今月23日に開幕する全日本フィギュアスケート選手権。

注目を集めるのは北京オリンピックの代表選考レースだが、この大会にはシードや予選免除のスケーターたちの他に、地方ブロック、東・西日本選手権と予選を勝ち抜いた選手たちが出場する。

全国各地から狭き門をくぐり抜け、全日本選手権に出場する選手の中で注目の選手は誰か?

全日本選手権に7回出場した経験があり、2021年に引退した本田太一さんに西日本選手権を勝ち上がった注目のスケーターを挙げてもらった。

本田太一さん
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森口澄士はスケート界唯一「本田太一ファン」

西日本選手権からは10名の男子選手が出場。

2年連続2回目の森口澄士。本田さんは森口のことを「スケート界で唯一、『本田太一のファン』と言ってくれる希少な人材」だと明かす。

同じ京都出身の2人。「小さい頃から『太一くん』って言ってくれていたのに、もうトップスケーター。このメンバーで西日本を優勝していてすごいし、うれしい」と笑う。

森口澄士

近畿選手権後には自信をなくしていたという森口だが、本田さんは「濱田(美栄)チームに移籍して、質の高い練習を積みました。逃げることはできたと思うんですけど、逃げずにやったのがこの結果。パワーが持ち味で、スケーティングもきれい。意外と器用で万能なタイプです」と評した。

須本光希

本田さんが「西日本選手権を見る限り、そんなに心配ない」と話すのは、3年連続の出場を決めた、須本光希。

「アクセルが戻らない部分や体のコンディションの不安はありますが、練習を積めば当たり前に200点が出せて、トップとやり合える選手。

パワーはあまりないのですが、滑りのうまさでカバーしています。須本・木科(雄登)・三宅(星南)の関西大学の3人は全日本が終わった後、インカレの団体で優勝必至。1位2位3位と取ってほしい」

木科雄登

怪我の不安が残る木科雄登は、6年連続6回目の出場。

近畿選手権では怪我の影響もあり、構成を落としたが、本田さんは「構成を落とした演技でもこの点数なら自信になる。ショートでもフリーでもジャンプはすべて着氷していて、それは構成を落としても難しいこと。全日本では一発勝負になりますが、トリプルアクセルを戻せば、良い点数が期待できます」と評価する。

木科の今シーズンのショートは「Bad byマイケル・ジャクソン」。本田さんは、「一番好き。踊り心がある選手で、こういったプログラムを滑ってほしいと思っていました」と語った。

杉山匠海

昨年、本田さんと一緒に練習する機会のあった杉山匠海は、2年連続2回目の出場。

「トリプルアクセルも形になってきていて、それ以外ミスしなくなりました。新しい技を習得する時、型が崩れてしまう選手が多いのですが、彼は違いました。彼も森口選手と同じく、手を挙げてジャンプができる選手。また、海外で練習を積んでいたので、スピンの基礎がしっかりしています」

昨年は惜しくもフリーを滑ることが出来なかったため、杉山に「悔しさを晴らしてほしい」と本田さんはエールを送る。

櫛田一樹

「やっと良いのが見られました。初の4回転成功です」と話すのは、5年連続5回目の出場となる櫛田一樹。

「ショートは昨年まで4回転を抜いた構成でミスがなかった。ミスがないほど完成度が高かったけれど、4回転入れて基礎点を上げた」と評価する一方で、フリーの演技を本田さんは「0点」と厳しく採点。

「怖さですかね。このプロトコル(採点結果)は悲惨です。怪我もあって、この構成で挑むのが初めてでした。それでも今シーズン、パンク(ジャンプが予定回数より回転数が減ってしまうこと)が改善されていました。点数には表れませんが、ステップアップです。4回転を2本ともクリーン判定で降りて、完成に近い形を見せてほしいです」

初出場の選手に「自分の初めても思い出す」

鈴木零偉

初出場の鈴木零偉の演技を本田さんは「僕の好きなスケート。未完成で、ジャンプ前のスピード強化という伸びしろもあります。そこが改善されれば、もっと加点がつくはずです。これからパワーもついてくると思うので楽しみです」と期待する。

