世界遺産の島で、プラスチックごみのない海の実現に向けた官民プロジェクトが進んでいる。
観光客増加の裏で深刻化するごみ問題。解決の鍵として注目されているのが生分解性素材などを使ったオリジナル製品の導入だ。

砂浜に漂着する大量の海洋プラごみ

焼きガキや揚げもみじなど食べ歩きが楽しい観光地・宮島。オーバーツーリズム対策として最新型のごみ箱の設置や清掃活動に取り組んでいる。
その一方で、島の東側にある包ケ浦海岸にはペットボトルなどが大量に漂着していた。

プラごみが散乱する宮島の包ケ浦海岸
プラごみが散乱する宮島の包ケ浦海岸
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広島県の調査では、2024年度に県内海岸へ流れ着いたごみは約11トン。その内訳は漁業関連59%、生活由来31%で、減らせる可能性のあるものが大半を占める。
問題は、砕けて微細化したマイクロプラスチックである。プラスチックは自然界で分解されにくく、細かくなっても長期間残ると言われている。

宮島水族館 獣医師・滝導博さん
宮島水族館 獣医師・滝導博さん

宮島水族館で動物の診療に携わる獣医師・滝導博さんは、「見えないレベルまで細かくなったプラスチックが体の奥、脳の方まで入り込む可能性が報告されている。魚たちに限らず、食物連鎖の上位にいる人間ほど悪影響が出る恐れがある」と指摘する。

プラスチックに代わる製品を導入

そんな中、「2050年までに瀬戸内海へ流出する海洋プラスチックごみゼロ」を目指す広島県。その実現に向け、2025年9月、宮島で官民連携プロジェクト「ACTION FOR ZERO Miyajima」が始まった。取り組みの一つが、プラスチックに代わる容器の普及だ。

宮島観光を「脱プラ化」するためのオリジナル製品

プロジェクトに参画する広島市中区の食品容器メーカー「シンギ」の河村伸枝さんは、新素材のドリンクカップを並べてこう説明する。
「トウモロコシやサトウキビを原料にした植物由来のバイオマスプラスチックです」
さらに、温度や湿度など一定の条件がそろうと、微生物などの働きで最終的に水と二酸化炭素に分解される“生分解性素材”である。

シンギ・河村伸枝さん
シンギ・河村伸枝さん

河村さんは従来品との違いについて、「一般的なPETカップは紫外線などで劣化することがあっても分解はされない。この製品は、適切に処理すればマイクロプラスチックになりにくいと考えています」と話す。

宮島周辺で導入広がるも課題はコスト

プロジェクトによって、脱プラスチックに切り替える動きが宮島周辺で広がっている。
宮島口の宮島コーラルホテルでは、このドリンクカップを館内カフェで導入。田村義和支配人は従来のプラスチックカップと比べながら、「少し柔らかいですが、利用には支障ありません」と語る。

従来のプラスチックカップ(左)とほぼ変わらない使用感
従来のプラスチックカップ(左)とほぼ変わらない使用感

客室にはリサイクル性の高いアルミ缶のミネラルウォーターを置き、海で分解されるアメニティも導入した。そのうち、使用後の歯ブラシはカキ養殖用具として再利用する構想だ。
ただし課題はコスト。環境に配慮した製品は流通量が少なく、従来品より費用が高い。田村支配人は「普及すれば量産され、価格も下がるはず。利用客が環境意識を高めるきっかけになれば」と期待を込める。

一人ひとりがルールを守って、ごみ箱へ
一人ひとりがルールを守って、ごみ箱へ

広島県環境保全課の秋山日登美課長は「負担が増える分については、導入支援をしている。ただ永遠に支援していくわけにもいかない。最終的には消費者の理解が必要。ある程度値段が高くなっても環境配慮の製品を使う意識が社会に根付くことが大事だと思っています」と語る。
さらに「リサイクルできるものは正しいルートへ乗せ、そうでないものはルールに従って処分する。一人ひとりが当たり前を守ることが最終的には大きな力になって、海を守る力につながる」と呼びかけた。

海洋プラスチックごみ対策は特別な行動ではなく、日常の選択の積み重ねだ。宮島で始まった試みは、小さな行動でも社会を動かせることを示している。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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