12月23日から始まる全日本フィギュア選手権(~26日、さいたまスーパーアリーナ)。この大会は2022年2月に行われる北京オリンピックの代表最終選考会でもあり、男女ともに3枠しかない椅子をかけて、激戦が繰り広げられる。

シーズン初演技のぶっつけ本番となる絶対王者・羽生結弦、今季ベストスコア日本人1位の五輪銀メダリスト宇野昌磨、3月の世界選手権で2位に入った鍵山優真らが、国内最終決戦に挑む。

(全日本選手権/2020年)
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そんな代表争いに食らいつくのが、スイスで武者修行を続ける島田高志郎だ。
「氷上のコンダクター(指揮者)」とも呼ばれた、長身を活かした表現力のある演技が特徴の島田が、「100%と言わず150%以上の力を出し切りたい」と全日本への想いを明かした。

ショートで自己ベストを出したものの…

ワルシャワ杯ではショートで満足できない結果に…

11月に行われたフィギュアスケート・ワルシャワ杯。

東日本選手権(10月)で優勝し勢いに乗る島田高志郎は、ショートプログラムで自己ベストとなる90.55点を叩き出す。しかしフリーでは、4回転サルコウでの転倒もあり、合計228.77点(自己ベスト)と5位で大会を終えた。

大会翌日、「ショックの疲れがすごく大きいですね。また自分を出せなかった、終わりがよくなかったという形で終わってしまったので、『悔しい』の一言ですし、『悲しい』でもあります」と明かしていた島田。

「こういう演技をしてしまうと、やっぱり練習でも自分も考えが足りてなかったんじゃないかとか、色々思うところはあったんですけど、コーチ達からまた連絡を頂いて。(ステファン・ランビエールコーチから)『これは、ひとつ前に進むためのプロセスだ』というふうに言葉を頂きました」

島田が師事するステファン・ランビエール氏は、トリノオリンピック銀メダリストで、2005年・06年の世界選手権王者。現在はスイスでコーチとして活躍している。

憧れの表現者の元で過ごす日々

2015年に「チャップリンメドレー」を演じたときの島田

幼稚園の年少で初めてスケートリンクに立ったという島田は、6歳から地元・愛媛県のスケート教室に通うようになった。「陸と氷じゃ全く感覚が違うし、未知の感覚で、滑っていくたびに少しずつうまくなっていくのが凄く楽しかった」とスケートにのめり込み、小学4年で通年リンクがある岡山県に移住した。

2013年には、全日本ノービスAクラスで優勝するなど頭角を表した島田は、ジュニアでも好成績を残していた。

「(憧れは)表現者の高橋大輔さん、町田樹さん、ステファン・ランビエールさん。本当にみんななんですけど、表現者に憧れています。スケート界に名が残るような、表現者として、ずっと心に残るような演技が出来る選手になりたいです」

2017年のインタビューでそう話していた島田は、今後自分がどういうスケーターになりたいかを見直した結果、“憧れ”と話すステファン・ランビエール・コーチの元に、15歳にして単身スイスに渡ることを決意した。

スイスでスケート漬けの日々を送る

「行ってみて、本当にスケート漬けの毎日なので。日本だったら陸上トレーニングが週に1〜2回あればいいくらいだったんですけど、向こうのトレーニングは毎日。

しかも、めちゃくちゃキツイトレーニングがあって、『自分がここなら強くなれる』っていうのと、『怪我をしない体作りを、ここでなら鍛えられるんじゃないかな』と思って、凄くそこは楽しみではあったし、モチベーションにもつながりました」

ステファン・ランビエールがコーチを務めるリンクは、標高1000m近いスイスのシャンペリーにある。周りは山ばかりで、遊ぶような場所は無い。ここで世界から集まる同世代の選手たちとルームシェアをしながら、「本当にいろんな国から出て、覚悟を持って暮らしてる選手がいっぱいいる」という環境の中で、休日は週1回のみという練習漬けの日々を過ごし、成長を続けた。

スイスに渡って2年目で、全日本ジュニアとジュニアグランプリファイナルで3位表彰台に登ると、2019-20シーズンにはシニアデビューした。

「全日本で150%以上の力を出し切りたい」

シニア3年目となる今季は、ショート・フリー共にステファン・コーチが振り付けを担当。特にフリーの「チャップリンメドレー」は、2015年にジュニアデビューのシーズンに使用し、6年ぶりに選曲したものだ。

全日本で成長した姿を見せる準備はできている。

「全日本でいい演技をするという目標は、スケート人生を続けていて毎年思っていることですし、今回は特別なオリンピックイヤーということで、自分の中でもオリンピックに行きたいという感情はもちろんあるんですが、その前に本当に自分がいい演技をしないとスタート地点にすら立てないと思うので」

前回の平昌オリンピックでは、スイスで共に練習したこともある宇野昌磨や同世代の坂本花織の活躍を、怪我で休んでいる中で見た。寂しさと悔しさを感じ、北京オリンピックへの想いはもちろんあるが、まず自身の100%の演技を見せたいと考えていると話す。

「今回(ワルシャワ杯)の収穫はショートプログラムで、もっと頑張らなきゃいけないのはフリーという、明確な結果が出ました。それを練習からどうやっていけばいいのかを、チームシャンペリーのコーチたちと相談して、自分が本当に100%の力を出せる状態に、全日本前の調整に、本当に魂を込めて頑張っていきたいなと思います」

スイスでの日々は島田の心を強くした

さらに島田はスイスでの拠点について、「チームシャンペリーに移ってから、人間としてスケートに対する思いっていうものは本当に人一倍強いというか、中途半端な気持ちでスケートをやってきた思いは一切無いんで」と力強く語る。

「スケートに対する情熱とか愛情というものを一番感じられる場所だと思っているので、それが本当に自分にとって一番心地がいいなという風に思う場所ですし。本当に今はむしろスイスが故郷だと思えてしまうくらいのめり込んでいるので。

このスケートをずっと続けてきた繋がりだったりとか、本当に人との出会いだったりとか、繋がりとか運には、この世で一番恵まれているのではないかと思えるぐらい自分が幸せだと実感できているので。あとは自分自身が試合の結果を残して幸せだと思えるような、何十年でも自分がやったぞって思える演技ができるまで、ほんとにスケートは続けていきたい」

冒頭の通り、全日本直前の試合となったワルシャワ杯では、ショートで全日本でも最終グループに入れるような結果を出したが、フリーでは満足できるものではなかった。

「本当にずっといい演技に飢えている状態なので、よりお腹をすかせて、それでまた次解放する瞬間が、喜びが100倍になるだろうなという風には実感しています。

全日本選手権では、いい演技をしたいって思いは本当に自分が一番だと。今大会(ワルシャワ杯)を終えて、全日本に向けての今の気持ちでも、本当に確信に近いくらい思っているものなので、それをしっかり本番で出せるように。とにかく自分を信じて、100と言わず150%以上の力を出し切りたいなと思います」

熱意を持ってこう語った島田。スイスで得た全てをぶつける全日本選手権の舞台は12月23日から始まる。

(※【特集】@リンクサイドでは、本日から全日本フィギュアスケート選手権開幕前日の12月22日まで、フィギュアスケート取材班が取材した注目選手を毎日取り上げていきます。)