加えて、本田さんは「初出場は楽しんで欲しいですが、緊張するでしょうね。自分の初めてを思い出します。中四国九州ブロックで応援したい選手が出てきました」と語った。

辻村岳也

親交がある辻村岳也も初出場。現役ラストシーズンで初めてつかんだ全日本選手権の切符に本田さんも嬉しそうにする。

「(西日本選手権は)ショートで良い演技をしていましたが、フリーがガチガチで(笑)。点数を意識するとああなるんですね。初めて全日本を意識したフリーで、プレッシャーのかかった試合は久しぶりだと思います。最初で最後の全日本で、ガチガチに緊張している彼を見てほしいです」

スピンが得意な辻村に本田さんは「全日本は0.何点の差でフリーに進出できるかできないかが決まります。“ジャンプは失敗してもスピンは裏切らない”と言いますし、3本のジャンプをしっかり降りればフリーいけるんじゃないかなと思います。

今回はオリンピック出場、強化選手の指定、初出場、フリー通過が目標など、それぞれの選手がそれぞれ違う緊張感で臨んでいます。優しく見守ってほしいですね」と話した。

和田龍京

本田さんが「正統派な滑りをする」と評価するのは、初出場となる和田龍京。

「邦和スポーツランド出身で中京大学のすごい選手に磨かれて、初出場できました。中京大学の選手で久しぶりに違う選手が出ましたね。中部ブロックは男子のエントリーも少ないので、すそ野を広げてあげたいです」

古家龍磨

「今年ちょっと喝!」と発破をかけるのは、古家龍磨。2年連続2回目の出場を決めた。

本田さんは「昨年のかなりハイレベルな西日本を勝ち上がった実力者なのですが、今シーズンは調子が上がっていない。学業が忙しいのか、移動中もレポートをしたり、頑張っていますが、ここまでミスをするとは」と肩を落とす。

「これだと全日本はダメなので、ショートの状態を上げて、フリー進出に向けて頑張ってほしいです。フリーはかわいいプログラムなので、ぜひフリーに進出してほしい」

早川晃太郎

初出場となる早川晃太郎も、学業と両立しながら競技に励んでいる。

「キャンパスが遠く、学業も忙しい中、初の全日本出場おめでとうございます!」と本田さん。

1つ上の早川とは全国有望新人発掘合宿(野辺山合宿)で一緒に過ごしたこともあり、「早川選手が(全日本に)出るのは僕的には熱い。僕が初めて野辺山に行ったときに早川選手がいて、そこには宇野(昌磨)選手もいましたね」と振り返る。

「彼はスケートも学業も真面目に取り組みます。年下にも敬語で、僕にも敬語です。野辺山合宿から12、13年が経ち、初めて出る全日本がさいたまスーパーアリーナ。最後まで滑りきってほしい」とエールを送った。

3年ぶりの出場決めた荒木菜那に「大復活でしょう」

12名の女子選手が西日本選手権から出場する。

荒木菜那

3年ぶり3回目の出場を決めた荒木菜那には、「大復活でしょう」と本田さん。

「女子はかなりハイレベル、かつ調子が落ちて出場できないと戻ることが難しい。100%ではないと思うので、構成はまだまだ上げられるはず。昔の、安心して見られる姿が戻ってきました」

白岩優奈

2年連続6回目の出場となるのは、白岩優奈。

「回転のジャンプのピッチやどこからでもコンビネーションができるのは、荒木選手と似ています。コンビネーションジャンプがまだ不安ではありますが、少なくとも右肩上がりの状態。

昔はかわいらしいダンサーのようでしたが、今はダークな演技も。ジャンプに目が行きがちですが、シニアになってジャンプの構成を落としてプログラムの完成度を高めました。ステップは改めてうまいと思いました」

山下真瑚

「ショートが良かった」と本田さんが評価する山下真瑚は、5年連続5回目の出場。

「ショートはノーミスで心配ないと思ったら、練習を積みきれていないフリーで不安が見えました。山下選手は回転より、バネで跳ぶ、高さのあるジャンプです。その分、体への負担も大きいのかもしれないです。ルッツ・トゥループとかなり質の良いジャンプを跳ぶので、全日本までに合わせられるかが勝負です」

籠谷歩未

籠谷歩未は3年ぶり2回目の出場。

「本人はそれほど悪い演技をしたわけではないかもしれないですけど、評価がついてきませんでした」と本田さんは西日本の結果を振り返る。

そして、「フリーの場合は3-3回転のコンビネーションジャンプを外した構成にして、3回転を含んだコンビネーションジャンプの回転不足はゼロでした。練習からノーミスと聞くので、やろうと思えば後半に入れられるのかもしれないですが、失敗のリスクを考えて前半に入れるという選択をしたのかと。3年前の再現ではないですが、フリーに進出してほしいです」

