3月23日からフランス・モンペリエで開催される世界フィギュアスケート選手権。北京オリンピックの激闘からわずか1カ月、4年に一度の物語のすべてがこの大会で完結する。

「(疲れとかは)大丈夫です!逆にモチベーションが高い」と世界選手権が待ちきれないと話すのは鍵山優真、18歳。

鍵山優真
鍵山優真
この記事の画像(9枚)

初出場となった北京オリンピックでは、ショートで自己ベストをマークし、日本人最上位の銀メダルに輝いた。

メダリストとして臨むシーズン最後の大会、世界選手権。成長著しい鍵山は、常に努力する自身だけでなく、父・正和コーチや切磋琢磨する仲間の存在に支えられていた。

「自分のジャンプになってきた」高難度ジャンプ

当時6歳の鍵山
当時6歳の鍵山

2010年、当時6歳の鍵山は「夢はオリンピックです」と話した。

その夢と共に歩んできたのが現役時代、トップスケーターだった父・正和コーチ。二人三脚でオリンピックを目指してきた。

しかし、すぐに結果が出たわけではなかった。2017年に出場した全日本ジュニア選手権では12位になるなど、ジュニアの大会ではトップテンに入ることすらできなかった。

オリンピックの舞台は遠い夢のままだったが、いつしか鍵山は世界で戦えるスケーターへと成長した。

正和コーチと練習する鍵山
正和コーチと練習する鍵山

そのために正和コーチと取り組んだのが、高難度ジャンプの習得。ただ跳ぶのではなく、質の高さも追い求め、練習を重ねた。

その努力が実を結び始めたのが昨シーズン。

初出場の世界選手権で銀メダルに輝くと、今シーズンはグランプリシリーズ(イタリア大会・フランス大会)で2連勝。

一時、世界ランキング1位(2021年11月)に立った。

練習を積み重ねてきたジャンプも鍵山は「最近やっと『ひざが柔らかいね』みたいな。『ひざがお父さんと似ているね』と言われます。着氷の時にしっかりひざを使えて、静かな着氷ができているので、自分のジャンプになってきた」と手ごたえを感じていた。

「昌磨くんと滑っているとやる気が出たりする」

その練習の成果が最も現れたのが、鍵山にとって夢の舞台・北京オリンピック。

フリー冒頭の4回転サルコウの出来栄え点は4.43点(4.85点が満点)という、ほぼ満点に近い加点に。

親子で磨いてきた美しいジャンプで、羽生結弦とネイサン・チェンしか超えていない300点の壁をあっという間に飛び越えた。

オリンピック後のインタビューでは、親子で互いに感謝しつつ、鍵山は「メダル取ったんだと思いますけど、もう気持ちは次に向いているので、まだシーズン終わっていないぞと、気は抜けない」とすでに次の大会、世界選手権を見据えた。

北京オリンピックから約1カ月しか経っていない中で、鍵山がこれだけモチベーションを高く保てているのは、宇野昌磨がいたからだという。

練習に励む鍵山
練習に励む鍵山

「試合が終わった次の日から練習していて。ほとんど昌磨くんと一緒に滑っていたんですけど、すごく火をつけてくれるというか。一緒に滑っているとやる気が出たりするので、お互い切磋琢磨しているのが一番モチベーションになっている。昌磨くんももちろんですけど、(佐藤)駿とか(三浦)佳生くんとかいろんな選手が周りにいて、本当に恵まれているって自分でも思います」

オリンピックでフリー終了後には正和コーチからも「次に向けて頑張ろう」と背中を押されたと言い、本人も「本当に次しか見てなかった」と笑う。

「良い演技をすれば結果がついてくる」証明した北京オリンピック

昨年、初めて出場した世界選手権は銀メダル。

今回2回目の出場となる鍵山は「昨年は何も考えず、メダルも考えず、自分の演技をしただけでした。今回は昨年以上の点数と良い色のメダルを目指しているので頑張りたいと思うんですけど、それはのちのち結果でついてくるものなので、まずは自分の演技に集中して良い演技ができるように頑張りたい」と、メダルへの意欲を示しながらも、冷静さも見せた。

2021年の世界選手権
2021年の世界選手権

「良い演技が結果につながる」と鍵山がそう言う理由は、北京オリンピックにあった。「自分がやるべきことをしっかりとやることができていた4年間」であり、「自分がオリンピックで銀メダルが獲れたと思うのは、納得のいく演技ができたから。コツコツとやってきただけ」と語る。

鍵山は1つ1つの試合を大切に、課題をクリアしていき、次の一歩を進んできた積み重ねで結果を生み出してきた。

練習する鍵山
練習する鍵山

「悪い意味で言えば、北京オリンピックも課題だらけ」と明かし、「良い意味で言えば、伸びしろだらけ。でも次への一歩に確実につながるミスや課題だと思うので、世界選手権は今シーズンラストなので、力強いフリーを滑れるように頑張りたい」と意気込む。

昨年は銀メダルを取ったけれど、鍵山は「悔しい」とこぼしていた。

飛躍した1年の締めくくりとなる大会を「昨年の悔しさもありますけど、悔いのないように終わった時に笑顔で終われるように頑張りたい。できればガッツポーズをしたい」と笑顔を見せる。

オリンピックメダリストであっても常に“挑戦者”という気持ちは変わらないという鍵山。「4年後もスケート、全然やっていると思う」と話す、18歳の伸びしろは無限大だ。

世界フィギュアスケート選手権
フジテレビ系列で3月23日(水)から4夜連続生中継(一部地域を除く)
https://www.fujitv.co.jp/sports/skate/world/index.html

フィギュアスケート取材班
フィギュアスケート取材班