日銀は15日から2日間開く金融政策決定会合で、利上げを決める方向で議論する。
政策金利を現状の0.75%程度から1.0%程度へと引き上げる見通しだ。

物価の上振れリスクを重視

節目となる可能性が高い会合だが、入院中の植田総裁は不在だ。

3日に講演する日銀・植田総裁
3日に講演する日銀・植田総裁
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植田氏は議案への投票権は持たず、書面で意見を表明する。

氷見野副総裁が議長を務め、総裁を含め9人いる政策委員のうち8人の多数決となる。利上げを決めれば2025年12月以来、半年ぶりとなる。

氷見野副総裁 15日朝
氷見野副総裁 15日朝

中東情勢の悪化により原油価格が高止まりするなか、幅広い品目で物価上昇が続き、基調的な物価上昇率を押し上げるとの見方が強まるなか、日銀内では、物価の上振れリスクを重視し利上げが必要だとの意見が広がっているとみられる。

企業の価格転嫁の速度が増すなか、タイミングを逸すれば、大幅な利上げを後で迫られかねないとの懸念が日銀の背中を押している格好だ。

今回の会合では、2027年4月以降の国債買い入れ計画をどうするかも検討される。

2013年からの異次元緩和で大量の国債を買い入れて来た日銀は、投資家の売買を通じて価格が決まる市場機能が損なわれてしまった側面を踏まえ、2024年8月から買い入れの減額を進めてきた。

市場での自由な金利形成が進んできていることなどから、減額ペースを緩めるかについて議論が行われる見通しだが、金利動向を見極めながら判断されることになる。

31年ぶり金利の家計への影響

政策金利が1%に引き上げられれば、1995年以来31年ぶりの高い水準になる。家計にはどのような影響があるのだろうか。

影響が大きいのが住宅ローンだ。

特に、日銀の政策金利の動向に左右される変動金利は上昇する可能性が高まるが、一方で、預金金利が引き上げられて恩恵がもたらされる面もある。

みずほ総合研究所は、0.75%から1%への利上げの影響をめぐり、預金や住宅ローン金利について、一定の前提を置いて試算を行った。その結果、家計全体では、プラス・マイナス効果の差し引きで1世帯あたり年間2万円のプラスになった。

ただ、これはあくまで全体で平均した数字だ。住宅ローンなどの負債を保有する世帯に限定すると、利上げの影響は年間1万2000円のマイナスになる。

特に、金融資産が少なく、住宅ローンの残債が相対的に多いとされる若年層では負担増となる傾向が強く、世帯主年齢が30歳台の世帯では年間2万1000円のマイナス、29歳以下の世帯では1万4000円のマイナスとなった。

200万円近く総返済が増えるケースも

住宅ローン金利上昇の影響を先の試算での具体的事例で見てみる。

4000万円を返済期間35年の変動型で借り入れていた場合、当初0.95%だった金利が、返済2年目に1.20%へ上昇するシミュレーションでは、いわゆる「5年ルール」が適用されている場合、5年目まで11万2000円だった毎月の返済額が、6年目からは11万7000円へと増える計算になった。

「5年ルール」5年間は途中で金利が上がっても毎月の返済額は変わらない       
「5年ルール」5年間は途中で金利が上がっても毎月の返済額は変わらない       

この「5年ルール」とは、家計負担が急激に増えるのを防ぐため、途中で金利が上がったとしても、返済額の見直しは5年ごとにするというもので、適用されているケースが多い。
5年間は途中で金利が変わっても毎月の返済額は変わらないため、家計負担の当面のアップは避けられるが、毎月の返済額に占める利息の割合が高まっていき、元金は返済ペースが落ちて減りにくくなることに注意が必要だ。

最終的に35年間の総返済額は、金利が上がらない場合に比べ191万円膨らむ。
5年ルールで当面の返済額が変わらないからといって安心することなく、返済内容がどう変わるかを改めてチェックしておきたい。

今後の利上げめぐる内田発言が焦点

決定会合後の16日の会見は植田総裁に代わって、内田副総裁が行うことになる。

内田副総裁 15日朝
内田副総裁 15日朝

1986年に入行した内田氏は、黒田前総裁時代に日銀が進めた異次元緩和策にも携わってきた。
その内田氏も白血病の治療で2025年11月から入院し、決定会合にはリモートでの参加を続けていた。5月末に退院したばかりで、退院後初の公の場での会見となる。

焦点は今後の利上げペースをめぐってどのような言及があるかだ。

会見する日銀・植田総裁 2025年12月
会見する日銀・植田総裁 2025年12月

0.5%から0.75%への利上げを決めた2025年12月の会合では、会見での植田総裁の発言が追加利上げに慎重な姿勢だと受け取られ、利上げ決定にもかかわらず、円安が進む展開となった。

先週の円相場は一時1ドル=160円50銭台後半をつけ、政府・日銀による為替介入の直前に4月30日につけた160円70銭近辺に迫る場面があった。

週明けにはアメリカとイランの戦闘終結に向けた合意発表を受けて、有事のドル買いの巻き戻しも見られたが、原油高を通じた貿易赤字拡大による円売り圧力は根強い。今週は、日銀に続いてアメリカのFRB=連邦準備制度理事会もウォーシュ新議長のもとで金融政策を決める会合を開く。

FRB新議長のウォーシュ氏 傍にはトランプ大統領の姿も
FRB新議長のウォーシュ氏 傍にはトランプ大統領の姿も

アメリカの政策金利は据え置かれる見通しだが、雇用や物価の強さを示す指標が相次いだことで年内利上げの観測も広がっていて、日米の金利差拡大が意識され円相場を押し下げる材料となっている。

内田副総裁の会見内容が利上げに慎重な「ハト派」だと受け止められれば、円がさらに下落する可能性がある一方、市場では再度の為替介入への警戒感もくすぶる。為替相場の緊張感が高まる場面も想定されるなか、内田氏の発信に市場関係者の視線が集中することになる。

(フジテレビ解説副委員長 智田裕一) 

智田裕一
智田裕一

金融、予算、税制…さまざまな経済事象や政策について、できるだけコンパクトに
わかりやすく伝えられればと思っています。
暮らしにかかわる「お金」の動きや制度について、FPの視点を生かした「読み解き」が
できればと考えています。
フジテレビ解説副委員長。1966年千葉県生まれ。東京大学文学部卒業。同大学新聞研究所教育部修了
フジテレビ入社後、アナウンス室、NY支局勤務、経済部にて兜・日銀キャップ、財務省・内閣府担当、財務金融キャップ、経済部長を経て、現職。
CFP(サーティファイド ファイナンシャル プランナー)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、農水省政策評価第三者委員会委員