成人年齢が18歳に引き下げられた。少年法も改正され、18歳と19歳は厳罰化の対象となり、成人と同様の裁判を受けるケースが広がることになる。

これまでは主に殺人罪が対象だったが、放火や強盗なども対象となった。また罪を犯した18歳、19歳の少年が起訴された場合は実名報道が可能となる。少年の更生を信じて、少年法と向き合い続ける被害者を取材した。

罰を与えるのではなく、受け止めてあげたい

山口由美子さんが左の頰に消えることのない傷を負ったのは、2000年に起こった「西鉄バスジャック事件」でのことだった。

バスを乗っ取ったのは当時17歳の少年。山口さんは左の頰を、他の2人は首などを包丁で切りつけられ、うち1人が死亡した。

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山口由美子さん:
(犯人が)やってることは本当に大変許せないんですけど、どうしてそういう経緯に至ったかという、そこが意外と抜け落ちてる部分があると思うんですよね

山口さんは、これまで22年に渡って「加害少年に罰を与えるのではなく、受け止めてあげたい」と訴え続けてきた。一貫した訴えの背景には自身の苦い経験があった。

西鉄バスジャック事件の被害者・山口由美子さん 少年院での講演も行っている

山口由美子さん:
子どもが不登校だったんですよ。不登校で私が受け入れてあげないとき、子どもは非常に寂しく、厳しい姿で家にいたんです。そのときのわが子の姿と、犯人の少年が包丁を振りかざしたときの姿がオーバーラップして、「彼がつらいんだ」と感じ取れたのかなと

これは少年院での講演も行う山口さんが、ある19歳の少年から受け取った感想文。つづられた一つ一つの言葉に、更正の余地を見いだしている。

少年(19)の感想文:
「救われた」という気持ちでした。「愛されたい」とずっと願ってきたその気持ちを、何でわかってくれるんだろう。わかってくれる人がいたことが、本当にうれしくて仕方なかった

山口由美子さん:
厳罰にすることが、その子たちにとっていいのか。自分の狭い生育環境でしか世の中を知らない子たちに、もう1回ちゃんと向き合ってくれる大人との出会いが、絶対必要だと思います

実名報道の解禁「自立しにくくなる可能性」

一方で罪を犯し、今まさに更生を目指している少年たちは、今回の法改正をどう受け止めているのか。

福岡・田川市にある、少年の更生保護施設「田川ふれ愛義塾」。ここでは、少年院を仮退院して保護観察処分を受けた少年少女が集団生活を送っている。

――ここに来るまでは料理は?

少年(19):
全然しなかった。ずっとコンビニの飯でした

田川ふれ愛義塾・工藤良施設長:
掃除と食事だけはしっかり覚えて欲しいからですね。きょうはカレーと野菜サラダ。あとはメンチカツ

田川ふれ愛義塾・工藤良施設長

何人もの非行少年の独り立ちを支援してきた施設長の工藤良さんは、今回の法改正は大きな分岐点になるとみている。その理由は「実名報道の解禁」だ。

田川ふれ愛義塾・工藤良施設長:
再犯を犯させないためにやっていくとすれば、やっぱり名前を出されるというところで、影響がかなり心配です。未熟なところに(実名報道が)絡んでくれば、なおさら自立しにくくなる可能性もあるなと思いますね

傷害や窃盗を繰り返した少年 夢の実現めざして

職場から施設に帰ってきた少年と工藤さんが、やり取りを交わす

田川ふれ愛義塾・工藤良施設長:
今、仕事どうなん?

少年(18):
普通に仕事は忙しいというか、自分のペースでやっているんですけど。きょうは元気ないねって言われて、見てくれてるなと

仕事から施設に返ってきた少年と言葉を交わす工藤さん

職場でのやり取りを報告するこの少年は18歳。傷害や窃盗を繰り返し、3回少年院に入った。4カ月前に施設にやってきてからは、自動車工場で働きながら夢の実現に向けて資金をためている。

少年(18):
自分、美容師っていう夢があるので、その免許をとってから自立できたら…

少年は夢のために働き、資金をためている

そんな少年に「もし自分が犯した罪が実名報道されていたら」と尋ねると、少年は言葉に詰まった。

少年(18):
正直、あのときはサルと同じだった。強くなるというか、箔(はく)付けというか、それを求めて今までいろんなことをしてきた。(実名報道されて)自分の名前がニュースに載る、そういうのを人が見たら、本当に大切な人たちは離れていくかなと思う。恐怖はあります

「自分が犯した罪が実名報道されていたら」という質問に…

入所者の多くは18歳や19歳だが、世間的にはまだまだ子どもの部分も多い。日々、ささいなトラブルの連続だ。職場でトラブルがあったという少女が、工藤さんと言葉を交わす。

少女(18):
前もあったやないですか、無視したりとか

田川ふれ愛義塾・工藤良施設長:
お前、それはまともに相手にせんで、受け流しきるやろ。あとはもう自分でコントロールしていくしかないから

職場でのトラブルを話す少女

工藤さんは、成人年齢を18歳に引き下げること自体にも疑問を投げかける。

田川ふれ愛義塾・工藤良施設長:
そもそも論というか、まず18歳にする必要が本当にあったのかなと感じるんです。結局、大人の事情で…。選挙権を持ってきたから、無理くりこういうふうになったんじゃないかと感じますね。19歳ギリギリとか20歳越えても、自分たちは少年扱いしてまだ関わっている子もいますけど、必ず響いてくるんですよね。やはり少年時代は罰じゃなくて、絶対教育なんですよね

18歳、19歳に真に必要なものは刑罰なのか、更正教育の機会なのか。改正少年法は4月1日に施行されたが、5年後には内容を見直す付則が盛り込まれている。

(テレビ西日本)

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