3月1日、大学生の就職活動が正式に解禁される。しかし実際には、その前に内定を手にしている学生も少なくない。近年、選考の現場では「AI面接」などデジタル技術の活用が急速に進み、就職活動のあり方は大きく変貌している。
「AI面接」が当たり前に
就職活動を行う学生たちの間では、今新たな選考スタイルが当たり前になりつつあるという。

「私はAI面接を受けました」という宮崎大学の3年生は、「バーチャルの人が出てきて、一緒に会話をする。リアルな人はその画面には一切映らずに、1対1で面談する感じ」と話した。
パソコンやスマートフォンに向き合いながら選考が進んでいくという。

「AI面接」は、いったいどのような感じなのだろうか。記者も体験してみることに。

AI:『これまでの経験で困難を乗り越えたことはありますか?はい、か、いいえのボタンを押して下さい』
このあと「苦労や困難を乗り越えた経験」「その背景と結果」など、実際の面接さながらに、深堀りする質問が続いた。「組織をまとめた経験」「自分の意志を貫いた経験」など様々な受け答えを行い、約30分で面接は終了。画面越しに人間と対峙する「Web面接」とは似て非なる、AI特有の無機質さと緊張感が混ざり合う独特の感覚だった。

記者が体験したのは、日本最大手のAI面接サービス「SHaiN」。

面接終了15分後には、「理解力」や「表現力」といった項目や、次回の面接で再確認することが望ましい資質などが、レポートにまとめられていた。
12年ぶりに面接を受けた記者の結果は…? 一番の特徴は「ポジティブ」だったと教えてくれた。レポートでは、「バイタリティ」「イニシアティブ」「柔軟性」「計画力」などの資質それぞれについて、上位何%に当たるかが記されていた。
デジタル化のメリットは
このようにデジタル化が進む中、内定まで一度も対面しないケースもあるという。これは、地方在住の学生にとっては、メリットともとらえられる。かつては東京での面接1回のために数万円の交通費をかけていた地方の学生も多かった。デジタル化は学生にとって経済的な負担を軽減し、選択肢を広げるメリットがある。

一方、企業側にとっても、膨大なエントリーをさばき、いち早く優秀な人材を確保するために、デジタル導入は避けては通れない道となっている。

AI面接サービスを提供 タレントアンドアセスメント 山崎俊明社長:
「面接ガチャ」もなくなる。学生は自宅で自身のスマートフォンで面接を実施できるため、学業をおろそかにせずに面接にエントリーできるのはすごくいいと言われる。

こうした最新ツールが普及する背景には、深刻な人手不足による超売り手市場がある。就職率が90%後半、97%から98%といった高い水準になっており、大学の就職支援課には近年「内定がもらえない」という相談が減っている一方、エントリーシートの添削や面接練習を希望する相談が非常に増えているという。
形骸化する「3月解禁」ルール
そもそも就職活動の3月解禁は、政府が学業への配慮などを目的に経済団体に求めているものだ。

具体的には3月から企業説明会などの広報活動をスタートさせ、6月に面接などの選考を解禁するというルールが定められている。
しかし現実には…

宮崎大学 共創人材育成課 中原智晃さん:
早い学生では大学3年の10月、夏休み明けに窓口へ内定報告に来る学生もいる。
解禁を前に、インターンシップを通じた「実質的な選考」を行ったり、すでに内定を出している企業も相次ぐなど、ルールは形骸化し、就職活動の早期化への懸念が広がっている。
学生の懸念と大学の困惑
ある学生は、大学3年の夏には会社説明会やインターンシップに参加したという。

3年の夏から就職活動を始めた学生は、「大学生は学業が中心なので、3年生の夏から就職活動を始めると学業がおろそかになる。企業が学業と就職活動の両立を考慮しているのか疑問に感じる」と話した。
就職活動を理由に授業を欠席する学生が増え、大学側も困惑しているという。宮崎大学の中原さんは「授業の教育の質を担保することがかなり難しくなっている」と現状を語った。
就職活動の早期化やデジタルによる効率化が進む中、学生たちは将来への思いを胸に3月の解禁日を迎える。

就活中の学生は「自分らしさを出しつつ、素直にこれまでの経験や今後のビジョンをしっかり話していきたい」と意気込みを語った。

東京藝術大学の岡本教授は、学生を間近で見ている立場から「エントリーシートなどでもAIを使ってシミュレーションする学生も多い」と話す。しかし「自分が若者の立場でAIに面接されるのはちょっと嫌だと感じる」と率直な思いを述べた。
一方で「企業側のニーズと若者のニーズのマッチングを考えれば、AIがその役割を果たしてくれるのも良いかもしれない」と、その有効性にも言及した。
取材に応じた企業側は、AI面接だけで採用を決定することはないと説明したが、今後、就職活動のあり方がさらに変わってくるかもしれない。
(テレビ宮崎)