フェンシングでロンドンから3大会連続でオリンピックに出場した佐藤希美さん(39)が、教員に転身した。母校の高校で教壇に立ち、部活動では日本一を目指す後進の育成に情熱を注ぐ。アスリートの第二の人生のスタートに密着した。
福井県独自の採用枠で教員に
「もうドキドキです。バタバタしていて環境の変化についていけてない…」
4月15日、越前市にある武生商工高校の体育教員室には、初授業に向けて準備をする佐藤希望さんの姿があった。
佐藤さんは越前市生まれで、旧武生商業高校(現武生商工高校)の出身。2012年のロンドンから2021年の東京まで、3大会連続でオリンピックに出場し、引退後は、2児の母として子育てやクラブチームの指導に当たっていた。
国内トップクラスのアスリートを教員として採用する福井県の「教育エキスパート特別選考」の話を受けた佐藤さんは「一旦、競技も落ち着いたのでお受けした」という。
大学時代はオリンピック予選と重なり教育実習を断念した佐藤さん。教員免許は持っていないものの、フェンシングの実績が評価され、採用された。
オリンピアンを同僚に迎えることになった先輩教員は「我々から学ぶ姿勢だったり、授業の内容についても必ず事前に調べる姿勢があって、さすが」と感心する。
アクシデント発生も…生徒の反応は上々
佐藤さんは最初の授業のテーマとして、4月に改正されたばかりの道路交通法を選び、プレゼン資料を準備した。生徒たちが日常的に利用する自転車に関わる身近な話題だ。
「4月だし、みんな自転車に乗っているので少しでも触れられたら。でもドキドキです…どうなることやら」
そう言って教室に向かい、教壇に立った佐藤さん。
「初めての先生…というかこのクラスで授業するのが初めて!第1回目です!」
佐藤先生がこう切り出すと、生徒たちからは拍手が。生徒の反応も良く、和やかな雰囲気の中で授業を進める。
しかし授業の後半―
「えー!うそでしょ。ちょっと一旦やめます」
用意していたプレゼン資料が出てこないアクシデントに見舞われた。

しかし、最近のニュースの話題を盛り込むなどして、無事に初授業を終えると「生徒が反応してくれたり思いのほか話しかけてくれて、やりやすかった」と笑顔を見せた佐藤先生。
生徒たちも「優しそうな先生」「すごく受けやすい授業だったし、これからも楽しみ」と好評だった。
日本一の選手育成を目指す
放課後はもちろん、フェンシング部で指導に当たる。
慣れない授業とは違い、専門分野ということもあり「やっぱりフェンシングの方が教えやすいので…部活の時間の方がちょっとホッとしますね」と本音が漏れる。
フェンシングの指導者として、自身と同じく日本代表を目指せる選手の育成に励む佐藤さん。「ジュニアから育てて、日本一を目指していってほしい」と将来を見据える。

オリンピックのピストから母校の教壇へ。アスリートとしての実績を次世代の教育に生かそうと、佐藤さんの第二の人生が始まっている。
