通勤電車の窓開け…換気効果をシミュレーション

ヨーロッパでは新型コロナウイルスの第2波が猛威をふるっており、日本でも冬にかけての第2波への注意が必要だろう。

そんな第2波を防ぐためには冬場の換気対策が課題の一つとも言われているが、こうした中、公益財団法人鉄道総合技術研究所が10月28日、通勤電車が窓を開けて走行した場合、混雑の度合いにかかわらず「車両内の空気が5分前後に1回入れ替わる」とするシミュレーション結果を発表した。

窓開けによる車内換気の様子(画像:鉄道総合技術研究所)
窓開けによる車内換気の様子(画像:鉄道総合技術研究所)
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シミュレーションには、鉄道総合技術研究所が開発した「空気流シミュレータ」を使用。

通勤電車が“6カ所の窓”を“10センチ程度開けた状態”で、“時速約70キロで走行”した場合を想定し、シミュレーションを行った。

その結果、乗車率0%の場合、車両内の空気は5.3分(5分~6分)に1回入れ替わることが判明。

また乗車率が上がると、人が増えた分だけ車内を占める空気の体積が減ることから、1回の換気に必要な時間は若干短くなったという。

乗車率の比較(画像:鉄道総合技術研究所)
乗車率の比較(画像:鉄道総合技術研究所)

換気量は乗車率50%で毎秒0.35立方メートル、100%で毎秒0.34立方メートルとほとんど変わらず、乗車率が高くなっても、換気量の低下はわずかであることも分かっている。

換気量と混雑度の関係(画像:鉄道総合技術研究所)
換気量と混雑度の関係(画像:鉄道総合技術研究所)

空調装置を使うと、空気が入れ替わる時間は短縮

鉄道総合技術研究所は、同じ条件で空調装置を使用した場合、換気量と空気が入れ替わる時間にどう影響するか、についてもシミュレーションを行った。

空調装置を考慮したシミュレーション(画像:鉄道総合技術研究所)
空調装置を考慮したシミュレーション(画像:鉄道総合技術研究所)

その結果、換気量に大きな変化は見られなかったものの、空気が入れ替わる時間は短縮されていることが分かった。

空調装置を使わない場合は5.3分(5分~6分)で車内が換気されたのに対し、空調装置を使った場合は2.4分(2分~3分)で換気されたという。

換気効果の比較(画像:鉄道総合技術研究所)
換気効果の比較(画像:鉄道総合技術研究所)

新型コロナウイルスの第2波が懸念される中、もうすぐ冬が到来する。「窓を開けていた場合、車両内の空気が5分前後に1回入れ替わる」ことは分かったが、気温がさらに下がるこれからは、できることならなるべく窓を閉めていたいことだろう。

では どのぐらいのペースで窓を開ければよいのか? など鉄道総合技術研究所の担当者に話を聞いた。

窓は全て開けた状態で走行

――シミュレーションの通勤電車はどこの路線を想定している?

今回のシミュレーションは、全長20m、横幅が2.9m、片側扉4カ所の一般的な通勤型車両を想定していますが、何線の何型ということは考慮していません。


――時速70キロというのは、普通の電車が走行しているときの速度?

東京圏の電車は路線によっても異なりますが、最高で100キロ前後で走行しています。速度におおよそ比例して換気量が増えるため、速度が上がると、換気の回数は増えることになります。


――「6カ所の窓を開けて走行」。これは開く窓を全て開けた状態という認識でよい? 

そのとおりです。

何分に1回、窓を開ければよいのか?

――これから冬が到来するが、窓は何分に1回のペースで開ければよい?

“何分に1回、換気をすればよいか”については、医療関係者などの見解が必要と考えます。今回の結果はそのような見解も踏まえて、“どのように窓開けをすればよいか”の参考としていただくために行ったものです。
 


3密が心配される通勤時間帯の電車でも窓開けの効果がわかったが、鉄道総合技術研究所は今後、電車の速度の違いを踏まえた換気効果の評価や、新幹線・特急車両での換気装置の効果を分析するとしている。こうしたシミュレーション結果を踏まえ、冬が到来する前に、医療関係者の実用的な見解も聞いてみたい。
 

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プライムオンライン編集部
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