水産高校の生徒が、自分たちのサバ缶を宇宙に飛ばそうと教師と共に奮闘する姿を描いた、フジテレビ系の月9ドラマ「サバ缶、宇宙へ行く」。この中で度々登場するのが、生徒たちを何代にもわたってつなぐ重要アイテム「黒ノート」だ。開発に携わったメンバーに、実際の黒ノートを見ながら当時の思いなどを聞いた。
「思い出がぎゅっと詰まっている」
濃い青の表紙に「LABORATORY NOTEBOOK」と刻まれたノート。開くと、イラストを交えびっしりと記されたメモには何度も書き直された跡があり、宇宙サバ缶の開発までの高校生たちの試行錯誤が見て取れる。
このノートの持ち主の大学生の秦千遥さんと、同じ研究チームの元メンバー福島航英さんに話を聞いた。
2022年、高校2年生だった彼らはチームメンバーや先生、地域の企業と連携しながら、現在も販売されている「若狭宇宙鯖缶」の開発に携わった。
「チームのメンバーや先生、企業の担当者と試行錯誤しながら形にしていく過程が全部詰まってる」と秦さんは振り返る。福島さんも「自分にとっては青春。考えたことや感じたことをメモしていたこともあって、黒ノートは高校時代の思い出がぎゅっと詰まっている」と目を細める。
朝野先生のモデルは現・小浜市教育長
2人の恩師、小坂康之さんは、月9ドラマの主人公で俳優の北村拓海さんが演じる朝野先生のモデルとなった人物。現在は小浜市の教育長を務めている(2024年4月就任)。
当時、小坂さんが生徒に指示を出していたかというと、そうではなかったという。
「こうしろって言われたわけではない」という秦さん。その自由度こそが、生徒たちの成長を促した。「だからこそ自分自身もチームもすごく成長できたかな」と秦さんは語る。
黒ノートはもともと、生徒が研究や体験を記録するためのツールとして始まった。しかし小坂さんは、そこに想定以上の価値が生まれていることに気づいたという。「研究を代々することにつながったり、自分の感想や気持ちみたいなものも生徒たちから出てきた。自分たちの努力や積み重ねが目でも見られますよね」
生徒たちの“ワンダー”を追求する
教育長となった小坂さんは、この探究精神を小浜市全体へ広げようとしている。小学校では体験活動を中心に、中学校ではチームでの探究がすでに始まっているという。
「都会にはできない、福井だからこそ、小浜だからこそできる探究活動がどんどん発展していっていると感じる」という。
地域性と教育の質の高さを武器に、その取り組みを全国・世界へ発信したいという思いも強い。

小坂さんが最も大切にしているのは、生徒一人一人の好奇心だ。「サバ缶はたまたま本当に運良くできたと思うんですけど、生徒たちの心の中には湧いてくる“ワンダー”の気持ちがある。そこを大切にしながら一緒に未来を作っていければ」と語る。
黒ノートが生徒と研究をつなぎ実現した、宇宙鯖缶の開発。その探究の精神はいまも、次の世代へと確かに受け継がれている。
