依然として収束が見通せない新型コロナ。感染拡大による移動の自粛によって、旅行に行きづらい日々が続いている。
(Q.最近旅行に行けていますか)
静岡駅の利用客:
行っていません
国土交通省によると、コロナ前となる2019年7月から9月の旅行客は1億6000万人以上いたが、新型コロナの感染拡大に伴い、低い水準が続いている。
この記事の画像(11枚)旅行控えで打撃を受けた「駅弁」
旅行客の減少によって、駅弁業界も大きな影響を受けた。
JR静岡駅構内で駅弁を販売している「東海軒」。明治時代から130年以上続く老舗の駅弁店で、幕ノ内弁当やサンドイッチなど、創業当時の味を受け継ぐ駅弁も販売している。
しかし、売り上げの減少は深刻だ。
東海軒・加藤貴久専務:
イベントもそうですけど、静岡駅の中で人流自体が極端に減っているということもあり、東海軒も打撃は受けております。多い時では通常の6割くらい減ってしまい、いまは徐々に回復はしてきているんですけど、まだ少し時間がかかる
2019年度に販売した駅弁は45万個以上だったが、2020年度はわずか3分の1以下となる約15万個に落ち込んだ。
全国に「鯛めし」を届けタイ!
こうした状況を打開しようと、東海軒は新たな取り組みを始めた。
上村駿太記者:
東海軒の名物といえば鯛めしです。この鯛めしを全国に届けたいということで、新たな商品が生まれました
鯛めしは明治時代から120年以上作り続けている、東海軒の名物の駅弁だ。しょうゆで炊いたさくら飯と、その上にのった甘い鯛そぼろが特徴で、全国にファンがいる。
おいしくできるか?冷凍鯛めし
この鯛めしを全国に届けようと開発されたのが「冷凍鯛めし」だった。
東海軒で商品開発を担当する細澤百合子さん。
きっかけは駅弁を包む掛け紙の復刻をしようと、京都の印刷会社からクラウドファンディングを持ちかけられたことだった。
東海軒・細澤百合子さん:
2020年の7月に、京都の老舗の印刷会社「藤澤萬華堂」さんのほうから掛け紙、駅弁にかけている紙を復刻しませんかという問い合わせがありまして
藤澤萬華堂・藤澤哲也専務:
古い掛け紙をお持ちだとのことだったので、そういうものを一回復刻したら面白いのではないですかと。ちょうど東海軒も新型コロナの影響で何か新しいことをしたいということで
掛け紙の復刻にあわせて、返礼品として名物の鯛めしを全国に届けようと開発が始まった。
おいしさを保ったまま、全国に届けるにはどうすればいいのか。
細澤さんは鯛めしを作ることができるキットや、レトルト加工も試したが、どれも納得する味にはならず、何度も失敗を繰り返して、最後にいきついたのが冷凍鯛めしだった。
東海軒・細澤百合子さん:
最終的には冷凍でということで、何回も試して容器や加熱時間などを何回も試してでき上がりました
こうして完成した冷凍鯛めし。工夫は様々なところに施されている。
東海軒・細澤百合子さん:
ご家庭でレンジアップしていただくにあたって、隅々までちゃんと過熱ができる分量ということでだいたいお茶碗1杯分、150gにしました
さらに鯛めしを入れる容器にも工夫が…
東海軒・細澤百合子さん:
ふたして密封されてしまうと、レンジアップすると容器の変形も見られたり破損してしまったりということがあるので、電子レンジに対応ができるものを探して、こちらの容器にしました
返礼品には明治の「掛け紙」
冷凍鯛めしと共に、返礼の品として送られるのが駅弁を包む掛け紙だ。
掛け紙は駅弁には欠かせないもので、その当時の時代を表すものでもある。
東海軒・細澤百合子さん:
昔は通信手段というのが今の様にはないので、掛け紙にいろいろな情報を載せてお弁当を販売していた
数ある掛け紙の中から今回復刻したのは、明治時代の踊る鯛が描かれた掛け紙。
手彫りの木版で1枚1枚手で刷られている。
この掛け紙の木版ずりを担当したのが、森光美智子さんだ。
森光美智子さん:
美味しそうで、絵もかわいいと思っています。すごいおいしそうで食べたいです
コロナ禍で旅行に行けない今だからこそ、地域の味や日本の文化を楽しんでもらいたいという気持ちが込められている。
東海軒・細澤百合子さん:
地方に嫁いで静岡に買いに行けない、帰省ができないので静岡駅には行けないけど、冷凍で食べられるんですねというお話も頂いております。そういった日本全国の鯛めしファンにお届けしたいと思います
名物駅弁を全国のファンへ。新型コロナによって多くの企業が打撃を受ける中、老舗駅弁屋は逆境をチャンスに変えようと、新たな活路を見いだそうとしている。
(テレビ静岡)