施設の老朽化やスキー人口の増加などにより、自治体による運営が終了したものの、東京のIT企業が事業を引き継ぎ復活した新潟県村上市のぶどうスノーリゾート。民間運営で初めて迎えた、苦節のシーズンを追った。
閉鎖予定だった“ぶどうスキー場”…再開への道のり
2026年3月15日。今季の営業を終えた新潟県村上市のぶどうスノーリゾート、旧ぶどうスキー場。
実は、昨季で市による運営が終了し、閉鎖される予定だったスキー場だ。
この日の終礼で「『再開してくれてありがとうございました、来年も頑張ってください』というお声をいただいたこともあったので、やって間違いではなかったなと思う」と話したのは、運営会社の沼前純一社長。
運営を引き継ぎ、初めて迎えたシーズンとなったが、その道のりは決して順風満帆とは言えなかった。
25年12月20日、スキー場のロッジに姿を見せた村上市の高橋邦芳市長は胸をなで下ろしていた。
「村上市のスキーの灯を消さないということで、本当にありがたく思う」
この日は、営業開始に合わせてゲレンデの無事故などを祈る安全祈願祭が執り行われる予定だったが、村上市の最高気温は平年を大きく上回る14.5℃。ゲレンデに雪はなく、オープンは先送りすることになってしまった。
沼前社長は「だいぶ雪がないので、苦しいというか。年末年始が一番の集客があるので、そこでしっかり営業ができたらいいなと思っていたところだけど。経営的には厳しくなるかなというのは少し思う」と雪のないゲレンデを眺めながらこぼした。
ようやくオープン!ゲレンデには多くのスキー客「本当にうれしい」
その後は、雪が降るのを待ちながら準備を進め、ようやくオープンにこぎつけたのは26年元日のこと。
営業開始の告知ができたのは3日前と、慌ただしい中でのオープンとなったが、ゲレンデには多くのスキー客の姿があった。
「昔から通っているスキー場だったので、再開してくれて本当にうれしいなと思って、オープン日から並んだ」と地元の男性は話す。
また、年末年始で東北のスキー場を巡っている中で、ぶどうスノーリゾートの再オープンのニュースを知り訪れたという静岡県在住の男性もいた。
そして午前8時半すぎ、客を乗せたリフトが動き出し、ぶどうスノーリゾートとしての営業がスタート。ローカルなゲレンデではあるが、それでも村上にスキーの灯が再び灯った瞬間だった。

周囲の期待の表れか、200人以上が来場し、カウンターにはシーズン券を求めて列ができていた。
沼前社長は「皆さん楽しそうに滑っていて良い。良いスキー場だと滑れば分かるので、間違っていない選択をとったと思う」と語った。
オープンを見守ったあと、沼前社長は近くの集会場へ。地域の新年の集まりに顔を出し「集落の方々と一緒に残せるスキー場にしていきたい」と挨拶した。

市から運営を引き継ぐにあたり、何度も東京から足を運んで地域に理解と協力を求めてきたといい、葡萄集落の自治会長も沼前社長の一生懸命さ、本気さに心を動かされたという。
宣伝不足・物価高騰…赤字は当初予測の2倍近くに
会社が村上市から土地と施設を無償で借り受ける契約期間は3年間。
その後、村上市との契約が更新されることも考えられるが、スキー場を残していくためには、まず事業の黒字化が求められる。

しかし、「当初の予想よりは赤字の幅が広くなって、色々修繕とかでかかった費用が大きかったり、集客の面も弱かったりした」と沼前社長。
実際に運営に向けて動きだしたのは、市との契約が結ばれた25年10月以降で、そもそも今季の営業ができるのかも不透明だったことから十分な宣伝が行えなかった。
来場者数は昨季の1万3000人の半分ほどと、客足が伸び悩んだほか、物価高騰もあり、赤字は当初の予測の2倍近くに膨らむ見込みだ。
「まだ中途半端」唯一無二のゲレンデへ…黒字化に向け意見交換
厳しい経営状況に置かれる中、この苦境を打破しようと、営業終了後に客を交えた意見交換会を開催。
宣伝や、スキー場として営業しない夏場の戦略、今季見られなかった学校の団体客の呼び込みなど、黒字化に向けた闊達な意見が飛び交った。
ただ、沼前社長は「とんがっていない。まだ中途半端で、そこも集客の弱さにつながっているのかもしれないが、『これが強くて、これのために来る』みたいなオンリーワンじゃないんですよね」と話すように、沼前社長が思い描いているのは、唯一無二のゲレンデだ。

自転車型のソリ・スノースクートの貸し出しや、元SAJデモンストレーターによるレッスンをはじめとしたスクールの開校など、下越エリアでは珍しい取り組みを行っているが、まだ大きな集客にはつながっていないのが現状だ。
無事に迎えた営業最終日 スキー客からは感謝の声「毎年来たい」
課題は山積…。それでも初めてのシーズンは大きな事故が起こることなく、無事に3月15日の営業最終日を迎えたのだった。

ぶどうスノーリゾートを拠点に活動している朝日ファミリースキークラブの会員は、「ここがなければ胎内のスキー場でできるんだろうが、やっぱりそこはアウェー。ホームじゃないと。ぜひとも営業を継続してもらえるとクラブとしては助かる」と復活に対して感謝の意を表す。

また、3月に卒業を迎えた地元の中学3年の5人組は、春からそれぞれ別の高校に進学するということで思い出づくりにスキー場を訪れていた。
「毎年来たい。この5人でまた一緒に滑れたら最高の思い出になる」と笑顔で話した。
ぶどうスノーリゾートを未来へ「2シーズン目が非常に重要」
とがった魅力はまだ打ち出せてはいないが、それでも誰かにとっては唯一無二のゲレンデとなっているぶどうスノーリゾート。

未来につなげるためにも、客を増やすための取り組みが、これからさらに求められることになる。
沼前社長は、「リフトを更新できるような利益を出して、10年後20年後も営業できるようにしないといけない。そこの思いは変わらない。2シーズン目が非常に重要だなと思っている」と気持ちを新たにした。
ぶどうスノーリゾート勝負の2シーズン目に向けて準備がまた始まっていく。
