気高きゼレンスキー大統領への惜しみない賛辞

「キャプテン・ウクライナ、ウクライナの最初の本物の大統領、英雄、指導者」

ウクライナのゼレンスキー大統領に対する賛辞の数々だ。

「私は彼に投票しなかった。しかし、彼の勇気は私の考えを変え、何百万人もの国民を鼓舞した」

“I did not vote for Ukraine’s president. His courage has changed my mind and inspired millions; Opinion by Anna Myroniuk”という、ワシントン・ポスト紙ウェブ版に28日掲載された、ウクライナの女性ジャーナリストのオピニオン記事によれば、過去数週間、プーチン大統領が全面侵攻すればウクライナ政府は白旗を掲げるのではないか、ゼレンスキー大統領は戦うのだろうかという危惧を多くの国民が抱いていたという。

この女性ジャーナリストも同様で、既に首都キエフを脱出し、近郊の町に避難したという。

しかし、女史は言う。
「今や私も私の同僚達もキエフに戻り、首都のレジスタンス・抵抗運動を報じようとしている。」

「キエフは24時間で陥落するという見方があったが、ロシアによる全面攻勢から4日経っても戦いは続いている。」

「私のような懐疑派が間違っていたことをゼレンスキー大統領は自らの行動で示し、今や、彼に対する国民の支持率は91%、12月の調査の3倍に達している。」

今や国民の支持率は91%に達したウクライナのゼレンスキー大統領
今や国民の支持率は91%に達したウクライナのゼレンスキー大統領
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元々は喜劇俳優で、政治経験ゼロだったゼレンスキー大統領は、アメリカから国外脱出を打診された時、「私が必要としているは弾薬だ。脱出の為の足ではない」と拒否し、今や「国家指導者に求められる最大の責務である国民の保護の為に、彼は敢然と立ち向かっている。」のである。

その下に結集したウクライナ国民にも敬服せざるを得ない。

反戦デモが拡大するサンクトペテルブルク(2月28日)
反戦デモが拡大するサンクトペテルブルク(2月28日)

プーチン大統領の大きな誤算

ロシア軍の攻勢は止まないが、侵攻はロシア側が想定したようには進んでいないというのが、もっぱらの評価だ。ウクライナ国民の抵抗が功を奏し、今のところ、何とか持ちこたえているのである。

ロシア系住民が多いウクライナ第二の都市・ハリコフでも、市内に侵入したロシア軍はひとまず追い払われたという。同胞の国・ウクライナに命令を受け侵攻したロシア軍の士気はそれほど高くないのかも知れない。

どれも、ウクライナを武力で征服し、跪かせようというプーチン大統領の大きな誤算であろう。しかし、勿論、戦況は予断を許さない。戦力だけ見れば、ロシア軍はウクライナ軍を圧倒している。

ウクライナの武力侵攻でプーチン大統領に誤算か
ウクライナの武力侵攻でプーチン大統領に誤算か

世界はウクライナ大統領と国民に敬意

ウクライナ政府とロシア政府が開催することに合意したとされる協議が実現し、停戦などの実を結ぶことを願って止まないが、事態が、この後、たとえどのように展開することになっても、世界はゼレンスキー大統領とウクライナ国民が示している勇気に最大限の敬意を惜しまないであろう。

彼らが陥ったような苦境は勿論願い下げである。しかし、彼らの勇気と気高さを我々は心に刻み、決して忘れてはならないのである。

【執筆:フジテレビ 解説委員 二関吉郎】

二関吉郎
二関吉郎

生涯“一記者"がモットー
フジテレビ報道局解説委員。1989年ロンドン特派員としてベルリンの壁崩壊・湾岸戦争・ソビエト崩壊・中東和平合意等を取材。1999年ワシントン支局長として911テロ、アフガン戦争・イラク戦争に遭遇し取材にあたった。その後、フジテレビ報道局外信部長・社会部長などを歴任。東日本大震災では、取材部門を指揮した。 ヨーロッパ統括担当局長を経て現職。