金沢名物はいろいろあるが、特にお疲れ気味の方におすすめなのが「どじょうのかば焼き」だ。ドジョウは疲労回復や滋養強壮などでウナギと同等の効果があるとされていて、金沢では特に土用の丑の日など夏場に食べられている。老舗店でこの金沢名物が誕生した理由などを聞いた。

有力なのはキリシタン説

訪ねたのは金沢市横山町の「かばやきの浅田」。

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通りには、鼻をくすぐる香ばしい香りが漂っていた。

店先で一本一本丹念に焼くのは、店主の浅田博子さん(77)。

さっそく常連客が店にやってきた。

常連客:
そこの角を曲がってきたら、いい匂いしたよ。風の向きかね。親戚に送ってあげようと思ってね。

店主 浅田博子さん:
ようこそ。ありがとうございました。

浅田さんによると、昔はどじょうのかば焼きを出す店が近所だけでも10軒以上あったそうだが、今は市内でも数えるほどに減った。そんな中で名物を守り続ける浅田さんの思いは…。

竹内章アナウンサー:
お店は、夏が一番忙しいんでしょう?

店主 浅田博子さん:
夏ですね。お客さんは夏が来ると「どじょうのかば焼き食べたくなった」って、いらっしゃいますね。

竹内章アナウンサー:
創業はいつごろですか?

店主 浅田博子さん:
65年以上はたっていると思うんですけどね。両親が始めて私が2代目。店のことはほとんど母親がやっていたんですが、父親は味付けにうるさかったですね。

竹内章アナウンサー:
なぜ、金沢でドジョウを食べるようになったんですか?

店主 浅田博子さん:
有力だと言われているのが、江戸時代のキリシタン説。改宗を拒んだ長崎のキリシタンたちが加賀藩に送られてきて、金沢市の卯辰山に暮らしていたらしいです。近くの浅野川とかでとれたドジョウを栄養源として食べていて、それを市中で売り歩いたのが始まりといわれています。

「かばやきの浅田」では、ドジョウは身の大きなものを使う。

身を開いたらすぐ串を打ち、焼き台に載せる。

竹内章アナウンサー:
さばいて、すぐのものを焼くんですね。

店主 浅田博子さん:
うちはすぐ焼きますね。鮮度が大事ですね。

竹内章アナウンサー:
マスクをしていても、香ばしい香りがしてきますね。

店主 浅田博子さん:
そうですね。「においに釣られて買いに来た」ってお客さんもいます。

味の決め手”秘伝のタレ”には何が?

味の決め手となるのは、タレだ。

竹内章アナウンサー:
タレは秘伝の?

店主 浅田博子さん:
タレは父親が教えてくれたものです。短い歌、都都逸(どどいつ)の詩で、調味料とかの配分を書いておいてくれたんです。「甘い、辛いの、ととさんや~♪」って。

竹内章アナウンサー:
その都都逸にあわせて、タレを作ると秘伝のタレになるってことですか?

店主 浅田博子さん:
いやいや。はははは。そんなことはないけど…。

竹内章アナウンサー:
何が入ってるんですか?

店主 浅田博子さん:
しょうゆとか、お酒、飴、砂糖。

竹内章アナウンサー:
飴って何ですか?

店主 浅田博子さん:
じろ飴です。

じろ飴とは、金沢市の老舗「俵屋」が米と大麦を原料に作る「水あめ」のこと。金沢のお土産としても人気の飴だが、料理の隠し味として使われることもある。

竹内章アナウンサー:
お砂糖だけではなく、じろ飴を入れるんですね。

店主 浅田博子さん:
入れると、絶妙な味わいになるんです。

じろ飴を隠し味に65年継ぎ足し使ってきたタレが、かば焼きに深みを与えるという。では、その味は?

竹内章アナウンサー:
ふー、ふー。熱々なので冷まして。あーいい香り。いただきます!

一本いただくことに…

竹内章アナウンサー:
あっ!おいしい!表面はカリカリ、サクサクしているけど、身はすごく柔らかいんですね。

店主 浅田博子さん:
骨まで柔らかくないと、駄目ですね。

竹内章アナウンサー:
そうか骨ごと食べるから…。いや、すごい!骨なんか全然気になりませんね。ドジョウのちょっとほろ苦いのと、この甘辛いタレが合いますね。

竹内章アナウンサー:
浅田さんは2代目ということですが、3代目は?

店主 浅田博子さん:
内孫が4人いるんですけれど、一番下の今12歳の子が「やる」って。ははは。

竹内章アナウンサー:
歴史ある金沢の食文化の一つで、ソウルフードみたいな部分もありますからね。

店主 浅田博子さん:
「ああ、この味だった。昔食べたの」と喜んでくださる方もいます。この味を伝えていけるといいですね。

金沢の歴史と文化が生んだ「どじょうのかば焼き」。ぜひ一度味わってもらいたい。

(石川テレビ)