小さい頃からの憧れの舞台で、爪痕を残してやろうと思った

初めてのヒーローインタビューで緊張しながら声を弾ませた。

サンロッカーズ渋谷は26日、京都ハンナリーズを延長戦の末に91対81で破った。ルーキーの井上宗一郎(22)が初出場で11得点と期待に応えた。地元・東京出身で現在は筑波大学に通う4年生。憧れのチームと12月末にプロ契約を結んだばかりの若き日本人ビッグマンだ。

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新型コロナが猛威を振るう中、主力のジョシュ・ハレルソン(32)が急きょ欠場となり、井上に出場チャンスが巡ってきた。午前中にシュート練習をしている時にコーチ陣に起用を告げられ「すごく気持ちが入った。絶対シュートを決めてやるぞと思った」という。

出番は第2クォーター頭に訪れた。渋谷の選手として初めてコートに立った井上は、リング下で201センチの身長を活かしたリバウンドでその力を発揮する。

さらにチームの先輩ベンドラメ礼生(28)のパスを受け取ると「得意」と自負する3ポイントシュートを沈め、いきなりアピールしてみせた。

後半第3クオーターでも再びベンドラメのパスから3ポイントシュートを射抜き、48対46と逆転に成功。チャンスをお膳立てしてくれた先輩から「よくやった」とタッチを求められた。

その後は互いにリードチェンジを繰り返す一進一退の展開が第4クオーター終盤まで続いた。 40分間では勝負が決まらず、試合は74対74で5分間の延長戦へ。

激戦に終止符を打ったのはベンドラメだった。最初の攻撃でシュートのこぼれ球を押し込むと、その後も、難しい体勢から3ポイントシュートを沈めるなど、 3ポイントシュート5本を含む28得点5アシストの活躍でチームをけん引。頼れる先輩が井上に背中で示して見せた。

さらに延長戦という勝負どころで起用された井上もこの試合3本目となる3ポイントシュートも沈め、主力選手欠場の穴を埋めてみせた。

約20分の出場で堂々のデビューを飾った井上は試合後の会見で「ジョシュ選手というビッグマンを欠く中で自分の仕事がしっかり出来るチャンスだと思って試合に臨んだ。自分の仕事はインサイドで体を張ること。3ポイントが得意なので来たパスをしっかり決めるというのが今日の課題だった。クリア出来てよかった」と振り返った。

指揮を執る伊佐勉ヘッドコーチ(52)も「ジョシュがいない中で井上がしっかり爪痕を残してくれた。結果的にゲームを引き寄せてくれたと思う」と評価した。

勝負の延長戦でルーキーを起用した理由については「前半に出した時に、シュートが当たっていて、ディフェンスでもオフェンスでもコーチがやって欲しい動きをしっかり表現していた。読みがすごくいい選手だと思った」という。

「『前が空いたら打って行け』とコートに送り出して、ルーキーらしからぬ爪痕を残してくれた。これからもしっかり3ポイントを打てるような選手になって欲しい」と大きな期待を寄せる。井上も「外からもシュートを打てる日本人ビッグマンは数えるほどしかいないので、3ポイントシュートを決め切れる選手になりたい」と理想像を掲げる。

チームはこれで19勝目で東地区4位に浮上。若き日本人ビッグマンがチームの大きな期待を背に、大きな成長曲線を描く。

渋谷91-81京都
(26日・墨田区総合体育館・832人)

加藤忍
加藤忍

早稲田大学卒業。フジテレビ入社。スポーツ局すぽると!ロッテ担当、ヤクルト野球中継などを経て現在は報道局兼スポーツ局。