5年前、神奈川県大井町の東名高速で起きた、あおり運転死傷事故の差し戻し審の判決公判が、午後1時半から開かれた。横浜地裁は、危険運転致死傷などの罪に問われた石橋和歩被告(30)に対して懲役18年の実刑を言い渡した(求刑・懲役18年)。

争点だった「危険運転罪」の成立を認めた。弁護士によると、石橋被告は、判決について「非常におかしい。自分の述べたことをちゃんと理解されていないのは、とても残念だ」と話していて、即日控訴する意向だという。

起訴状などによると、石橋被告は、2017年6月5日、神奈川県大井町の東名高速で、車を運転中に、萩山嘉久さん(当時45)の家族4人が乗ったワゴン車に、あおり運転を繰り返し、高速道路上に車を停止させたという。

そこに後続のトラックが突っ込み、萩山さんと妻の友香さん(当時39)が死亡し、娘2人が負傷。石橋被告もケガをした。

事故直前、近くのサービスエリアで、石橋被告は、車の駐車位置をめぐって、萩山さんから注意され、そのことに腹を立てて、あおり運転に及んだとされる。高速道路上で車を降りた石橋被告は、歩いて近づき、萩山さんの胸ぐらをつかむなどした所に、トラックが突っ込んだという。

危険運転致死傷などの罪に問われた石橋被告は、これまでの裁判で「自分は事故になるような危険な運転はしていないし、人がけがをしたり、亡くなったりする事故はしていない」として、「危険運転罪」については無罪を主張。

また「相手の車が減速して止まって、自分も減速して止まった。相手が先に止まった」と事故当時の状況を説明し、萩山さんの車を高速道路上に停止させたことを否定した。弁護側も、後続のトラックに過失があったと主張している。一方、検察側は、「執拗かつ危険で悪質な犯行」として懲役18年を求刑していた。

きょうの判決で横浜地裁は、「死傷した結果は、妨害運転の危険性が現実化したものと言える」として「危険運転致死傷罪は成立する」と判断し、懲役18年を言い渡した。法廷で石橋被告は、椅子に深く腰掛けたまま、判決文の読み上げを聞いていた。

石橋被告をめぐっては、2018年、横浜地裁が危険運転罪を認定して、懲役18年の判決を言い渡した(求刑・懲役23年)。しかし、控訴審で東京高裁は、裁判の手続きに違法な点があったとして、一審判決を取り消して、審理を差し戻した。このため今年1月から、横浜地裁で”異例”の裁判のやり直しが行われていた。

社会部
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