コメのフードロスを削減したいと会社を立ち上げ、奮闘する岡山市出身の女性がいる。
コメ農家で生まれ育った彼女が伝えたい思いとは。
古いコメを活用した「玄米カイロ」
主食として日本の食卓に欠かせない「コメ」。
古くから、コメを作るには88の手間がかかると言われるほど、その作業工程は多く、機械化が進んだ現代でも決して簡単な作業ではない。
LELION・五賀晶子代表:
後継者の若手がいないことが問題だと思う。古米などに目を向けて、新しい農業の形や可能性を広げることが継続するために大事
岡山市で約200年続くコメ農家に生まれた五賀晶子さん(34)。
フードロスの削減や、オーガニックライフをテーマに、商品開発や販売を行うブランド「LELION」の代表。
彼女が手掛ける商品が今、SNSを中心に話題を集めている。
それが、売れ残って捨てられるはずだった古いコメを活用した「玄米カイロ」。
電子レンジで温めると、中に入った玄米の水分が蒸気になって身体を温めてくれる商品。玄米が空気中の水分を吸収するので、300回以上繰り返し使うことができる。
2020年からインターネットで販売を始め、2021年は1,000個以上を売り上げた。
最近は、インスタグラムでの発信にも力を入れている。
(Q.SNSが知るきっかけに?)
LELION・五賀晶子代表:
多いですね。質問や問い合わせはほとんどSNS。インスタグラムを見て、(商品を)買いたいと言う人が多い
深刻な問題となっている「コメ余り」
近年、深刻な問題となっている「コメ余り」。
農林水産省によると、2021年生産されたコメの民間在庫量は、2022年5月末時点で204万トン、2015年からの統計で在庫量が200万トンを超えたのは初めて。
食の多様化でコメ離れが進んでいるのに加え、コロナ禍で外食需要が減り、業務用のコメの消費が大幅に落ち込んでいるのが大きな理由。
五賀さんの原動力となっているのは、幼い頃に抱いたある思い。
LELION・五賀晶子代表:
コメ農家に生まれて、親の作業をずっと見てきて、大変さも知っていて、売ることの大変さも一緒にそばにいて感じてきたので、何か違う形で私が継げないかなと
1988年8月8日、コメの日に岡山市で生まれた五賀さんは兵庫県の大学を卒業後、2012年に大手航空会社に就職。
キャビンアテンダントとして世界20ヵ国以上を飛び周り、多忙な日々を過ごしていたが、4年前、父親が体調を崩したことをきっかけに農業を手伝い始めた。
そこで、あらためてフードロスの現状を知り、古いコメを使った商品を販売したいと、かつてのCA仲間とともに2020年にLELIONを立ち上げた。
LELION・五賀晶子代表:
新米ができると、どうしても去年のコメが古くなってしまうので、そこを何とかできる商品を作りたかった。思いついてからは、とにかくやってみないと分からないと、手縫いで。本当に良い方ばかりに巡り会えたので、助けてもらってようやく形になった
フードロスきっかけに…農家の新たな可能性切り開く
この日、五賀さんの姿は高梁市成羽町の吹屋ふるさと村にあった。
手作りした調味料の販売を行う佐藤紅商店、実はここから、玄米カイロに必要不可欠なあるものを仕入れている。玄米の保存性を高めるため、カイロの中に入れているトウガラシ。
彼女の取り組みに賛同した佐藤さんが、本来捨てられるはずの規格外のトウガラシを半年に1回提供している。
佐藤紅商店・佐藤拓也代表:
良いものを作ろうという意識が高いので、出来の悪いものに向き合う時間が正直ない。そういったところに目を向けてくれる人がいるのは安心できる
LELION・五賀晶子代表:
作ることは皆さん上手だが、販売に手が回っていなかったり、どうやって販売してよいか分からなかったりする人がけっこういる。私が販売する枠を増やせたら
五賀さんの取り組みは、点から線へと広がり、大きな輪になろうとしている。
現在は、神奈川・鎌倉市のアパレルメーカーとタッグを組み、コメを素材に使った洋服を開発中の五賀さん。
フードロスをきっかけに、農家の新たな可能性を切り開こうと奮闘する彼女の今後の夢は…
LELION・五賀晶子代表:
農業でフードロスと言われても、皆さんなかなかイメージしづらいと思う。身近にあるものから商品を手にとってもらい、その先に背景を感じてもらいたい。困った農家があれば相談に乗って、プロデュースできれば
(岡山放送)