今月23日に開幕する全日本フィギュアスケート選手権。

今大会の注目は北京オリンピックの代表選考レース。しかし、この大会にはシードや予選免除のスケーターたちの他に、地方ブロック、東・西日本選手権と予選を勝ち抜いた選手たちが出場する。

そこで今回、全日本選手権に7回出場した経験があり、昨シーズン限りで現役を引退した本田太一さんに東日本選手権を勝ち上がったスケーターたちの注目ポイントを挙げてもらった。

本田太一
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大人になった島田高志郎を見せて!

東日本選手権から7名の男子選手が出場する。

4年連続6回目の出場を決めた島田高志郎。

東日本選手権での演技について本田さんは「ショート、フリーで3本の4回転に挑戦しました。4回転サルコウが3回転になるミスはありましたが、フリーのトゥループが跳べたのは収穫だと思います。トリプルアクセルの確率も上がってきています。ショートはスピン・ステップも良く滑りこめていますが、フリーは後半部分がまだ納得していなさそうです」と振り返る。

島田高志郎

続けて、「全日本で最終グループに入るのが一つの目標だと思います。それなら4回転ノーミスは必須です。海外でかなり磨かれて、コーチのステファン(・ランビエール)とも長く、信頼関係も築けていると思います。4回転の練習を積み上げていると思うので、一番良い構成で全体の完成が楽しみです」と話す。

本田さんのもう一つの楽しみは島田のフリー「チャップリンメドレー」。2015年のジュニアデビューの際に使用していたが、当時とは全く違う編曲になっている。「小さい、かわいい高志郎から大人になった姿を見せてほしいです」と語った。

山隈太一朗

4年連続4回目の出場となった山隈太一朗には「喝」を入れた本田さん。

東日本選手権の演技を見て「もっとできるし、もったいない」と残念がる。

「東日本のフリーは良かったですが、良いものを持っているのに点数が伸びないのは残念。東京選手権はもっとひどかった。トリプルアクセルができるのは分かったので、ミスを減らして4回転に挑戦していくという気持ちで頑張ってほしい」

小学生の頃から知っている本田さんだからこそ、山隈には手厳しい。「彼は演技中に目線が下がらず、観客に向けてのアピールできて、『ジャンプ失敗しても演技が良い』ってコメントができる選手。小さい頃からそこが持ち味」と自分の良さを発揮してほしいと熱く語った。

長谷川一輝

「理系で文武両道」と話すのは、2年連続2回目の出場を決めた長谷川一輝。

「トリプルアクセルの練習を積んでいて、試合で入ればかなり点数アップを狙えます。ルッツまでのジャンプにミスは少ないので、アクセルに挑戦しても他のジャンプへの影響ありませんが、もう一段のぼるなら、アクセルで一皮むけてほしいです。話していても誠実な人柄で、それが演技に出ている選手です」

初出場選手は「フリーを目指して頑張れ」

今季がラストシーズンとなる石塚玲雄は、4年連続4回目の出場。

本田さんいわく、「東・西日本の選手の中でも一番仕上げてきた」選手であり、「状態も良い」という。

石塚玲雄

「本人のこだわりも強く、ショートは自分でプログラムを作って構成も一段上げてきました」

石塚は過去3回いずれもショート落ち、悔しい思いを何度もしている。「フリーを通過するための基礎点の上積みは本人の覚悟を感じます」と話す。

「しっかり練習するタイプ」という石塚に「努力が報われてほしい」と本田さん。自身も出場し、さいたまスーパーアリーナで行われた2013年の全日本選手権を思い出し、「忘れられない大会になると思います。会場が大きくて、観客が落ちてきそうです。緊張を楽しんでほしいですね」と期待を寄せた。

初出場となった3選手には「フリーを目指して頑張ること」が大切だと本田さんは言う。

「緊張で何もできないかもしれないけれど、自信をもって自分の演技ができるか。緊張の先にフリーがあります」

古庄優雅

4回転トゥループを跳べる古庄優雅には、「成長期で身長が伸びてジャンプが崩れてしまい、構成を東日本でかなり落として、結果5位で全日本初出場です。膝が柔らかいので軸が歪んでも降りてこられるタイプの選手」と評価。

鈴木楽人

鈴木楽人は「演技にバラつきがあったり、ジャンプが安定していなかったのですが、中庭健介コーチと構成をまとめたことで、両プログラムとも安定したのだろうと思います。中庭コーチのもと、1点でも高い点数を狙える演技をしてほしいです」とエールを送る。

堀義正

妹・本田真凜の同級生だという堀義正には「久しぶりにまとまった演技だった」と称賛。

「ジャンプの構成が変わりました。もともとトリプルアクセルはショート1本、フリー2本だったのが、今回は回避したことで、かなり良い内容の演技になりました。やっと全日本って感じもしますね」

