7月8日、選挙応援中に凶弾に倒れた安倍晋三元首相。現行犯で逮捕された山上徹也容疑者(41)は、調べの中で犯行動機について「母親が宗教団体に多額の寄付をし破産した」と供述しています。

なぜ宗教団体への恨みが、安倍元首相に向かってしまったのでしょうか。「めざまし8」は、その宗教団体や同級生・知人を取材。ちょうど20年前を境に、比較的裕福な家庭に育った山上容疑者の周辺に劇的な変化があったことが明らかになってきました。

「賢くて真面目」な少年がなぜ凶行に?

バスケットボール部の仲間と ユニフォーム姿の山上容疑者
バスケットボール部の仲間と ユニフォーム姿の山上容疑者
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これは、めざまし8が独自に入手した山上容疑者の中学時代の写真。バスケットボール部の仲間とともにおそろいのユニフォーム姿を見せています。当時の山上容疑者は、どんな人物だったのでしょうか。

中学時代に同学年だった男性:
まさか知っている子がっていう感じ。(中学時代は)宿題とか教えてたりした。友達とかも、そんな仲良くするって事はあんまりなかったみたいなんですけれど、普通の会話なり、そういう感じのことはしてた。

中学時代、友人に宿題を教えるなどしていたという山上容疑者。また小学校・中学校のころを知る人によると…。

小学生時代
小学生時代

小・中学校時代を知る人:
勉強も運動もできて、性格も穏やかで優しくて、皆からも好かれているっていう、非の打ち所のない感じの人でした。先生からも一目置かれていて、「山上ならこの問題解けるだろう」みたいな。

中学の卒業アルバム ニックネームは「こてつ」
中学の卒業アルバム ニックネームは「こてつ」

中学の卒業アルバムに書かれたニックネームは「こてつ」。勉強だけでなく、スポーツも得意でバスケットボール部に所属していました。部活が一緒だったという友人は…。

山上容疑者と部活が一緒だった中学時代の友人:
模範的ないい中学生。まず賢いですし、真面目ですし、不平不満も言わず、運動も勉強も平均以上にできる人。誰かに嫌われることも嫌うこともないが、目立ってしゃべっているイメージはない。おとなしい人、本当に毒気がない人だったので、みんな(勉強を)聞いていたと思います。

奈良県内でも有数の進学校へ
奈良県内でも有数の進学校へ

そして、奈良県内でも有数の進学校に進んだ山上容疑者。

高校時代を知る人:
応援団に所属。野球部の試合の時とか活躍していた。

高校では応援団に所属 学校生活はひとりで過ごすことが多かったという
高校では応援団に所属 学校生活はひとりで過ごすことが多かったという

高校の卒業アルバムには、学ラン姿に白い手袋をはめ、ポーズをとる姿がありました。応援団に所属していたといいます。しかし、その一方で…。

高校時代の友人:
学校生活では友達と距離を開けるタイプ。いつも1人という印象が強い。昼食とか休み時間も1人のイメージが強い。

友人たちと行動するのではなく、ひとりで過ごすことが多かったといいます。そんな山上容疑者は、どんな家庭で育ったのでしょうか。めざまし8は、一家をよく知る人物を取材しました。

裕福な家庭が崩壊 きっかけは“母親の破産”か

一家をよく知る人:
祖父は建設業をしていて、普通のサラリーマンよりは稼いでいた。国産の高級車に乗っていたけど、(生活が)そんなに苦しいとかなかったと思います。

一家をよく知る人物によると、幼い頃に父親を亡くし、母親と祖父、妹らと暮らしていたという山上容疑者。比較的裕福な家庭だったといいます。しかし、山上容疑者に思わぬ事態が…。

母親が宗教団体にのめり込み、多額の寄付をして、破産したと供述している山上容疑者。めざまし8の取材で、2002年8月に山上容疑者の母親が破産したことが確認できました。

母親が入信している宗教団体に、めざまし8が取材すると…。

宗教団体のコメント:
山口容疑者の母親が2000年に入会しているという記録が残っているので、長年信者として活動しているのは間違いない。しかし、経済的な事情などは一切分からない。

しかし、警察の調べから、山上容疑者がこの宗教団体への恨みを募らせ、その矛先がやがて安倍元首相へと転じる過程が見えてきました。

山上容疑者は犯行の動機について、「母親が宗教団体の信者で多額の寄付をして破産したので、成敗しないといけないと思った」「元々は団体の幹部を狙うつもりだった」「以前から安倍元首相と宗教団体の関係についても調べていた」などと供述しています。

母親が自己破産したのと同じ2002年8月、山上容疑者は「任期制自衛官」として海上自衛隊に入隊。「任期制自衛官」とは、自衛官候補生として、3カ月教育を受けた後、2年ないし3年間をひとつの任期とする自衛官です。

