暮らしに欠かせないといっても過言ではない天気予報。
降水の有無で言えば、東北地方全体の翌日の予報適中率は84%と、非常に高精度だ。

どのようにしてこれほどまでに精度の高い予報を行えるのか。
その裏には、日々進化を続ける多種多様な観測機器や、現場を知り尽くしたプロの力があった。

東北地方を統括する仙台管区気象台

仙台管区気象台に設置された様々な観測機器
仙台管区気象台に設置された様々な観測機器
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仙台市宮城野区にある仙台管区気象台。
気象庁の地方機関として、宮城県だけでなく、東北地方全域の気象業務を統括している。

気象台には、温度計や湿度計、約50mの高さに設置された風向風速計など、全部で12種類の観測機器が設置されている。

まずは、降水量に関する機器。

降水量とは「降った雨がその場にたまった場合の水の深さ」のことで、単位はmm(ミリメートル)で表される。

雨量計の中にある転倒ます
雨量計の中にある転倒ます

そんな降水量を計るのが、「転倒ます型雨量計」だ。
転倒ます型雨量計の中には、その名の通り「転倒ます」という装置が設置されていて、0.5mm分の雨がたまると、シーソーのように転倒する作りになっている。
つまり、1時間に20回ますが転倒すれば、その地点での1時間雨量は10mm、ということになる。

気象レーダー
気象レーダー

一方、雨を、地点ごと、つまり「点」ではなく「面」として観測できるのが、気象台のシンボル「気象レーダー」だ。直径7mのドームの中に、パラボラアンテナが入っている。

ドーム内のパラボラアンテナ
ドーム内のパラボラアンテナ

このアンテナを回転させながら半径400kmの範囲に電波を発射し、雨粒までの距離や強さを観測している。

仙台管区気象台観測整備課 毛利光志さん:
全国で20カ所、日本全土を覆うように設置している。日本の雨の分布を観測する強力な観測機械。

データと人の力による予報

こうして観測されたデータは気象庁のスーパーコンピューターに送られる。
コンピューター上では観測値をもとに現在の大気の状態を面として把握し、さらに、その後の変化も計算して「将来」の状態までを予測。これが、普段私たちが見聞きする天気予報のベースとなる。

しかし、これがそのまま天気予報になるわけではない。最後に必要となるのは人の力だ。

一年中眠らない部屋、予報現業室。ここでは、24時間365日、常に誰かが作業を行っている。
ここで「予報官」がコンピューターによる予測を確認し、細かく修正することで初めて天気予報は「完成」する

予報課 山中力主任予報官:
小さなスケールの現象、地域の特性が出てしまう現象は、コンピューターの予測が十分ではないので人の手で修正を加える

例えば、宮城県では奥羽山脈が予報の大きなポイントで、西よりの風が吹くとき、どの程度山を超えて来るのかが、予測が難しいポイントだという。

コンピューター上では奥羽山脈を細部までは表現することが難しいが、風の吹き方の細かい違いで天気は変わってしまう。

そこを、予報官がこれまでの経験や知識で判断し、修正する。

さらに、予報官と連携をとるのが解析担当だ。
気圧や気象衛星の雲の動きなど、目先の天気の状況を手作業で確認し、気付いた点を予報官に伝える。
予報官はこれをうけて、さらに予報を修正し、精度を高めていく。

ここで作業する人たちは、宮城の地形を知り尽くしたプロフェッショナルと言えるだろう。

高精度の予想も…及ばない領域

2025年10月1日 仙台市宮城野区
2025年10月1日 仙台市宮城野区

最新の機器と経験と知識を持つ人の手によって作り上げられる天気予報。
しかし、それでも及ばないところがあるという。

予報課 山中力主任予報官:
100%当てるのはなかなか難しい。大雨などの激しい現象、スケールの小さな現象は数値予報が苦手とするところ。過去の経験で補っているが、最近気象現象が激甚化・頻発に起きて変化が見られる。

地球温暖化などの影響による近年の気象の変化が、予報をさらに難しくしている。

例として、2025年10月1日の大雨があげられる。
上空の寒気と地上の暖かく湿った空気の影響で大気の状態が不安定になり、宮城県内で雨雲が発達。
気象台では仙台市宮城野区に「記録的短時間大雨情報」を発表し、警戒を呼びかけたが、実際に降った雨の量が予想よりも多くなり、被害が出てしまった。

どこで雨雲が発生・発達しやすいのか、ピンポイントで予測するところまでは、現代の予報技術でも追い付いていない。

データの蓄積で予報を高精度に

気象台では、予報と実際を照らし合わせて振り返り、そのデータを蓄積。さらに、気象衛星や気象観測船などの性能の強化も続けるなど、精度を高めるための取り組みを行っている。

激変する地球環境の中で、天気予報も絶えず進化を続けながら、暮らしを支えている。

仙台放送
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