記録的な猛暑が続く中、どのように熱中症対策をすればよいのでしょうか。
関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」では、熱中症から命を救う、近畿大学病院救命救急センター医師の植嶋利文さんが出演。
「熱中症は正しい予防で対策ができるもの」ということで、「家にあるもので今すぐできる、熱中症予防法」を解説してもらった。
植嶋利文医師:水分補給、塩分補給、直射日光(暑い環境)を避ける3本柱が基本です。これらを元に、より効果的な予防法を学んでいただければと思います。
大切なポイントを押さえながら、皆さんが普段からよく聞くような「熱中症予防法」の中に、間違っているものはないかということ聞いていった。

■経口補水液は「がぶ飲み」NG 手軽な水分補給のおすすめ「水出し昆布だし」
まず、ひとつめ「経口補水液を予防的にがぶ飲みする」これは熱中症の正しい予防法かどうか?
植嶋利文医師:これは NG です。経口補水液をスポーツドリンクと同じように飲む方がおられますよね。たくさん汗をかいたり、めまい、立ちくらみ、頭痛などの熱中症のサインを感じた時にはいいんですが、お味噌汁1杯分くらいの塩分が含まれているので、予防的にたくさん飲むのはやめましょう。
”これが良い”って言われると、熱中症になる前でも飲んでいたらいいんじゃないかと思いがちだが、実はこれは症状が出てから、もしくは今から熱いところで汗かくことが分かってる時に効果を発揮するという。
ではどんな飲み物が効果的なのだろうか。
手軽にできる水分補給としては、「水出し昆布だし」がおすすめだ。
作り方は簡単で、1.5リットルの水に20グラムほどの昆布を一晩つけておくだけ。
(Q.昆布だしの良い所は?)
植嶋利文医師:昆布だしには塩分やマグネシウムなどのミネラルが含まれている一方、糖分が少なくて安心して飲めます。また、だしの旨味成分「アミノ酸」は疲労回復にも役立つので、一石二鳥です。

スタジオではハシヤスメ・アツコさんに「水出し昆布だし」を試飲してもらった。
ハシヤスメ・アツコさん:今回は匂いはなんかうっすら昆布の匂いがするかな。本当に水に昆布を入れるっていう。どんな味するんだろうと思ったんですけど、でも飲みやすいです。
熱中症になってから飲むのではなく、通常の水分補給として「水出し昆布だし」を飲むと、色んな成分も入っているので良いということですが、「昆布」と聞くと、「昆布茶」もありますよね。
植嶋利文医師:間違いやすいんですが、昆布茶は経口補水液よりも塩分濃度が高いので、飲み過ぎに注意してください。
青木源太キャスター:熱中症にならないためには塩分を取ったほうがいいけど、塩分の摂りすぎは体に良くないということです。

■屋内プールでも熱中症の危険性あり ポイントは「湿度」
続いては、「外でのレジャーをさけて屋内プールで過ごす」です。
植嶋利文医師:これは微妙なんです。熱中症に関しては、温度が高いのは確かに影響するんですけれども、湿度も大きく影響してるんです。屋内のプールというのは直射日光を避けることができるんだけれども、プールから出てくる水蒸気で湿度が高くなってしまってるんです。
(Q.室内プールでも熱中症なる人がいる?)
植嶋利文医師:起こる可能性はあると思います。プールによって温度や湿度の環境を整備しているかどうかによるかと思います。

