低体温症になるのを防ぐ手製防寒具

先ほどご紹介した移動中の備えを使って命を守りましょう。

高台や避難タワーにたどり着いたということは、建物の倒壊や津波から逃げ延びた大切な命です。何としても守り切ってください。

服が濡れてしまった場合、着たままでは手で絞ることは困難です。特に、デニムやチノパンなどの厚手のズボンは絞ることはできないので、吸水スポンジで挟むようにして水分を移動させます。スポンジならば簡単に絞れます。

水が滴らない程度になったら、濡れた服の上からポリ袋を被ります。

90リットルのポリ袋の切り込み位置(特集班撮影)
90リットルのポリ袋の切り込み位置(特集班撮影)

まず、90リットルのポリ袋の口が閉じている部分を上にして、折りたたみはさみで上辺の中央部分に頭を入れるための切り込みを、両端に腕を入れるための切り込みを入れてください。

切り込みを入れる際は、体とのすき間を少なくするため小さめに入れましょう。かぶる際は呼吸ができなくならないように注意が必要です。

また、風が入らないようにテープを使ってタイトにフィットさせてください。

テープを巻き付けて体にフィットさせる(特集班撮影)
テープを巻き付けて体にフィットさせる(特集班撮影)

下半身もポリ袋を巻きつけて、とにかく濡れた服に風が当たらないようにするのがポイントです。

日頃持ち歩くバッグのスペースに余裕があれば、上下別の簡易なレインウェアが適しています。

服が濡れているということは、当然、靴も濡れています。足元からも体温を奪われるので、靴の上からレジ袋を被せて、足首を輪ゴムで巻いて下さい。

低体温症を防ぐ手製防寒具(特集班撮影)
低体温症を防ぐ手製防寒具(特集班撮影)

この方法は、ダイビングに使うウエットスーツに着想を得たものです。濡れた服の上からポリ袋を被って外気と風を遮断して、水分も含めて温めてしまうという考え方です。蒸れを考慮するとかなり不快な方法ですが、命を守るために必要です。

上からアルミブランケットを巻けば断熱性が高まる(特集班撮影)
上からアルミブランケットを巻けば断熱性が高まる(特集班撮影)

また、この上からアルミブランケットを巻けば、より断熱性を高めることができます。

避難所の現状

避難所として使われることが多い場所が学校の体育館です。

停電してしまうと冷暖房が使えなくなってしまうのですが、令和7年時点での避難所に指定されている公立小中学校の体育館のエアコン設置率はわずか23.7%です。(文部科学省発表資料)

夏の豪雨災害に備えて、低体温症だけでなく、熱中症への対策も個人でしておく必要があります。

人間としての尊厳

この困難な状況を抜け出して指定避難所にたどり着くことができても、そこには着替えはないと思います。

避難所では薄い防災毛布の備蓄があると思います。濡れた服を着て毛布を体に巻き付けても暖かくはありません。単純に考えれば濡れた服をすべて脱がして、毛布を何枚も巻きつけた方が多少安全です。

しかし、私たちは人間です。災害が起きた時でも最低限、人間らしく生きる権利があります。

果てしない絶望の中にいる被災者が、少しでも我慢をせずに過ごせる方法を生み出す仕組み作りが必要です。

自助を必要とせず、災害が起きたら着の身着のままでも、とにかく逃げて避難所に行けば、日常とかけ離れていない人間らしい生活ができる国にしていきたいものです。

防災は想像力と総合力

これまで、3回にわたって災害の時に命を守る服の話をお届けしました。

しかし、未知の災害に対する備えは、ある意味では想像に過ぎません。最悪の事態を考えておく必要があります。また、備えは服だけではなく多岐にわたります。

大きな災害の場合、避難所で数か月過ごし、その後、仮設住宅等での避難生活が何年も続くことも考えておく必要があります。

大切なことは、(あなたが)助かる→(誰かを)助ける→(みんなで)助け合う、そして寄り添う。

そのために、日頃から「備え」と「訓練」をしてください。

第1回▶『避難所に行く際に必要な「服の備えチェックリスト」。 過酷な避難生活で低 体温症を防ぎ衛生状態を保つためのポイント
第2回▶『旅行にも応用可!避難用衣類のパッキング術。コンパクトに下着を隠せるたたみ方とA4サイズに圧縮するテクニック

須田雅太郎(すだ・まさたろう)
繊維製品品質管理士、クリーニング師、災害備蓄管理士。各地で『大規模災害発生時の衣の支援』に関する調査、講演活動を実施。

須田雅太郎
須田雅太郎

須田雅太郎 
繊維製品品質管理士、クリーニング師、災害備蓄管理士。東日本大震災後に宮城県多賀城市において移動式コインランドリー車による洗濯支援を行ったのをきっかけに『大規模災害発生時の衣の支援』に関する調査、講演活動を始める。