店では客席ソファーを寝床とし、愛想を振りまかず、お客さま対応をしない“接客しない看板猫”としてデビュー。

「私、接客いたしません」
「私、接客いたしません」

その何者にもこびないスタイルが、意外にもお多くのお客さんの心をつかみ、「バッファロー」は“猫のいる居酒屋”として有名になった。

その後も多くの人に愛され、店を盛り上げてくれたいとちゃんだったが、2024年の5月末にリンパ腫が発覚。

複数回に及ぶ抗がん剤治療にも耐え抜いたいとちゃんだったが、2025年3月22日、静かに虹の橋を渡った。

たくさんの思い出とともに
たくさんの思い出とともに

どこに行くにも何をするにも一緒だった、家族との別れ。当たり前にそこにいた存在を失った泉さんは毎日、涙が止まることはなかったという。

「これからは一人で出勤しなければいけないと思うと、胸が張り裂けそうでした」

やがて泉さんは、何か大切な糸がぷつりと切れたように、「店に立つことができなくなった」という。

泉さんは亡くなったいとちゃんの姿をかたどったクッションを作り、それを抱えて過ごすことで、埋めようのない寂しさを何とか紛らわせていた。

けれど、心はすでに限界寸前。日常を保つのがやっとなほど、精神的に追い込まれていたという。

いとちゃんをかたどったクッション
いとちゃんをかたどったクッション

そんな絶望の底から泉さんを救い上げてくれたのは、いとちゃんを通してつながった人たちの存在だった。

「いとが通っていた動物病院の先生から『すぐには難しいかもしれないけれど、また、かわいい子を迎えて幸せにしてあげてくださいね』と」

少しずつ気持ちが前向きに
少しずつ気持ちが前向きに

この言葉を聞き、「もし縁があったら、いとを愛したように、その子のことも大切にしたい」と、気持ちが前向きになったという。

そんなある日、いとちゃんを生前かわいがってくれていた店の常連さんが、一つの話を持ってきてくれた。

「解体現場で4匹の子猫が見つかり保護されたらしい」

泉さんは「いとが新たな縁をつないでくれた」と感じ、保護された子猫に会いに行くことを決意。その日は偶然にも5月22日、いとちゃんの“月命日”だった。

接客スタイルは正反対

保護された4匹の子猫のうち、最初に紹介された一匹を抱き上げたとき、言葉にできない運命的な感覚を覚えたという泉さん。