アフリカ・アジア・アメリカ・オセアニアの4つの大陸の選手が出場資格を持つ、四大陸選手権。フィギュアスケートシーズン後半のビッグイベントが、エストニア・タリンで1月20日に開幕した。

日本からは昨年末の全日本選手権での代表選考会を経て、男女シングル各3名、アイスダンスから1組が代表として選出。

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今回はその1人、三宅星南に注目する。

全日本選手権では自己最高の6位に入り、初の代表を掴んだ。心身ともに伸び盛りの19歳の思いに迫る。

“人間臭く”突き進んできたスケート人生

四大陸選手権で公式練習をする三宅星南

父の車好きに加え、“南十字星のように輝いて欲しい”と願いを込めつけられた“星南”という名前。

岡山県・矢掛町出身。3月で二十歳を迎える大学2年生は、地元のキャラクター・やかっぴーをティッシュケースで常に持ち歩く、地元愛に溢れる選手だ。

ひとたび氷に立てば、176センチの長身を活かしたダイナミックな滑りは存在感を放つ。

練習では体力の限界まで追い込み、どんなにボロボロになろうとも粘り強く食らいつく、根性も兼ね備える。そんな三宅は、髙橋大輔の恩師でもある長光歌子コーチともに、スケーティングや表現力も磨いてきた。

「それぞれのスケーターが自分の良いところ、個性を持っていると思うんですけど、僕もその人たちに負けない個性というか、人間臭さじゃないですけど、そういう部分に関しては他の選手にも負けないのかなと思います」

2014年全日本ノービス選手権で優勝。さらに2016年、ジュニア時代に初出場した全日本選手権では新人賞を獲得。2018年には世界ジュニア選手権に出場し、この世代をけん引してきたが、どこかもう1つ壁を破れずにいた。

「2019年の横浜であった全日本ジュニアの時が一番落ちたというか、悔しかったので、そこからここ2年ぐらいすごく変われてきているのかなって思います」

2019年全日本ジュニア

その2019年全日本ジュニア選手権。ショートで5位発進ながら、フリーでジャンプのミスを連発し、総合7位に終わった。この年の全日本選手権には推薦されず、悔しい思いを味わった。

この経験が自身のスケートと向き合うキッカケとなった。

「ジュニアの時期は、自分の中ではあまり思い通りの成績が出せなかったりとかあったんですけど、昨シーズンから意識も変わって、再スタートじゃないですけど、すごいいい気持ちで練習できているので楽しいです。

2021年に入ってから特に自分の成長の伸びしろがまだまだいっぱいあるんだなというのを感じることが多いので、それをだいぶ自分でもわかってきて、自信を持って良くなっていきたいと思えるようになったのかなと思います」

年々広がる表現の幅

どん欲に成長を求める今シーズン、三宅が演じる2つのプログラムは“もう1度見たい”と思わせる魅力が詰まった意欲作だ。

SPは映画「ゴースト/ニューヨークの幻」でお馴染みの「アンチェインド・メロディ」の楽曲を使用。「テレビ番組の中で、ミュージカル俳優の浦井健治さんがこの曲を歌われているのを観て使いたいと思いました」と自ら熱望して選曲。

「結構練習でも聞くし、陸でも結構な回数聞いているんですけど、全然飽きないというか。逆に聞けば聞くほど好きになっていくような曲で、自分の中ではすごく特別な曲なので、滑っていても楽しいですし。やっぱり自分のスケートにも合っていると思うので、それをもっと出せたらなという気持ちがあります」

「ショートは曲も脱力感であったり、そういう“ゆらぎ”じゃないですけど、全部キチッキチッとやるのではなくて、力を抜くところであったり、その中でバッといきなり力が入ったり、見せたいところだけ力を入れられたら、そこが際立つのかなと思いますし。これは(振付師・吉野)晃平先生にも歌子先生にも力を抜いて、もっと脱力感を出して滑るようにずっと言われています」

“脱力感”を大事にして、温かさと切なさ、甘さを情感たっぷりに演じる。

そして、フリーは白鳥の湖。王子と悪魔の2面性を表現する、こちらもこだわり抜いた作品だ。滑っている時、どんなシーンをイメージして滑っているかを聞くと、ものすごい熱量で語ってくれた。

「僕の中では最初は(王子と悪魔)どっちという感じではなくて、モヤがかかったというか、そういう感じなんですけど。曲がジャーンって変わる、2発目のサルコウ降りた後の変わるところからロットバルト(悪魔)が出てきて、そこから真ん中で止まるところはロットバルトで。

コレオの途中からバイオリンの軽快な音楽になるんですけど、そこからはだいぶ飛ぶんですけど、召喚された部分から舞踏会という部分、オデット、黒鳥が出てくる部分で、黒鳥を白鳥だと勘違いして浮かれるんですけど、王子は。

その純粋な浮かれようを表現して、最後はフリップ終わった後のループに跳びに行く前ぐらいから、騙されていたということに気づいて、ちょっと頭を抱えるんですけど、ステップ入る前に白鳥を取り返しにいこうというので、勇気を振り絞ってステップを踏むんですけど、やっぱり最後は助けられない、悲劇の終わり方なので、倒れてしまう。

