東京・世田谷区のコンビニで2024年11月、あわせて約500円の商品を盗み、追いかけてきた店員に捕まると、複数回頭突きするなどの暴行を加えて、全治2週間のけがをさせた強盗致傷の罪に問われている越前谷真将被告(50)。

越前谷真将被告(50)
越前谷真将被告(50)
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顔には特徴的なタトゥーが入っている。初公判前には2日間にわたって東京拘置所内で取材に応じた。

越前谷被告はなぜ犯行に及んだのか?

「店に迷惑をかけてやろうと…」拘置所で語った動機と反省の言葉   

拘置所内の面会室に入り、待っていると、越前谷被告は「はじめまして」と頭を下げて入ってきた。また、声もハキハキとしていて、終始表情は豊かで礼儀正しい印象を受けた。

逮捕された当時、同じ建物に住む住民らに取材したが、「物腰は柔らか」、「(越前谷被告から)おはようと声をかけてくる」といった声が聞かれた。 

そして、まず今回の事件について聞いた。 

「終始表情は豊かで礼儀正しい印象」拘置所内での接見の様子(イラスト:石井克昌 )
「終始表情は豊かで礼儀正しい印象」拘置所内での接見の様子(イラスト:石井克昌 )

ーーお金に困っていた? 
越前谷被告:

特に困っていなかった。家賃も払えていた。 

ーーなぜ犯行に及んだ? 
越前谷被告:

店に迷惑をかけてやろうと思って盗んだ。暴行は逃げるためにした。  

ーー犯行を起こしたことについて、今どう思っている? 
越前谷被告:

悪いことをしたと思う。お騒がせしてすみません。反省している。 

越前谷被告の顔に入っている特徴的なタトゥーについて尋ねると、「もともと『彫り師』をしていて、入れて目立ったら自分のところに客が来るかと思っていた。20年くらい入れている」と説明。 

拘置所内での接見の様子(イラスト:石井克昌 )
拘置所内での接見の様子(イラスト:石井克昌 )

越前谷被告は逮捕後の調べに対し、「黙秘」と供述し、動機や認否についてこれまで明らかになっていなかったが、今回、犯行について口にした。 

しかし、普段の食事で何を食べているかについて語り出すなど、時折、会話の趣旨がぶれることもあった。

なぜ店に迷惑をかけようと思ったのかについて、さらに問いかけると「店舗の駐車場で、ほかの客に『タバコを下さい』と声をかけていたところを従業員に追い払われたからだ」と述べた。 

店に迷惑行為繰り返し、注意され逆恨み

実際に裁判で、検察側が犯行経緯について明らかにしている。 

今回の店舗は2022年2月ごろに越前谷被告の近所にオープン。このころから、店舗の駐車場でほかの客に声をかけて小銭をせびってはタバコなどを購入するという迷惑行為を繰り返していたという。店の従業員らはその行為を確認すると、敷地から出ていくように注意していた。

犯行前日、越前谷被告が店を訪れると、ある女性従業員に敷地から出て行くように注意される。越前谷被告は以前からこの女性従業員の態度に不満を持っていたことから、仕返しをしようとした。そして、この女性従業員を店の経営者だと思い込み、万引きによって店に経済的影響を与えようと考え、犯行に及んだのだ。 

越前谷被告は、続く被告人質問で「物を盗めば赤字になると思った」と話したうえで、「万引き以外の方法は思いつかなかった」と述べている。 

また今回は、4年前に起こした窃盗事件の執行猶予中での犯行だったことも裁判で明らかになった。 

職を転々…初めてのタトゥーは20歳前に 

越前谷被告は、秋田県で両親のもと、4人兄妹の長男として生まれた。

小学校から中学3年の夏までは東京で過ごし、その後、秋田に戻り高校に通ったが、タバコを吸うなどして停学、自主退学となった。その後は、美容の専門学校に2年半通い卒業。

美容室に勤めたほか、以降は居酒屋やダムの建設工事、物流の仕事など職を転々として生活し、2度の結婚と離婚を経験。

そしてタトゥーは、20歳になる前に体に入れ、先述の拘置所での取材で明らかになったように、顔に入れたのは30歳ごろになった時だったという。 

犯行前の連日にわたる咳止め薬乱用

越前谷被告は26歳の時に、幻覚や不眠症に悩み、生活保護を受けるようになる。収入があり、生活保護を受けていない時期もあったが、再び受けるようになった。

そして精神的に不安定な生活の中、咳止め用の市販薬を何年かおきに乱用していた。越前谷被告は、15歳の時に他人に勧められたことをきっかけに飲み始める。さらに、「飲むと多幸感を感じていた。切れるとイライラし、攻撃的になっていた」と述べた。

犯行の12日前からは、3~4年間飲んでいなかった咳止め薬を連日飲み続け、犯行当日も多幸感が薄れてイライラしてきたという。 

また、越前谷被告については、軽度の知的障害があると診断が出ているほか、物質使用症・物質誘発症の症状があるという。

咳止め薬に依存しているという自覚もある本人に対し、福祉的支援を行う社会福祉士は、法廷で今後について粘り強く本人に説明等を行い、納得を得ながら支援を進め、自身ができるかぎり、本人が望むかぎり、続けていきたいと話した。咳止め薬などついても環境を変えることで購入する頻度が減ることを信じていると語った。

その後、越前谷被告は、弁護人に次のように問われると…。 

弁護人:
今後二度と犯罪をしない? 

越前谷被告:
はい。 

このように答えた一方、過去に再犯している現実を指摘されると、「福祉支援が入ることや裁判員裁判の経験が初めてであることが、これまでと異なるところだ」として、「変わります」と更正の入口に立っていることを断言した。 

「更正への意欲示している」求刑7年に懲役5年の判決  

21日の判決で、東京地裁は「手段を選ばず執拗(しつよう)に暴行脅迫を加えていて、危険で悪質」と指摘したうえで、「店員からの注意に腹を立て、店に損害を与えることを目的として及んだ犯行は身勝手」と非難。

東京地裁(1月21日)
東京地裁(1月21日)

一方で、「社会福祉士が更正支援計画を策定し、これに基づいて、充実した支援体制が構築されつつある」、「更正への意欲を示している」などとして、 検察側の懲役7年の求刑に対し、越前谷被告に懲役5年を言い渡した。 

反省の気持ちを持ち続け変わっていけるか。越前谷被告のこれからが注目される。 

(執筆:フジテレビ社会部 大熊悠斗)

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大熊悠斗
大熊悠斗

フジテレビ報道局 社会部記者。
司法クラブ裁判担当。
これまでに警視庁クラブで生活安全部・交通・薬銃などを担当。