商品やサービスの代金を還元する「キャッシュバック」。これが悪用され、契約してもお金が戻らないトラブルが起きていると、国民生活センターが注意を呼び掛けている。

被害の流れは、(1)消費者のSNSに「SNSでPRをするだけで実質無料で利用できる」などと、契約を勧誘するダイレクトメールが届く。(2)キャッシュバックなどの説明を受け、消費者が自分名義で契約をする。(3)商品などを受け取り、SNSでPRをする。(4)キャッシュバックが振り込まれない、事前に聞いていない費用が発生し、約束が守られず消費者の負担になる、というものだ。

被害の流れ(提供:国民生活センター)
被害の流れ(提供:国民生活センター)
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国民生活センターによると、こうしたトラブルは2021年の夏ごろから目立つようになった。2021年度の相談件数は約400件にのぼり、このような被害が報告されているという。

・B社のモバイルWi-Fiとタブレット端末を契約して使い、SNSでPRすれば、A社からキャッシュバックされるので実質無料になると説明を受けた。しかし、PRしているのに一度も振り込まれない。
・スマートスピーカーのPRを依頼され、料金の負担はないと聞いていたが、商品が届かないまま利用料金がクレジットカードで決済された。
・PRすれば無料で受講できるオンライン講座で、別途商品の購入が条件になっていた。

場合によっては、解約時に違約金を請求されたり、割賦で購入した端末代金の残債を一括で請求されることもあるという。お得になるはずが、当初の説明とは違って、しっかりお金を取られるというわけだ。

代理店などが消費者と販売会社の間で独自に動いている

ただ、実際に還元する事業者もあるので、キャッシュバック全てが悪いわけではないはず。騙されないためにはどう見分ければいいのだろうか。国民生活センターの担当者に聞いた。

――報告されているトラブルの特徴を教えて。

最初にSNSのDMで勧誘されるのは共通していて、そこから派生するような形になります。無料通話アプリに誘導されてチャットで契約させられることもあれば、電話で契約させられることもあります。PRをした画面のスクリーンショットや文章の提出をさせているところも多いです。

消費者はお得だと思って契約しても、振り込まれないので負担になってしまいます。モバイルWi-Fiなどの機器、ウォーターサーバー、カニなどの食品でPRを勧誘するケースが目立ちます。騙された消費者のPR投稿を見て、自らアプローチをしてしまう消費者もいます。マルチとまでは言えませんが、被害が連鎖的に広がっているところもあります。

SNSで被害の連鎖が起きているようだ(画像はイメージ)
SNSで被害の連鎖が起きているようだ(画像はイメージ)

――トラブルの原因はどこにある?勧誘の目的は?

PRを勧誘しているのは商品やサービスの販売会社ではなく、取次店や代理店です。消費者と販売会社との間で独自のキャッシュバックを行い、それが問題になった形です。取次店や代理店の目的は想定ですが、契約数を増やして(金銭的な)インセンティブを受け取ることだと思います。

そして問題を把握しているのは、勧誘した事業者まで。販売企業は消費者の問い合わせを受けるまで、トラブルが起きていることも分からないはずです。把握したとしても、代理店が独自にやっていることとなるのではないでしょうか。
 

――トラブルに狙われやすい年代や性別の傾向は?

実際の相談を分析すると、性別では女性が約7割、男性が約3割で女性が多いです。年代では、約7割が20代~30代でした。SNSを普段からよく使う、見ている人たちと言えます。事業者側から見ると興味を持ってもらいやすい層と言えます。逆に高齢の方からの相談は少ないです。

SNSを通じて契約を結ばせることは一つの特徴かもしれません

――怪しいキャッシュバック、普通のキャッバックを見分ける方法はあるの?

見分けるのは難しいですが、真っ当な事業者がSNSで契約を勧誘するのはあまり聞きません。通信関連の機器を例に考えても、販促は電話や訪問、インターネットで消費者が自らできるものが多いです。SNSを通じて契約を結ばせることは一つの特徴と言えるかもしれません。

代金が全額戻るといった、おいしすぎる話にも注意してほしいです。問題がないキャッシュバックをする代理店の還元は、代金の一部が戻るようなものがほとんどです。怪しげなキャッシュバックをするところは、負担が大きくなり自転車操業になっているのではないでしょうか。消費者には「還元されるお金はどこから出るのだろう」と慎重になってほしいですね。

契約の前に意識しておきたい(提供:国民生活センター)
契約の前に意識しておきたい(提供:国民生活センター)

――怪しい事業者で契約した場合、お金は戻るの?

お金が完全に戻ったケースはほぼありません。商品やサービスが使える、食品なら食べたという事実があると、契約を取り下げてもらうのは厳しいのが現状です。ただ、請求される違約金の額を引き下げてもらう、代金の一括請求を分割してもらうなどのケースは確認できています。

消費者の対応は、勧誘された事業者と連絡が取れる場合、約束通りの対応をしてほしい、事前に知らない支払いはしたくないと伝えることが大事です。対応してもらえない場合、実際の販売会社に連絡をとり協力を求めることになると思います。このほか「188」の消費者ホットラインに連絡していただければ、何らかの情報提供やお手伝いはできると思います。

188の消費者ホットラインも頼ろう(出典:消費者庁)
188の消費者ホットラインも頼ろう(出典:消費者庁)

――成人となった18歳や19歳に気を付けてほしいことはある?

相談事例では20代~30代が多かったですが、これは2021年度の期間です。20代で多い被害は10代に降りてくる可能性が高いです。SNSで商品のPRという、インフルエンサーに近い活動でもあるので、若年層には一層、気をつけていただきたいです。若い世代の人は、SNSのDMで知らない人からメッセージが届くことに慣れていることも考えられるので、今回の注意喚起をきっかけに、このようなトラブルがあることを知っていただければと思います。

 

悪徳業者を見分けるのは難しいが「SNSを通じて契約を結ばせることは一つの特徴と言えるかもしれない」と担当者は語っていた。
成年年齢の引き下げで、2022年4月に18歳や19歳で成人となった人もいるだろう。未成年は民法で定められた「未成年者取消権」で契約を取り消せたが、この権利は行使できなくなる。契約を結ぶ際は、キャッシュバックなどの言葉につられず、お金は本当に戻るのか、追加費用は発生しないかなどを十分に確認したいところだ。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。