最後の方は王子なんですけど、途中ロットバルトが出てきてという部分があるので、そこをもうちょっと自分の中で表現できたらなと思っています」

明確なシーンを思い浮かべて滑るプログラムは、物語が氷上から飛び出して伝わってくるような壮大さだ。このプログラムへの思いこそが、三宅の魅力のひとつなのだと、改めて感じた。

“何かを掴む”と挑んだ全日本で得た自信

こだわり抜いたプログラムとともに、全日本選手権を控えた昨年の12月。出場選手に実施したアンケートで、三宅はこんな言葉を記した。

「何かを掴んで終われるように頑張りたい」

今まで以上に、全日本に向けて強い意志を感じ、取材に行った際にその言葉の意図を聞いてみた。

2021年全日本選手権

「今年入ってから自分自身、成長できた部分というのがすごく感じるようになりましたし、周りから言っていただくこともすごく多くなって、少しずつ自信というか、気持ちの部分も変わってきたのかなと思っていたんですけど。

試合に行くとやっぱり弱い部分、練習で良くなってきた部分が出し切れなかったりという試合が今季は続いているので、それを出し切りたいという気持ちが強いですね」

「何か手応え、『ああ、もう出し切った』と思えて終われたら、自信になると思いますし、今後のスケート人生も大きく変わるのかなと思うので、本当に大きい会場さいたまスーパーアリーナで、フリーの演技が終わった後、顔を上げたときに、ちょっと景色が変わっていたら嬉しいなと思って、それを思い描きながら練習しています」

2021年全日本選手権

そんな思いを胸に挑んだ、2021年の全日本。

三宅はショートで最高の演技を見せる。冒頭の4回転サルコウを皮切りに、すべてのジャンプを高い出来栄え点で成功させると、圧巻だったのはステップ。

優しいメロディに乗せた、伸びやかで緩急のついた“脱力感”のあるステップは最高評価のレベル4を獲得。演技終わりには、力強いガッツポーズを見せ、会場は大きな拍手に包まれた。得点も初めて90点台に到達。

「いやー、もうなんか。なんとも言えない『スケートやっててよかった』というような。本当にうれしかったですね。今までで一番うれしかったです」

フリーでは初の最終グループ入り。北京五輪代表最終選考会の緊張感が漂う中、2本の4回転を決めてみせた。さらにショートに続き、フリーでもスピンとステップはレベル4を揃え、総合で6位。まさに有言実行の演技、自己最高成績で四大陸選手権の代表を掴んだ。

初の四大陸選手権で再び何かを掴めるか

2022年1月6日、三宅は北海道・帯広で行われていた日本学生氷上選手権に出場し、新年のスタートを切った。

その会場で改めて、全日本選手権を振り返ってもらった。

ーー全日本選手権での経験を経て、四大陸選手権に向かう心境の変化は?

そこまで大きい変化というのは無いですけど、けどやっぱり全日本選手権はすごい自信になって、今回も自分なりに、自分がどうやったらできるのかと、うまくできるのかというのをすごく考えてウォーミングアップから全部できたので、そういうところを考えられるようになったというか、自分がやらないといけないことがしっかりわかるようになったというのは、本当に全日本が終わってから見えるようになったと思っています。

ーー全日本選手権で得た自信というのは具体的にはどんなところ?

ショートもフリーも最終グループで滑らせてもらって、今までの僕だとすごい周りの雰囲気とかに飲まれてしまって、リズムがつかめずに終わってしまう試合が多かったんですけど、今回はそういうことがなく、ちゃんと自分のリズムを持って行動できましたし、本番の前も6分間練習とかも自分らしく滑りきることができたので、そこは本当に自信になって、内容もショート・フリー通して練習してきたことが少しでも出せたので、そこが本当に自信になりました。

四大陸選手権で練習をする三宅星南

ーー四大陸選手権は2週間後。どんな練習を積んで向かいたい?

あまりかっこつけずに練習したい。きれいにまとめて試合に行くんじゃなくて、調子が悪くても良くてもがむしゃらにじゃないですけど、とことんやりたい。

ーー四大陸選手権での目標は?

目標というのは自分らしく滑りきる。点数とか順位とかは考えずに、とりあえず自分らしく滑りきったら全日本みたいに結果は後からついてくるじゃないですけど、点数も評価してもらえると思うので、とりあえず自分のできることを精一杯出し切って、満足して終われたらなと思っています。

確かな自信と手ごたえを胸に迎える四大陸選手権。初めての舞台で今度はどんな輝きを放つのだろうか。成長著しい19歳から目が離せない。

四大陸フィギュアスケート選手権2022
フジテレビ(※関東地区ほか)にて3夜連続放送
■男女ショート・アイスダンス
1月21日(金)深夜1:40~3:40
■女子フリー
1月22日(土)深夜1::45~3:45
■男子フリー
1月23日(日)深夜1:55~3:30
https://www.fujitv.co.jp/sports/skate/four-continents/index.html