加賀藩の武家屋敷跡が有名な、石川県金沢市の長町。この町にある卵専門店に「たまご巻」という名物がある。見た目は何の変哲もない卵焼きだが、知る人ぞ知る一品だという。その味に迫った。

卵一筋50年!1種類の卵だけを販売する卵専門店

金沢市長町
金沢市長町
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用水が流れる風情ある通り、金沢市長町「せせらぎ通り」。

一見すると卵専門店とは分からないが…
一見すると卵専門店とは分からないが…

この通りに噂の卵専門店がある。それが、田島鶏卵(たじまけいらん)だ。

店主の田島のぶ子さん
店主の田島のぶ子さん

切り盛りするのは、店主の田島のぶ子(たじま・のぶこ)さん、御年78。

この日も、常連客が名物「たまご巻」を買い求めにきていた。

常連客:
たまご巻、おいしいんやで
ーー何年ぐらい、この店に来ているんですか?
40年以上やな

名物「たまご巻(300円)」
名物「たまご巻(300円)」

常連客も絶賛の「たまご巻」だが、販売は火曜と土曜だけだ。普段売っているのは、卵だけ。

自慢の卵と、その卵から作られる逸品「たまご巻き」について、竹内章アナウンサーが話を聞いた。

ーー田島鶏卵の創業は?
田島鶏卵・田島のぶ子さん:

昭和10年、1935年ぐらいと聞いています

ーーずっと、この場所で卵だけを売っているんですか?
はい、1種類だけ

ーー失礼ですが、卵だけ売っていて商売になるんですか?
なります。何とか…、はははは。
昔は、従業員が8人ぐらいいたんです。当時はたくさん仕入れて、大型トラックで学校給食とか、病院にも配達していました。でも、おじいちゃんもおばあちゃんも亡くなって、夫も亡くなって、今は私とパートで来ている娘だけ。だから、これでちょうどいいんです

田島鶏卵の商品は卵だけ
田島鶏卵の商品は卵だけ

ーーいま、卸しているのは?
飲食店やパン屋さん、ケーキ屋さんとか。そんなに数はないけど、近くのお店屋さんにね

田島鶏卵には、開店と同時に、客から電話で注文が入る。

田島鶏卵・田島のぶ子さん:
はい!田島です

注文が入ると店番を娘に頼んで、田島さん自ら自転車で卵を配達する。

ーー毎日、何軒くらい配達にまわるんですか?
12軒から13軒というところかな…

自転車でさっそうと配達へと向かう、田島さん。

そして、お店に戻ると、もう一仕事。

名物「たまご巻」作りだ。

名物「たまご巻」の秘密に迫る

田島さんは、卵焼き用のフライパンを2つ、同時にコンロに並べ、火をつける。そして卵を流し込んだ。

ーーいちどに2個焼くんですか?
主人は、5個ずつ店先で焼いてたんです。そしたら、いい匂いがするから、よく売れたの。ははははは

店に立つ田島さんの夫・睦明さんの写真
店に立つ田島さんの夫・睦明さんの写真

田島さんの夫・睦明(むつあき)さんは若い頃、大阪にある卵の卸売り店で修業していた。その店では、割れたりして商品にならない卵を、卵焼きにしていたそうだ。金沢に戻った睦明さんは、卵専門店の卵焼きは看板商品になると考え、修行先での経験を生かして、「たまご巻」の販売を始めたのだという。

ーーダシの中身は?
ダシの中身は三温糖、濃口しょうゆ、塩です。昆布のダシで作ってないから、勝手に「たまご巻」って呼んでます。

ーー「卵焼き」とも違うんですか?
「卵焼き」って、2、3回巻いただけのものを言うらしいんです。家庭で作るのは「卵焼き」。うちは、5回か6回巻いているから、「卵焼き」とは違うのかなって…

ーー確かに、相当、分厚いですよね

幾重にも卵を巻くから「たまご巻」と名付けたそうだ。13年前に睦明さんが他界してからは、のぶ子さんが一人でこの味を守り続けている。

早速、作り立てをいただくことに…。

「たまご巻」をいただく竹内アナウンサー
「たまご巻」をいただく竹内アナウンサー

竹内章アナウンサー:
おぉー、湯気が出て、おいしそうですね。
うん!おいしい、本当に。甘さも、しょっぱさも、ちょうどいい。これは絶妙ですね。
でも、この「たまご巻」を継ぐ人はいるんですか?

田島鶏卵・田島のぶ子さん:
いない。娘は2人とも嫁いでいるし…

ーーお店は、いつまで続けようと?
もう2年できればいいなと思ってます。あと2年で80歳だから…

知る人ぞ知る、卵専門店の「たまご巻」。田島さんには、2年と言わず、いつまでもその味を守り続けて欲しい。

(石川テレビ)

石川テレビ
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