きょうから一斉に「新成人」

新成人の皆様 成人おめでとうございます。日付が変わった4月1日。この瞬間から一斉に「成人」となった少年少女がいる。明治9年(1876年)以来、146年ぶりに成人年齢が変更となり、1日時点で18歳、19歳の若者が新成人に達した。成人になることで、様々な事柄が自分の意志一つで決められることになる。

1人暮らしのアパートの賃貸契約、携帯電話の購入、クレジットカードの作成等々、これまでは必要だった親の同意が不要になり、契約を結ぶことができる(業種や会社によって年齢制限は異なるので要注意)。

4月1日から、18~19歳が、一斉に「新成人」となる。
4月1日から、18~19歳が、一斉に「新成人」となる。
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一方、20歳の年齢制限が残るものも。酒・たばこの飲酒・喫煙のほか、競馬などの公営ギャンブルの利用などは、健康被害やギャンブル依存症への影響を考慮し20歳以上という年齢制限が設けられたままになっている。

このように18歳、19歳をめぐる環境が一変した中で、さらに、もう一つ大きく変わったのが、少年犯罪の処分や手続きを定める“少年法”だ。

10代で起こした犯罪も厳罰化 甘くはない“大人の世界”

18歳以上が成人として扱われるものの、少年法では引き続き20歳未満が対象となっている。ただ、18歳、19歳に関しては、1日から施行された改正少年法で、「特定少年」と位置づけられ、17歳以下とは区別し、一部で厳罰化の規定が盛り込まれている。

端的に言うと、18歳以上は、罪を犯すと大人と同じ裁判を受けるケースが増え、これまでよりも厳しい処分が科されることになる。これまでは殺人など「故意に人を死なせた事件」のみを、原則として、家庭裁判所から検察官に身柄が送致される、いわゆる「逆送」が行われていた。

18歳~19歳は「特定少年」と位置づけられ、事件を起こしたら「厳罰化」される。
18歳~19歳は「特定少年」と位置づけられ、事件を起こしたら「厳罰化」される。

しかし改正少年法では、特定少年が起こした事件で原則「逆送」する対象の事件を「死刑,無期又は法定刑の下限1年以上の懲役・禁錮に当たる罪」に拡大した。この条件を満たす原則「逆送」対象事件としては、強盗や強制性交等罪のほか、人の住む建物を燃やす現住建造物等放火罪、振り込め詐欺のような特殊詐欺グループによる組織的詐欺罪などがある。

この中で、例えば、強盗と言えば、ひったくりや刃物でコンビニに押し入る様な手口を思い浮かべるかもしれない。ところが、万引き(窃盗)をしようとして、品物を盗んで店を出たところ、店員に見つかり、逃げようと振り払った手が店員などにあたってしまうと「事後強盗」に問われるかもしれない。

さらに手があたった勢いで店員が転んでけがをしてしまったら「事後強盗致傷」の罪に問われることもある。きょうからは、特定少年がこのような事件を起こすと、逆送され起訴される可能性がある。ちょっとした出来心では済まなくなるということだ。

特定少年が起訴されると“実名報道”解禁に

これまで20歳未満の事件は少年法で、本人が特定される実名報道は禁止されていた。しかし、今回の少年法の改正で、18歳、19歳の特定少年が起こした事件で正式に起訴された場合、実名、年齢、職業、住所、画像など犯人が誰なのか特定できる推知報道・実名報道が解禁され、大人と同じように公開の裁判を受けることになる。

ただ、こうした実名報道が解禁されることに懸念の声も上がっている。少年の権利に詳しい弁護士は、実名報道の影響は更生や再犯防止の観点で悪影響を与えると次のように指摘する。

「特定少年の場合、就職したり、進学したり、親から自立したり、アパート借りたりするなど自活して行く時期でもあり、自活できるということが今後再犯防止になる。一旦、実名報道されるとインターネット上に残り続ける可能性があり、例えば、家の賃貸契約を結ぶ際に大家が名前をネット検索して契約を決める人もいて、契約を断るケースもある。こうして自活することが出来ない環境の中では、再び犯罪に手を染める恐れがある。」

法務省は、服役中の特定荘園について、”大人の自覚”を促す取り組みを進めている。
法務省は、服役中の特定荘園について、”大人の自覚”を促す取り組みを進めている。

一方、法務省は、実刑判決を受け刑務所に服役する特定少年について出所後に社会に復帰して活躍出来るような更生プログラムや、“大人の自覚”を促す教育支援などを刑務所で受けられるよう準備をすすめているという。

大人の仲間入りをした18歳、19歳。一つ一つの行動に責任が伴うことを自覚して、犯罪に巻き込まれることなく豊かな人生を歩んでいってもらいたい。
(画像はいずれもイメージです)

(フジテレビ社会部・司法クラブキャップ 内橋徹)

社会部
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今、起きている事件、事故から社会問題まで、幅広い分野に渡って、正確かつ分かりやすく、時に深く掘り下げ、読者に伝えることをモットーとしております。
事件、事故、裁判から、医療、年金、運輸・交通・国土、教育、科学、宇宙、災害・防災など、幅広い分野をフォロー。天皇陛下など皇室の動向、都政から首都圏自治体の行政も担当。社会問題、調査報道については、分野の垣根を越えて取材に取り組んでいます。

内橋徹
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体現・一生懸命・人事を尽くして天命を待つ
自分の目=視聴者の目、自分の耳=視聴者の耳、として、
驕ることなく目の前の事を一生懸命わかりやすく伝えたいと思っています。

フジテレビ報道局記者。福岡県久留米市出身。学生時代はラグビーに没頭。2006年入社、報道カメラマンを経て、警視庁、司法、宮内庁担当記者として事件・裁判・皇室取材に奔走。
2015年にカイロ支局長、2017年にイスタンブール支局長。現社会部。