山口県阿武町(あぶちょう)で24歳の男性に給付金4630万円が誤って送金された問題。
返金を拒んでいる男性の弁護士が16日会見し、「お金はなく、返せない」と語りました。
男性を提訴した阿武町はどう回収していくつもりなのか。めざまし8は、この男性側の会見を受けて、納得がいかないという副町長を独自取材しました。

返済困難に「納得できない」…副町長を独自取材

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Q.お金はなくて返せないという趣旨の話があったことについては?
副町長:
私としてはまだ納得しているわけではありませんので、引き続き、これからも粘り強くお金の流れと現在どうなっているかということは調べて行く必要があると思っております。
回収できるのかできないのか、というところが一番、町としては関心が高いです

16日夜、めざまし8の独自取材に応じた、山口県阿武町の中野貴夫 副町長。
町内に住む24歳の男性に誤って振り込んでしまった、コロナ関連の給付金4630万円の回収について「納得できない」という言葉を口にしました。

そう語る理由は、この約2時間前、16日午後5時過ぎに行われた会見にありました。
記者会見場に現れたのは、24歳の男性の代理人を務める弁護士。弁護士が顔出しNGという異例の形式で、会見が始まりました。
報道陣の関心は「お金がいま、どこにあるか」ということ。これについて弁護士は…

4630万円使い切った?「本人は所持していない」弁護士顔出しNGの異例会見

弁護士:
本人現在、そのお金を所持しておりません

“男性はもう、お金を所持していない”という言葉。
なぜそんなことになっているのか、めざまし8の田中良幸リポーターが弁護士に質問すると…

Q.一般的に考えて返すのが普通なのでは?
私もその通りだと思います。
なぜ、(そのような事態が)起きたかということについては、ちょっと説明に時間がかかるかなと思いますので、いずれ発表させていただく形になる

Q.返せない?
現状では返せないという状態でございます。

Q.使い切ってしまった?
概ねその理解で正しいと思います。何か財産的価値のあるものが本人の手元に残っている状態ではないと聞いております

お金は“概ね使ってしまった”、そして、財産的価値のあるものは手元にはないというのです。

Q.金の使い道は?
事実確認ができないということで相手方には提供しておりますので、ちょっとそちらの様子を見て、こちらも対応を考えたいと思っております。

Q.金が払えない経緯を説明する気はない?
そういうご要望があるということは本人にお伝えしておきます

何に使ったのかについては説明はされず。そして返金については…

弁護士:
ですので、現実的な問題として、返還が難しい状態となっております。
今後の返還につきましては、訴状を確認した上で、訴訟の中で相手方代理人と協議をして、何らかの解決がはかれるように検討していきたいと考えております。
もちろん私の方からは、私も皆様と感覚的にそんなに離れているものではないので、何か残っている物があれば返すようにと言っていこうかと思っていますけども、今のところ残ってないというふうに聞いております

「粘り強く調べていく」「お伝えする義務がある」

「4630万円の返金は難しい」。この説明に、副町長は…

副町長:
私としてはまだ納得している訳ではありませんので、引き続きこれからも、粘り強くお金の流れと現在どうなっているかということは調べて行く必要があると思っております

Q.返せないと言われても町としても納得はできない
もちろんそのように思っておりますし、やはり現在どうなっているかということは、町のみなさんにもお伝えする義務があると思っております

Q.弁護士を通じて会見より詳細な情報は聞いている?
今以上の情報は聞いておりません。だけど今後、弁護士さん同士で話す機会もあるんじゃないかと思います。
今後もう少し詳しい情報が入れば、またこちらのほうにも連絡いただけると思いますし、 なによりも私たちとしては、お金が返ってくるように取り計らっていただけると助かるなと思います