三宅咲綺

2年ぶり3回目の出場を決めた三宅咲綺。

「昨年、強化選手だった三宅選手が西日本で落ちるという悔しいシーズンでした。ガッツがあり、スピード、ジャンプの高さ、幅は男子顔負けです。鈴木明子さんの振付で、三宅選手の新しい姿が見られるのではないかと思います」

浦松千聖

「負けん気が強くて、よく食べてよく笑う」と素顔を明かす浦松千聖は、3年連続3回目の出場。

「ルッツ・フリップがまだまだ本調子ではなさそうです。東・西選手権は強化選手が落ちたり、他の選手が上がったりと波乱が多い世界なので、見ていて怖かったですが、良い演技でした。

ただ、ショートが気がかりです。ルッツとフリップを修正すれば60点は出る選手。スケーティングの質も高く、1歩抜けています。ジャンプが上手くいけば、上位に食い込んでいける選手です」

ラストシーズンを迎える選手にエール

2年ぶり10回目の出場となった大庭雅についても、「すごい!」と本田さん。ジュニアの頃から知っているといい、今大会に10回出ている大庭に拍手を送る。

大庭雅

「ショートの構成を本人の中では一番低くしましたが、低くしたためにミスは許されないプレッシャーもあったと思います。フリーではフリップにミスがありましたが、彼女の武器であるループとサルコウは健在でした。昨年届かなかった全日本の復活を見たい」

野口望々花

本田さんが「一番知っている選手」と話すのは野口望々花。初出場となった彼女を「やったね!」と本田さんも喜ぶ。

「普段は男気溢れるスケートですが、悔しくて泣いている試合を何度も見ました。毎年、全日本に出られるような実力のある選手なのですが8連敗していて、最後のシーズンに出られたので今までの努力が報われると思います。3回転のコンビネーションジャンプが久しぶりに入って、フリーも構成を変えていましたが、調整を重ねています。特にルッツを見てほしいですね」

新田谷凜

今シーズン限りでの現役引退を表明している新田谷凜は、8年連続9回目の出場。

「靴の調整が上手くいかなくて、絶不調でした。ただ本人も分かっていたと思います。全日本への通過だけを見据えてきたからなのか、全日本へつながりました。昨シーズンは良い状態で突っ走ってきたので疲れも出てきていたのかもしれないです。本人は『一番良い状態で引退したい』と言っていましたが、それにとらわれ過ぎないでほしいです」

竹野比奈

6年連続6回目の出場を決めた竹野比奈。彼女も今シーズン限りでの現役引退を表明している。

しかし、「西日本で珍しくミスが目立ちました」と振り返りながらも「スケーティング・ステップ・スピンは質と完成度が高い選手」と評価する。

「年上の選手が続けているのは尊敬します。まだまだ続けられると思ってしまいますが、ラストシーズンに良い演技ができたらと願っています」

竹野仁奈

妹の竹野仁奈は2年ぶり2回目の出場。

ショートとフリーでステップ・スピンの評価がレベル4だった竹野に「なかなかできないこと」とレベルの高さを絶賛。

「お姉さんとは違うキャラですが滑りが似てきました。フリーでミスがあった中、100点近く出るのは実力です。姉妹揃ってフリーまで出てほしいですね」

森下実咲

4年ぶりの出場を決めた森下実咲。

本田さんは「フィギュアスケートを始めたのが遅いのですが、ポテンシャルのある選手です。女子もルッツ・フリップ・ループで選択肢を持って構成を変えていく人が多い中、彼女はサルコウとトゥループででここまでやってきました。スピードもジャンプも質も良いです。彼女にはよく笑わせてもらっています」と話した。

初出場の選手や数年ぶりの“復活”を果たした選手たち。連続出場する選手たちにとっても全日本選手権は夢の舞台。さまざまな思いを抱えて挑む選手たちがリンクの上でどんな演技を披露するのか、見逃さないでほしい。

本田太一 23歳
全日本フィギュアスケート選手権に7回出場。2020-2021年シーズンを最後に現役を引退し、一般企業へ就職。妹は真凜、望結、紗来