上皇后さまが87歳の誕生日を迎えられたのに合わせて、宮内庁が近況についてコメントを発表した。以下、全文。

この一年、恒例の御用邸等でのご静養を含め外にお出ましになること、また、外部の人とお会いになることを極力お控えになり、仮御所で陛下と静かにお過ごしになりました。

来るお誕生日の行事は、すべてお控えになります。

(宮内庁提供 10月4日撮影)
(宮内庁提供 10月4日撮影)
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今年も7月の集中豪雨により静岡県熱海市で土石流災害が発生し、8月の大雨災害では九州を始め各地に被害が発生しました。上皇后さまは、陛下と共に、国内各地の被災地のことには今も深くお心を寄せ、 被害の様子を伝える報道をいつも注視しておられ、ご散策の折などによくお供の侍従や侍医に不確かなところをお尋ねになっていらっしゃいます。

また、全町民が避難している福島県双葉町で原発事故後初めてお米の試験栽培が行われたこと、 宮城スタジアムのピッチに東日本大震災で被災した地元宮城県山元町の芝生が使用されることを伝える報道など、東日本大震災の被災地で少しずつ復興が進んでいることに安堵されているご様子です。

昨年5月以降の午後にお熱が上がるご症状は今も変わりはありません。このところご体重は安定していますが、心不全の診断指標であるBNP値は、この夏、一昨年の乳がん手術後と同程度まで再び上昇しました。ご散策の途中で立ち止まり、呼吸を整えられることがしばしばおありです。乳がんご手術後のホルモン療法によると思われる手指のご不自由は、完治はしておりませんが、最近は少しずつピアノをお弾きになれるようになりました。

(宮内庁提供 10月4日撮影)
(宮内庁提供 10月4日撮影)

今年は57年ぶりに東京でオリンピック、パラリンピックが開催されましたが、陛下との朝タのご散策や側近とのお話の中でも度々話題となりました。

前回の東京オリンピックで、金メダル第1号となった三宅義信選手の重量挙げ、神永昭夫選手とオランダのアントン・ヘーシンク選手の柔道無差別級の試合をオランダ国のベアトリックス王女殿下とご一緒にご覧になったことなどを懐かしそうに思い起こされていました。また、江ノ島でご覧になったヨット競技にノルウェー国の現ハラルド5世国王陛下が当時皇太子として参加され、36年後の2001年3月、上皇陛下と共に、今度は国賓として再来日した同国王陛下とソニア王妃陛下を思い出の地である江ノ島ヨットハーバーにご案内になった時のことなども、陛下と楽しそうにお話になっていらっしゃいました。

昭和39年に東京パラリンピック大会が開催された当時、まだ障害のある人に対する社会の理解と関心は低く、この大会はごく一部の人々の支えによって開催されましたが、ご自身も種々学ばれつつ、陛下とご一緒にその実現と運営に精一杯お力添えになった当時のこと、そして、パラリンピックを契機として翌年から全国身体障害者スポーツ大会が開催されるようになり、障害者スポーツ発展の礎が築かれたことを、力を尽くした当時の人々への感謝と共に、懐かしそうに振り返っていらっしゃいます。 障害者スポーツがその後に目覚ましい発展を遂げ、今日のパラリンピックがオリンピックと同等に位置づけられていることは、両陛下にとりお嬉しいことであり、お幸せなことであると、このオリンピックの年に深く感じさせられました。

(宮内庁提供 10月4日撮影)
(宮内庁提供 10月4日撮影)

仮御所では、これまで通り、陛下とご一緒に規則正しく日々をお過ごしです。
陛下は、上皇后さまのご健康をお気遣いになりながら、共にお話になることを楽しみにされています。上皇后さまは、陛下のお気持ちをありがたく思われながら、いつもお近くで心をこめてお世話なさっています。

朝夕のご散策では、暑い夏の最中に、お庭を抜ける「風の通り道」に気づかれ、そこを通るときに陛下と暫くお立ち止まりになって風を楽しまれたご様子をお供した者から聞きました。

ご朝食後の陛下とのご本の音読は今も毎日続けられ、山本健吉の「ことばの歳時記」に続いて、寺田寅彦の「柿の種」をご一緒にお読みになっています。

この一年も何人かの同級生、同窓生、お知り合いであった人々とのお別れがあり、今月も草津国際音楽アカデミーがご縁で知り合われた落語家の柳家小三治さんの死を悼まれました。両陛下は、小三治さんが人間国宝になった年に皇居で会われ、その後も草津で何度もお会いになっています。 御所に高座を設けて落語をお聴かせした折、その「まくら」が、小三治さんが草津で伺った上皇后さまのピアノのお話しで終始したことは、一緒に聴いていた音楽仲間の人々の間で楽しい話題となっていました。

(1993年12月撮影)
(1993年12月撮影)

今月26日に皇室を離れられる秋篠宮眞子さまのことは、両陛下とも常に大切に愛おしんでおられましたので、お別れはお寂しいことと拝察いたします。

社会部
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