事の発端は、4月8日。
阿武町が町内のコロナ禍で苦しむ463世帯の家庭に対し、1世帯につき10万円の臨時特別給付金を振り込んだことでした。

ところが、それとは別に、給付対象である463世帯への総給付額となる4630万円という大金が、24歳の男性に“誤送金”されてしまったのです。
ミスが発覚した当日、職員が自宅を訪問し事情を説明。当初は返金に同意していましたが、「どうして欲しいか説明の文書をくれ、きょうは手続きをしない」と態度を急変させ、お金を戻す手続きを先延ばしにしたといいます。
町はその後も、男性への訪問を繰り返し、謝罪とともに返金を求めましたが、男性は返金を拒否。町はその後、男性と連絡が取れなくなっていると明かしていました。

24歳男性「所在不明でない」 警察で2回聴取&スマホ提出が明らかに

弁護士:
現在、本人と連絡が取れず所在不明になっていると報道されているようですが、これは必ずしも正確な情報ではございません。
本人は4月の段階で、 山口県内の警察署に任意に出頭し、事情を全て説明しております。
本人がお金を持って行方不明になってるから探し回ってるんだ、というような事態があるのでは、ということがありましたので、必ずしもそういうわけではないと

4月と5月の2度にわたり、警察に任意の事情聴取を受けており、行方をくらましているわけではないと主張。連絡が取れなかった理由については…

弁護士:
本人使用のスマートフォンを、任意提出を求められたため提出し、当該スマートフォンは現在まで返還されておりません。
恐らくこれによって、連絡が通じなくなったことを思って、町の方は連絡が通じなくなったと誤解されたのではないかと思っております

副町長「大きな一歩」も…お金の流れは不明確

こうした説明について、中野副町長は…

副町長:
本当に電話をいくらかけても通じませんでしたし、所在もわからなかったんで、どうしたものだと思っておりましたが、今回そういうような発表がありましたのでちょっと安心したかなと思います

ひとまず、所在不明ではないことに安心したといいます。そして、担当の弁護士がついたことについても…

副町長:
代理の弁護士さんがおられるということで、これから連絡ができるということは大きな一歩かなと感じております。
当事者の方に何かあったら、本当にちょっとどうかなと思ってたんですけど、お元気だというようなことで今回代理を立てられたということで、ひとまずは私個人は安心しております

今後の具体的な対応について聞くと…

副町長:
Q.町として今動いていることは?
警察の方は警察の方できちんと捜査されているということがきちんと確認できましたし、私たちは民事のほうで、これからお金をどうやって回収するかということに全力を尽くしていきたいと思います

「粘り強く4630万円の回収を目指す」と語った副町長ですが、しかし、そこにはもうひとつの問題が。
町側は男性に対して返金を求める訴訟を起こすと共に、銀行預金などの「仮差し押さえ」を行っていると言いますが…

副町長:
仮差し押さえまではわかっている範囲では終わっていますけれど、その銀行のどういう口座にどれだけ振り込まれたかと、またそれから、その口座からほかに移されているのかどうかも、まだ解明できておりません。
ので、引き続き粘り強くその辺りの解明についてはしていこうとは思っております

「仮差し押さえ」をしているものの、お金の動きが、わかっていないといいます。
そんな中、弁護士の会見からは、男性がどうお金を動かしていたか、その一端が見えてきました。

4630万円別の口座に?「スマホで送金」第三者の関与は?

Q.現金を引き出したというわけではないのか?それと誰かと一緒にやったのか1人でやったのか、という話は出ている?
弁護士:
まず1点目、本人からはですね、スマートフォンの操作で送金しているというふうに聞いております。
2点目の誰かの関与があるかという点、気にされるのは最もかと思いますけれども、私が関わってる限りにおいては第三者の関与の影は特に見られません

弁護士によると、男性は、ネット決済で他の銀行にお金を移したといいます。
また、第三者の関与はなく、一人でやったようだと明かしました。

コロナ給付金の「誤送金」をめぐる異例の展開。

副町長:
テレビ等でも多く取り上げられていますので、全国から相当数のお電話をいただいております。やはり、税金をそういうふうに二重払いしてしまったというお叱りの電話が多いです。事実として受け止め、とにかくこれから解消等に向けて、全力を尽くしていきたいというふうに思っております

(めざまし8 5月17日放送)