を訪れ、崩れた川の護岸の応急工事の準備が始まった。

喜久屋 小山泰喜 副館主:
堤防がないと川が増水した時に危ないし、二次被害が考えられるので。まずは堤防。測量が始まって、いよいよという感じ

宿泊客を安全に迎えるため欠かせない護岸の工事と並行し、小山さん自身も営業再開に向けて被害がなかった建物を整え、一部屋でも多く客室を確保しようと準備を進めていた。

一歩ずつ復旧に向け歩む喜久屋だが、課題もあった。

被害がなかった建物を整え、営業再開に向け準備
被害がなかった建物を整え、営業再開に向け準備

(Q.浄化槽が崩れてしまったのが大きな課題?)

喜久屋 小山泰喜 副館主:
そうですね、営業には浄化槽がないと。この辺は下水が通っていないので。業者も考えてくれているが忙しい。被害がうちだけじゃないので

地域に下水が通っていないため、調理場やトイレなどの排水を処理する浄化槽の修復ができないと、営業の許可は下りない。

荒川と共生してきた旅館 2度目の災害にも負けず前へ

こうした困難の中でも、小山さんが決して諦めず営業再開を目指す理由、それは過去の経験にあった。

(Q.1967年に起きた羽越水害について)

喜久屋 小山泰喜 副館主:
祖父がいたころは聞いていた。この辺は全て流されているので、その当時の被害に比べたら全然

55年前の羽越水害でも甚大な被害を受けながら復活を果たした喜久屋。繰り返し立ち上がろうとする裏には、時に猛威を振るいながらも恵みをもたらす荒川と共に生きていくという思いがある。

喜久屋 小山泰喜 副館主:
本来、エメラルドグリーンのきれいな川。場所によっては底が見えるくらい。小さい頃からいるが、いいところだと思う

「エメラルドグリーンのきれいな川。いいところ」と小山さん
「エメラルドグリーンのきれいな川。いいところ」と小山さん

自らも魅了された川の景色と共に、またお客さんを迎え入れる日を望む小山さん。

喜久屋 小山泰喜 副館主:
温泉と川の景色はセット。私たちからしたら荒川は、いち従業員のような。なくてはならないものなので早く再開しなくては

喜久屋 小山泰喜 副館主
喜久屋 小山泰喜 副館主

その願いが通じ、浄化槽の仮復旧のめどがついたことから、被害を免れた客室での営業を9月17日から再開することに。

2度の災害にも負けず立ち上がる温泉旅館が、その歴史に新たな1ページを刻む。

(NST新潟総合テレビ)

NST新潟総合テレビ
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