女子選手のジャンプの質を称賛

女子選手は、6名が全日本選手権に出場する。

4回目の出場となる渡辺倫果。

本田さんは「辛いシーズンからの大復活!」と渡辺の急激な成長に驚く。

渡辺倫果

「得意なジャンプの回転不足も修正してきました。昨年はショートで落ちてしまいましたが、昨年と違ってルッツを失敗しても、ループなど3回転のコンビネーションでいけば50点台に乗せられると思います。トリプルアクセルがついてくれば、来シーズン以降、さらに上のグループで滑ることが出来る選手です」と期待を寄せる。

青木祐奈

2年連続4回目の出場を決めた青木祐奈は「構成を落とさずに、ルッツやオイラーのジャンプの安定感が戻ってきました」と評価。

「最初のルッツループとオイラーフリップの破壊力は抜群。女子でオイラーフリップを跳べるのはすごいです。全てのタイプのセカンド、サードが取れる稀有な選手」と絶賛するが、「フリーの後半でミスが多いので、最後まで切らさずに滑ってほしい」とした。

松原星

4年連続4回目の出場となった松原星。

本田さんは「東日本から全日本への出場枠が少なく、緊張する大会で、全員がフリーを滑り終わるまで分からない中、余裕をもって見られました」と話す。

「3サルコウ+3トゥループの安定感は注目で、東日本では全て着氷して3本とも10点を超えるジャンプでした。30点のジャンプのアドバンテージは大きいです。これがあるので、前半にミスをしても、プログラムが壊れない強さを感じました。ただ、懸念はショートのルッツです。ルッツを跳ぶことができればフリー進出は間違いないと思います」

妹・真凜へもエール

5年連続5回目の出場を決めた川畑和愛には、2019年の全日本選手権で3位になったことで注目度が上がりプレッシャーを感じているのではないかと本田さんは言う。

川畑和愛

「ルッツは日本で一番の質。表情、目線もかなり意識しています。ショートをノーミスすれば、最終グループには入ると思うので、(以前の結果を)意識することはあるかもしれないですけど、全日本でジャンプを揃えた演技を期待しています」

本田真凜

妹・本田真凜には「久しぶりに覇気を感じたフリーを見た」と東日本選手権の演技を振り返る。

2020年の全日本選手権は直前に棄権してしまったが、2年ぶり6回目の出場を決めた本田。

「昔の天真爛漫なオーラと違い、苦しさの上の黒いオーラを感じました。自分の手でつかんだ全日本です。東日本の苦しさの原因は昨年自分が棄権して(全日本の)枠を取れなかったことだと本人は分かっていると思いますし、全日本出場のための枠を取る苦しさは分かったと思います。本人も緊張したと言ってました」

苦しさの上につかんだ全日本選手権への切符に、本田さんは「調子は戻ってきていると思います。自分もその一人ですが待ってくださっているファンだけでなく、自分のために演技をしてほしいです。点数が出る前にガッツポーズできるような演技をしてほしい」とエールを送った。

佐藤伊吹

5年連続5回目出場の佐藤伊吹。

本田さんは東日本選手権の演技に対して、「やれるだけミスりました」と話す。

「ジャンプで回転不足が取られてしまうので、その分基礎点の高い3回転のコンビネーションジャンプを跳ぶしかありません」

妹・真凜と同じ明治大学であるため、「チーム明治」で頑張ってほしいと背中を押す。

「今シーズンは影を潜めていますが、高難易度ジャンプを淡々と跳べる選手です。本番で失敗しているだけで跳べないわけではない。明治大学から一人でも多くの選手が通過してほしいです」

アイスダンスは史上最高の注目度

全日本選手権には、北京オリンピックに向けて代表争いが激しくなるアイスダンスやペアも注目が集まる。

アイスダンスでは、小松原美里・尊組、村元哉中・髙橋大輔組ら、ペアでは三浦璃来・木原龍一組らが出場予定。

本田さんは「キャシー姉弟が引っ張ってきた国内のアイスダンス史上、一番の注目度。どちらがオリンピックに行くか。ペアの三浦・木原組は世界のトップと戦える選手がついに出てきましたという感じです。団体で優勝も狙えそうです」と期待する。

続けて、「カップル競技をそれぞれシングルでやっていた選手が担うとは思いませんでした。シングルからのカップル競技への転向はすごいです。かつてないほど注目されています」と話す。

最後に「男子は初出場、女子は復活選手、ラストシーズンを迎える選手もいます。どうしても目玉はオリンピック代表争いになってしまいますが、全選手の演技を見てほしいですね」と語った。

2020年の全日本選手権に出場した本田太一

本田太一 23歳
全日本フィギュアスケート選手権に7回出場。2020-2021年シーズンを最後に現役を引退し、一般企業へ就職。妹は真凜、望結、紗来