■外出前にも効果アリ 「手のひらを冷やす」
続いての「熱中症予防法」は、「クールダウンには手のひらを冷やす」。
植嶋利文医師:正解です!従来から首や脇の下を冷やすことによって、動脈から全身を冷やすことができる。これがすごく有用だと言われていました。でも最近の研究の1つとして、手や足を少し冷やすこと、毛が生えてない部分の薄い皮膚を冷やすことによって、体全体を冷やすことができるといったことも報告されております。
具体的には桶に10度~15度ぐらいの水を張り、手のひらや足の裏をいれて、10分程度冷やしておくと、効率的に体温を下げることができる。
(Q.手足を冷やすのは、外出前が良い?)
植嶋利文医師:外に出る前でも冷やすことによって、少し体温が下がるし、外に出た後でも、急激に体温が上がるのを抑えることができる効果もあると言われています。
(Q.冷たいペットボトルを握るのでもいい?)
植嶋利文医師:あまり冷やしすぎているもの、例えばカチカチに凍ったペットボトルだと、手の血管自体が細くなってしまう。血管が細くなると、せっかく冷えた血液も体には流れていってくれないんです。
(Q.この冷やしたのは何分ぐらい有効?)
植嶋利文医師:このように冷やした場合、20分~30分ぐらいは、体温の上昇はある程度抑えてくれるという報告があります。できれば30分に1回ま涼しい所に行って、体全体を冷やしてやるいいかと思います。

■昔の知恵「打ち水、すだれ、梅干し」は令和の猛暑にも有効なのか
ここまで最新研究を元にした、おすすめの「熱中症予防法」を教えてもらってきたが、昭和の時代におばあちゃんなどがよくやっていた暑さ対策は、今でも通用するのか?教えてもらった。
記録的な猛暑が続く今でも、昭和の3大暑さ対策は有効なのだろうか。
1.昔から暑い時には、おばあちゃんが玄関先でやっていました“打ち水”
水を撒き、地面を冷やすことで涼を取れる昔ながらの方法ですが、災害レベルの日差しが降り注ぐ今の時代でも有効だろうか。
2.「一家に1台エアコン」というわけにもいかなかった昭和時代、縁側に必ずと言っていいほどあった“すだれ”。日除けのために窓にかけられていた“すだれ”ですが、40度に迫る酷暑でも意味はあるのだろうか。
3.昔から疲労回復や食欲増進のために食べられていた“梅干し”
最新の熱中症対策商品が色々と出ている中、昔ながらの梅干しでも効果はあるのか。

■マンションでも効果ある!?“打ち水”
まずは【打ち水】。
植嶋利文医師:今でも効果的です。打ち水は地面にまいた水が蒸発する時に、気化熱で温度を奪ってくれる。この気化熱を利用して涼しさをとるのが昔からの知恵です。これは今でも地面の熱を下げるのにすごく有効だと言われています。
(Q.打ち水をする時のポイントは?)
植嶋利文医師:暑い時にまいてもすぐに蒸発してしまうので、そこまで効果がない。朝や夕方、それから日陰の所にまいてやる。それがいいかと思います。
また、まきすぎると湿度を上げてしまう恐れがあるので、水をたくさんまいて、そこにじっとしているのはやめてほしい。
(Q.マンションに住んでいる場合は?)
植嶋利文医師:マンションの場合でも、ベランダに直射日光があたって暑くなっておりますので、そういった所に夕方とかに少しまいてあげるだけでも、温度が下がっていいかと思います。
(Q.エアコンの室外機を濡らすのは?)
植嶋利文医師:室外機自体は、太陽が当たらないにするのはいいだろうけど、水を直接かけるのは、やめてほしい。

■どこに付けると効果的?“すだれ”
続いて【すだれ】。
植嶋利文医師:いいですね。
(Q,すだれを窓の外、内につけるで効果の違いは?)
植嶋利文医師:外側につけた方が効果的なんです。例えば直射日光はすだれでブロックされますので、熱い日光も防ぐことができます。内側に入れておくと、“すだれ”やブラインド自体が熱せられるので、室温自体が上がってしまいます。

■おいしくても食べすぎ注意“梅干し”
最後に【梅干し】。
植嶋利文医師:効果的です。これ自体は摂りすぎるのは、塩分を摂りすぎるのでいけません。ただ梅干し自体は熱中症で失われやすい塩分であったりとか、その他のミネラルを効果的に摂ることができます。適度に摂っていただけるのはいいかと思います。
古くからある知恵と、最新の科学を駆使して、この暑い夏を乗り切ろう。
(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」2025年8月5日放送)
