飛沫検証のシミュレーション動画が公開

7日には、沖縄で初めて新規感染者が100人に達するなど、感染収束の気配を見せない新型コロナウイルス。

せきやくしゃみ、声を出すことなどで発生する飛沫での感染がいわれる中、電車やオフィス、学校の教室などの室内環境で、新型コロナウイルスの飛沫がどのように広がるかを検証したシミュレーション動画が公開された。

既にニュースなどで、座った人の口から出た飛沫がパーテーションを乗り越え、向かいの人に降りかかる画像を見た人もいるかもしれない。

提供:理研、豊橋技科大、協力:京工繊大、阪大

この画像や動画は理化学研究所の坪倉誠チームリーダーらのグループが公開したもの。

スーパーコンピューターの性能を比較するランキングで世界一にも選ばれた国産スパコン「富岳」を用いて、さまざまな室内環境での感染リスクを分析し、換気などの対策を考察しているのだ。
 

隙間があるとマスクでの発話で空気が漏れる

提供:理研、豊橋技科大。協力:京工繊大、阪大。

まず、マスクの効果を検証したシミュレーションでは、マスクの有無・隙間の有無による空気の流れを比較。マスクに隙間がある場合は、発話も咳と同じぐらい空気の漏れがあることが確認された。

混んだ列車も窓を開ければ十分換気

提供:理研 協力:豊橋技科大、鹿島建設

また、JR山手線などの列車を想定したシミュレーションでは、混雑の度合いや窓の換気による感染リスクの変化を検証した。

列車がすいているとき乗客1人当たりの換気量は、窓を閉めていても一般のオフィス(20~30m³/h)の3倍程度あるが、混雑時は乗車率に応じて10分の1以下まで低下するという。

このような過密状態でも、窓を開けることで一般オフィス程度まで改善することが可能だとしている。
 

提供:理研,協力:豊橋技科大,鹿島建設

パーテーションは頭の高さ140cmが有効

提供:理研・豊橋技科大,協力:京工繊大,阪大

その他、小規模オフィスのシミュレーションでは、咳も発話も、飛沫は2mほど飛ぶという。ただし、飛沫がかかるリスクがあるのは正面にいる人だけで、左右の斜め前や隣にはほとんど飛ばないとのことだ。

そこで、感染を防ぐには頭の高さ140cmのパーテーションが効果的で、飛沫の到達量を10分の1以下に抑えることができるが、空中に浮かぶ小さな粒子「エアロゾル」に対しては、また他の対策が必要だとしている。

列車内での換気やパーテーションの重要性は分かった。では「エアロゾル」対策はどうすればいいのか?気温や湿度が高くなる夏に有効な対策は何なのだろうか? 坪倉誠リーダーに聞いてみた。
 

エアロゾル対策は換気や扇風機も

――飛沫をシミュレーションしようとしたきっかけは?

ウイルスは目に見えないので、闇雲に恐れたり根拠なく侮ったりすることにつながると考えました。スーパーコンピュータを活用して飛沫やエアロゾルが飛散していく様子を可視化して社会に発信することで、飛沫に対して正しい理解と感染リスク認知及び予防の啓発につながると考えました。


――気温や湿度が高い夏に有効な対策は?逆に秋からの対策は?

飛沫の飛散の仕方は湿度により大きな影響を受けます。口から出た飛沫は急速に蒸発し、エアロゾル化しますがその速度は湿度に大きく依存します。湿度が高くなる夏にかけてはより多くの飛沫が蒸発せずに机の上などに落ちます。机に落ちた飛沫は接触感染を誘発しますので、拭き掃除等をこまめにすることが大切です。

一方、湿度が低くなる秋から冬にかけてはより多くの飛沫が蒸発し、エアロゾル化して空気中を長時間漂います。この場合はより換気に重点を置くべきです。


――他に感染リスクを下げる対策は?

飛沫感染についてはマスクの着用により90%以上の飛沫は防げます。一方で5ミクロン以下のエアロゾルはマスクと顔の隙間から、発生量の50%は漏れてしまいます。

漏れたエアロゾルの感染リスクについては未知な部分も多いですが、高濃度のエアロゾルは感染リスクを高めると予想されます。高濃度のエアロゾルが速く拡散して薄まるよう、扇風機やサーキュレータの併用が有効であると思います。また、室内で薄まったエアロゾルは機械式換気や窓開けによる換気で早く外に排出するべきです。

パーテーションは飛沫感染リスクを抑えますが、高すぎるパーテーションは室内に空気の流れの淀みを作り、エアロゾル感染リスクを増加させる可能性があります。5ミクロン以上の飛沫、及び5ミクロン以下のエアロゾルそれぞれに対する対策を講じる必要があります。


――今後はどんなことを研究する?

現在は、社会経済活動の復帰に向けて、即効的な対策(パーテーションやマスク、フェイスガードの効果)を提案していますが、今後はポストコロナを見据えて、より長期的な視点、例えばマスクに代わる代替物の検討や、建物の換気方法そのものを再検討するような対策を提案していきたいと思っています。
 


ワクチンや特効薬はもちろんだが、通勤時や会食での対策など、身近なリスクを下げる方法を知りたい人は多いだろう。特に夏の飛沫は机などに落ち、接触感染を誘発することが分かった。換気やパーテーションとともに、こまめな拭き掃除も心がけてほしい。
 

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