ウクライナでの戦いは、現代の戦争のやり方、常識を変えてしまった。
そのひとつは、ドローン。

ドローン戦争が生んだ「見えない無人機」開発競争

特に、空飛ぶ無人機(UAV)をウクライナ軍、ロシア軍の双方が強力な兵器に変えてしまったことだろう。軍用、民用を問わず、ドローンが現時点でどんな方向に発展していくのか。見えない、感づかれないドローンというのも、その方向性のひとつだろう。

ウクライナ軍の迎撃ドローンから撮影された迎撃寸前のロシア軍「シャヘド・ドローン」(ウクライナ防衛情報局/ウクライナ国防省公式Xより) 
ウクライナ軍の迎撃ドローンから撮影された迎撃寸前のロシア軍「シャヘド・ドローン」(ウクライナ防衛情報局/ウクライナ国防省公式Xより) 
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 敵が強力な爆弾を内蔵した自爆ドローン(UAV)を投入すれば、着弾する前に、対処しなければ、味方の被害は拡大する。

オクトパス迎撃ドローン最新バージョンは「AIベース」制御システム(ウクライナ国防省公式Xより 2026年1月20日付) 
オクトパス迎撃ドローン最新バージョンは「AIベース」制御システム(ウクライナ国防省公式Xより 2026年1月20日付) 

 このため、ウクライナ軍、ロシア軍ともに、敵の強力なドローン(UAV)を撃墜する手段の発見・開発に追われている。そのひとつが、迎撃ドローン(UAV)の開発・生産・配備。迎撃ミサイルより安価とされるウクライナの迎撃ドローン(UAV)は、各国の注目を集めている。

後部座敷からロシアの自爆ドローンを撃墜(ウクライナ第11陸軍航空旅団 公式Facebookより)
後部座敷からロシアの自爆ドローンを撃墜(ウクライナ第11陸軍航空旅団 公式Facebookより)

 さらに、プロペラ機から散弾銃で敵のドローン(UAV)を狙うという古典的手段も、ウクライナ軍、ロシア軍ともに採用している戦術だ。
https://www.fnn.jp/articles/-/1063655https://www.fnn.jp/articles/-/1060332

あの手この手で、無人機に対する防御手段が、開発されれば、攻める側は、その防御手段を突破する手段を見つけ、開発しようとするだろう。

例えば、視覚的に見つからないように、カモフラージュや透明な素材、光を曲げる光学システムを用いるなどして、見えないドローンの開発が行われているとされる。

扇風機と同じ…背景に溶け込む「ファントム・ツイスト」 

それがどんなものになるか、断言はできないが、これまでと異なる手段で「従来のクアッドコプターに比べて視覚的に約10分の1」(ノースウエスタン大学プレスリリース)になるというドローンの研究が米国の名門私立大学、ノースウエスタン大学で2026年7月16日に発表された。

背景に溶け込むドローン試験機(撮影:マイケル・ルーベンスタイン/ノースウェスタン大学)
背景に溶け込むドローン試験機(撮影:マイケル・ルーベンスタイン/ノースウェスタン大学)

ノースウエスタン大学が発表したのは「ファントム・ツイスト」という研究・試験用の小型の無人機=ドローンで、3枚羽の回転翼から、細い棒状のモノが伸び、ピラミッド状の形状になっている。

では、ファントム・ツイストは、どのようにして姿をくらますのか。

発進直前のドローン試験機(撮影:マイケル・ルーベンスタイン/ノースウェスタン大学)
発進直前のドローン試験機(撮影:マイケル・ルーベンスタイン/ノースウェスタン大学)

高速回転するファンやプロペラが消えるように見えるのと同じ効果を起こし、人間の目でははっきりとは見えなくなる「モーションブラー」という現象(ノースウエスタン大学プレスリリース)を利用したという。

飛行を開始した直後の「ファントム・ツイスト」(撮影:マイケル・ルーベンスタイン/ノースウェスタン大学)
飛行を開始した直後の「ファントム・ツイスト」(撮影:マイケル・ルーベンスタイン/ノースウェスタン大学)

つまり、スイッチが入っていない扇風機のハネは、人間の目にしっかり見えるが、スイッチを入れて回転すると見えにくくなるという効果を利用するということなのだろう。

周囲に溶け込みながら飛行する「ファントム・ツイスト」(撮影:マイケル・ルーベンスタイン/ノースウェスタン大学)
周囲に溶け込みながら飛行する「ファントム・ツイスト」(撮影:マイケル・ルーベンスタイン/ノースウェスタン大学)

「ファントム・ツイスト」と呼ばれるこのドローンは、1秒間に最大25回も回転し、背景に自然に溶け込む幽霊のように変貌する(同上)という。

揚力を生む回転翼だけでなく、ファントム・ツイストのその他の部分も、恐らくは、回転翼とは、逆方向に回転するということなのだろう。

そして「AIでドローンを設計・最適化し、各部品の最適な配置を決定して見えにくくした」(ノースウエスタン大学プレスリリース)という。

 白い背景の前を飛行する「ファントム・ツイスト」(撮影:マイケル・ルーベンスタイン/ノースウェスタン大学)
 白い背景の前を飛行する「ファントム・ツイスト」(撮影:マイケル・ルーベンスタイン/ノースウェスタン大学)

ノースウエスタン大学は、ファントム・ツイストの飛行状態を伝える映像をYouTube上で公開していた。

飛行中のファントム・ツイストを真横から撮影(撮影:マイケル・ルーベンスタイン/ノースウェスタン大学)
飛行中のファントム・ツイストを真横から撮影(撮影:マイケル・ルーベンスタイン/ノースウェスタン大学)

では、この見えにくい無人機=ファントム・ツイストは、将来、どんな用途があるのだろうか。

「視覚的な妨害を最小限に抑えながら野生生物を監視して、環境を調査し、インフラを点検するドローンにつながる」というのが、ノースウエスタン大学が打ち出している現時点での見解である。将来の偵察・監視任務に使える可能性を示唆しているのだろうか。

(執筆:フジテレビ特別解説委員 能勢伸之)

能勢伸之
能勢伸之

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フジテレビ報道局特別解説委員。1958年京都市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。報道局勤務、防衛問題担当が長く、1999年のコソボ紛争をベオグラードとNATO本部の双方で取材。著書は「ミサイル防衛」(新潮新書)、「東アジアの軍事情勢はこれからどうなるのか」(PHP新書)、「検証 日本着弾」(共著)など。