小4で突如発症した『1型糖尿病』を抱えながら夢の甲子園を目指す高校生。練習中も自分で血糖値を管理しながら初めて参加した沖縄合宿を取材した。

インシュリン持って沖縄合宿へ

2026年5月11日― 那覇空港に降り立ったのは、沖学園高校野球部の部員たち。7月に始まる夏の大会を前にした強化合宿だ。

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力強いバッティングで活躍が期待されている、3年生の寺林秀真さん(17)。

彼には欠かせない日課がある。試合中のベンチで取り出したのはインシュリンを打つ注射器。

更に練習の合間には、おにぎりを頬張る姿も…。「これで30~40くらい血糖値が上がります」と自分の血糖値を冷静に調整していた。

突如発症『1型糖尿病』とは

寺林さんが患っているのは、『1型糖尿病』。いわゆる生活習慣病ではなく、誰でも突然発症する可能性がある病気だ。

腕につけたセンサーで小まめに血糖値を測定し、インスリン注射を打って血糖値を下げたり、逆に糖質を摂って血糖値を上げたりと、常に調整しなければ、命の危険に繋がるという。

宿舎に戻ると、寺林さんが翌日に食べる“補食”を用意していた。「煎餅とかは血糖値が上がりやすいから、入れています」と何を食べればどのくらい血糖値が上がるのか、自分の口に入れる物は熟知している。

深夜3時。コーチが寺林さんの部屋を覗く。「大丈夫?」と他の生徒を起こさないよう、そっと声を掛けたは、江口コーチ。

合宿中の夜間は、コーチが寺林君の血糖値を確認することにしているという。「大丈夫です」と寺林さんもすぐに目を覚ます。

「夜中は血糖値が下がりやすいので、この時間に確認する。低かったら“捕食”で血糖値を上げて、上がったかを確認してから寝かせます」と話す江口コーチ。合宿中の寺林さんの血糖値管理には細心の注意を払っている。

『血糖値』高くても低すぎても危険

寺林さんが『1型糖尿病』を発症したのは8年前。小学4年生の時だった。

「1型糖尿病は、一言で言うと、体の中のすい臓から出ているインスリンが全く出なくなる病気。

インスリンは、血糖を下げる非常に重要なホルモンなので、インスリンが出なければ高血糖になってしまう。よく糖尿病になると、失明や手足の切断、透析が必要など言われるが、それは凄く酷くなった結果。

血糖値を正常範囲に近付けることが非常に重要なポイント」と『南昌江内科クリニック』の前田泰孝医師は病気について説明する。

また一方で、『低血糖状態』にも注意が必要と注意を促す。「寺林君の場合は、野球をやっているが、インスリンを打っている人が運動すると、インスリンの効き目が急に良くなり、低血糖になりやすい」。

大幅に血糖値が下がると意識を失い、昏睡状態に陥る危険もある。

成長期は特に、血糖値の調整が難しく、寺林君はこれまで何度も救急搬送され、入退院を繰り返してきた。

2025年は、学校に通うことすらままならず、体育祭や修学旅行などの学校行事も全て断念した。

しかし、3年生になり、ようやく血糖値が安定し始め、この春1年ぶりに野球部に復帰を果たせた。

勝利引き寄せたタイムリーヒット

「正直、『もう無理かもしれない』と思ったことはあったが、先のことを考えて、『ずっとこれが続くわけじゃない』と自分に言い聞かせてきた。人の原動力になれたらいいかなって、同じ病気の子もいるし。普通に野球やってる子とかにも、勇気を与えられるような。プロの選手になりたい気持ちが強い」と夢を語る。

1ヵ月前、3軍から再スタートを切った寺林君。努力を重ね、合宿のメインである強豪校との練習試合で念願のスタメン入りを果たした。

対戦相手は、2025年春のセンバツに出場した『エナジックスポーツ高校』。

応援席には、母親の真弓さんの姿があった。(福岡から沖縄に駆け付けたのだ。)「信じられん、まだ信じられん。ほんの2カ月前まで想像もつかなかった。野球ができることも、みんなと遠征に来られることも。夢の中みたい(笑)1パーセントの可能性を信じて頑張ってきていると思うから、そのまま頑張って欲しい」と息子の姿を見守る。

試合は4回、満塁のチャンスで寺林さんに打席が回ってきた。「寺林、いけー!」ベンチからチームメイトが叫ぶ声が聞こえる。仲間の声援に応えるように寺林さんが思いっきりバットを振り抜くと、三遊間を抜けるヒット。

走者2人が一気にホームイン!寺林さんのヒットが、チームの勝利に貢献したのだ。

「チームに引っ張られているというのもあると思う。復帰したら、チームの皆んなが、めっちゃ上手くなっていて…。悔しいじゃないけど、もっと俺も上手くなりたいと思った」と寺林さんが正直な思いを口にする。

スタメン目指す“最後の夏”

寺林さんが目指すのは、甲子園へと続く“夏の大会”でのメンバー入り。前の年は諦めざるを得なかった目標だ。

「最後まで競争だと思うんで、自分がメンバーに入れないこともあるかもしれないけど、その差を埋めるためにしっかりやっていきたい」。

「バットを振るとか投げるとかに関しては、そこまで落ちていない気はする。でも、他の選手にも頑張っている子は当然いますし、最後は自分の力で勝負をかけて欲しい」と鬼塚佳幸監督も寺林君の頑張りを温かく見守っている。

病気で失った空白の1年を経て巻き返しを誓う寺林さん。自らの体を管理しながら、高校生活“最後の夏”に挑む。

夏の福岡大会は、7月4日に開幕。寺林さんは、20人のベンチ入りメンバーを目指す。

(テレビ西日本)

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