防衛省によると、山上容疑者と同性同名の人物が、同じ年の8月に佐世保教育隊に入隊。その後、当時広島県の呉港を母港とする護衛艦「まつゆき」で勤務していました。

この時、この同性同名の人物は「砲雷科」に所属し、銃や艦に備えられた武器の取り扱いなど初歩的な訓練を受けていたといいます。

手製の銃を製造 試し打ちをした形跡も…

逮捕後に行われた家宅捜索では、犯行時に使われたものと同じような手製の銃が数丁押収されました。

めざまし8は、マンションの家宅捜索の様子を捉えた映像を独自入手。そこには緊迫の瞬間が捉えられていました。

8日午後7時すぎ、爆発物処理班を含む捜査員らが、山上容疑者の自宅へと次々に入っていきます。部屋に入りきらないほどの捜査員たちが家宅捜索をしているのが分かります。

警察:
すみません、奈良県警なんですけど、爆弾が見つかったみたいなので避難してほしいんです

マンションの外でも、山上容疑者の自宅から爆発物らしきものが見つかったとして避難を呼びかける警察官。その後、1時間ほどで避難は解除されたということですが、辺りは一時緊迫した空気が漂いました。

さらに9日の家宅捜索で、山上容疑者の車にも犯行の準備をしていた形跡が残っていました。

車内から見つかったのは、銃痕のような穴がある数枚の木の板。この板について、山上容疑者は「銃の試し撃ちをするためだった」と供述。板は1メートルほどの正方形で、銃弾が貫通したような複数の穴が空いていたということです。

また、車内からは長さ30センチほどのトレイが複数見つかり、いずれもアルミホイルが巻かれていたといいます。山上容疑者は「火薬を乾かすためだった」と供述しているということです。

山上容疑者の高い計画性が、次々と明らかになりました。

「殺傷能力高い可能性」銃の自作と射撃どうやって?

山上容疑者は取り調べの中で「最初は爆弾を作ろうとしたが銃にした」と供述しています。

現場で使用された銃は、「筒にそれぞれ6発の弾が入っている」と供述。銃器ジャーナリストの津田哲也さは「拳銃より命中率・殺傷能力が高い可能性がある」と指摘しています。こうした爆弾や銃の作り方などは、海上自衛隊に入隊すれば習得できる技術なのでしょうか?

元海上自衛隊海将 伊藤俊幸さん:
海上自衛隊では、全く教えません。やることとしては、もともと持っている小銃の分解をして、もう一度組み立てる。そして、実際に射撃をするという訓練と教育です。なので、ゼロから作ったり、火薬を作るといったことはないです。

Q:自衛隊で銃の撃ち方は、どのように学ぶのか

元海上自衛隊海将 伊藤俊幸さん:

撃ち方は教えますが、基本的に「伏せ撃ち」と言って、おなかを付けた状態で銃床を肩にあてて、構えて撃つというものしか教えていません。

また今回、山上容疑者は2.5秒間空けて2回銃撃しています。伊藤さんによると、1回目の射撃による反動をものともせず、わずか2.5秒で態勢を立て直して2回目の射撃を行い、命中させていることから「銃の扱いに慣れ、経験がある」と指摘しています。

高い計画性 犯行前日から安倍元首相を付け狙う

山上容疑者の供述からは、執拗に安倍元首相を付け狙っていた計画性も明らかになりました。

まず、犯行前日の7日、安倍元首相は岡山市で応援演説。山上容疑者はこの時、岡山まで行ったと供述していますが、「手荷物検査などあり武器を持って近づけなかった」と話しています。

そして犯行当日、当初は長野で応援演説予定が前日に急きょ、奈良に変更。山上容疑者は奈良在住ということで、1時間半前には現場付近に到着し徘徊していました。

こうしたことから、山上容疑者が常に安倍元首相のスケジュールをチェックして、犯行の機会をうかがっていたことがわかります。長野から奈良に急きょ遊説先が変更となったことが、事件へと繋がってしまったのでしょうか。

政治ジャーナリスト 田﨑史郎さん:
その可能性はありますが、長野に行く予定は候補者の問題があって、奈良の方が危ないということで急きょ行かれたんですね。政治家の方々は選挙を命がけでやられているんです。自民党の政治家ですから、警備のことを表向きに批判することはないのですが、なんとかならなかったのかという思いを政治家の方々は抱いていると思います。
安倍さん自身は、警備に関してはおまかせで、特になにか注文することはないんですけれども、今こういったことに安倍さんがなって、自民党の政治家の方に取材すると、警備体制、あるいは現場の対応、これでよかったのかっていうのはあります。

(めざまし8 7月11日放送)