静岡市が表明した市立病院における指定管理者制度の導入をめぐっては、依然として市側と職員側の溝が埋まっていない。市は説明会を開催したが、職員側は「我々の要求に対する回答としては不十分」と一刀両断した。

巨額赤字で決断 指定管理で再編へ

静岡市清水区にある市立清水病院は過去20年にわたって赤字経営が続いていて、2024年度は市が18億円もの運営費負担金を支出しながら22億5000万円の赤字を計上した。

2025年度に至っては運営費負担金が19億円の中、最終赤字は29.5億円と見込まれていて、実質的な損失額は50億円近くに上る。

このため、静岡市の難波喬司 市長が4月24日に発表したのが2027年度からの指定管理者制度導入だ。

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具体的には同じ清水区で清水厚生病院を運営するJA静岡厚生連が指定管理となることを前提に、2040年を目標に入院機能を清水病院に集約させ、厚生病院には総合的な診療機能を提供する外来機能のみを残す計画で、難波市長は「当該の2つの病院が、両方とも存続しようと頑張ると“共倒れ”になる」と、その意義を強調する。

現場に走った衝撃 4割が退職意向

ただ、突然の発表に清水病院の職員は困惑。

医師や看護師など職員731人を対象にアンケートを実施したところ(回答数:640)、清水病院に指定管理が導入された場合の対応について「退職したい」が41.4%に上り、「継続して働きたい」は12.0%に留まった。

アンケートを公表した市職員の労組は、回答を複数回した人が一定数含まれている可能性があるとしたが、「退職したい」と回答した人の大半は待遇面の悪化を懸念していることがわかる。

これには難波市長も「決定から発表まで、かなりの時間をかけた。その間、現場ではしっかり説明するようにと(指示していた)」との認識を示しつつ、「我々の説明が不十分だったと考えている。もっと具体的な説明を早い段階からしておくべきだった。申し訳なく思っている」と謝罪するしかなかった。

説明会を開催も溝は深く

こうした中、市職員労組の清水病院支部は5月18日、市に対して指定管理者制度を導入した場合の雇用条件の提示や地元住民に向けた説明会の開催を要望。

同日には、清水病院の職員を対象とした市主催の説明会が開かれた。

説明会は非公開だったが、この中でJA静岡厚生連が指定管理者となった場合の待遇や給与体系のモデルケース、さらには退職金の割り増しや他市の事例を参考に数年にわたって給与補償を検討していることなどが明らかにされたという。

これに対し、清水病院支部側は「職員の雇用や処遇保証などについては、市と協議し、交渉していく余地が十分にあると考えている」と受け止めを述べつつ、「我々の要求に対する回答としては不十分」と一刀両断した。

市からの説明を受け、ある職員は「手当てについても一切話がない」と不満を漏らし、別の職員は「育児休暇や時短勤務の適用条件や制限がわからない…」と不安げな表情を浮かべる。

地域医療への影響を懸念

また、清水病院支部側が主張しているのが指定管理者制度の導入によるデメリットで、紹介状を持たない場合の特別初診料の徴収に伴う受診者の負担の増加や二次救急への影響、さらには医局の撤退リスクだ。

特に医師の派遣元である医局については、市が協力を要請しているものの、現時点で医局からは今後も確実に派遣を継続するとの言質は得られていないと指摘。

その上で、今回の指定管理者制度の導入について「職員に留まらず、地域住民の命と生活に直結する問題となる」として、「市民不在のまま計画が進められ強い危機感を覚える」と強調した。

一方で、指定管理化をめぐる報道をきっかけに、清水病院の経営危機について職員に責任を押し付ける声も一部から聞こえてくるとして、「士気低下を招いている」とも訴えている。

市は6月にも清水病院に関する具体的な将来像を示すとともに、今後も詳細な給与や待遇に関する説明の機会を設ける考えで、市保健衛生医療課の望月健司郎 課長補佐は「地域医療を支えていくためには、働いている職員が継続して働いてもらわないといけない」と口にし、「説明を重ねるたびに職員の安心感が増し、地域医療を守れたら」と結んだ。

テレビ静岡
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