2025年の宮崎はどんな年だったかを、FNNプライムオンラインの人気記事から振り返る。今回は、宮崎市の航空大学校でパイロットを目指して訓練に励む学生たちに密着した記事を紹介する。【2025年6月9日掲載】
宮崎県・宮崎空港に隣接する「航空大学校」。エアライン・パイロットを養成する学校だ。1000人を超える受験者から合格者は108人と、10倍を超える狭き門となっている。今回は、航空大学校・宮崎本校で学ぶ学生の1日を追いかけた。

航空大学校のキャンパスは宮崎・帯広・仙台の3ヵ所にあり、入学した学生は、まず宮崎で座学を受け、飛行機を飛ばすために必要な知識を身につける。その後、帯広→宮崎→仙台の順に場所を転々とし、フライトトレーニングを積み重ねていく。

宮崎市にある航空大学校は、今から71年前、当時の運輸省が設立した日本唯一の公的なエアライン・パイロット養成機関だ。

現在 宮崎キャンパスでは、2025年の2月末に入学した座学生とフライト課程の学生合わせて79人が学んでいる。今回は、フライト課程の学生の1日を覗いてみた。
午前6時 朝食前からフライト準備

午前中にフライト訓練を控えた学生たちは、早い人で朝食の前から準備に取り掛かる。天気図を見てフライトの際に注意するポイントに色を塗っていく。
午前6時45分 朝食

航空大学校は全寮制。学生たちは学校の敷地内にある寮で共同生活をしている。
午前7時10分 フライト準備

学生たちが次々と教室に入ってきた。フライト訓練は3、4人ずつの班に分かれて行う。

こちらは小川教官班。

張龍也さん(幼稚園生から志す):
飛行機のスピード感がかっこいいなと思う。

渡部樹さん(高2で初飛行機、感銘受ける):
目の前をエアライン機が通ったときは、ここにいて良かったなといつも思う。

椎原稜太さん(小5で憧れの機長に出会う):
自分が疲れているときこそ気を配れるようなパイロットになりたい。

このうち、野島光夏さんは、同期で唯一の女性だ。
野島光夏さん:
元々、父が飛行機や船が好きだったというのもあって、地元の航空祭などに参加していて、飛行機とかには興味があったので。
野島さんは防衛大学校に進学後、パイロットたちと触れ合い、人柄に憧れ、パイロットを志した。

ブリーフィングの前には、飛行経路の確認や天気図からフライトの時間帯の天気を予測するなど、準備を入念に行う。この日の行先は佐賀空港だ。
午前8時 教官とのブリーフィング

張龍也さん:
こちらは9時のエマグラムの予想になりますが、5000フィートから6000フィート帯で沈降性の逆転層が見られるということで、もし視程が悪くて何も見えないというような状況ですと、8500フィートに上がれば、視程は確保できると考えています。

小川泰司教官:
視程が悪くて、自分だけのナビゲーションに集中していると、きょういっぱいナビゲーション機がいるだろ、選択する高度が同じくらいになる、他機がいる場合、どっちに避けるのか、それとも自分たちが先行するのか…必ず自分で考えて決心して行動するというのをやってくれ。
午前8時40分 フライト訓練
入念なフライト準備を終えた学生たちは、いよいよフライト訓練開始だ。
訓練に使用されるのは、シーラス式SR22型。
4人乗りの飛行機だ。
操縦は片手で行う。
訓練前には機体のチェックを行う。
航空大学生 野島光夏さん:
チェックリストがあって、チェックリストに従って機体を飛ばすのに十分な状況か、異常がないか確認する。
この日は 離着陸の訓練、そして 宮崎と佐賀を往復する3時間15分のフライトだ。
訓練をする学生3人は、上空で操縦席を交代しながら訓練を行う。
宮崎でのフライト訓練は「有視界飛行方式」というもので行われ、雲との距離を水平方向に600m以上、上方向に150m以上下方向に300m以上あけた状態で飛行機を飛ばさなければならない。
この日は予想通り、視界が悪い状態…雲が行く手を阻む。雲の上に行くと天気はよくなるが自分の居場所が分かりづらく、下に行くと別の学校の訓練区域があり、他の機体の邪魔になる。
飛行機が動き続ける中で、より早い判断が求められる。
すると、島原半島付近で教官から「他の機体がいる」との指摘が入る。右側にいた飛行機を見落としていた。
上空では、自分から見て右側が優先。今回はこちらが避けなければならない。
しかし、瞬時にどう避けるか決心がつかず、教官の指示で高度を下げることになった。
フライトを終えた野島さんは…
野島光夏さん:
通るはずの高度に雲があって、避けなければならないというのがあって、そこの判断が結構難しいフライトだった。
午後0時40分 昼食
束の間の休息だ。
Q.みなさん、食事で意識していることは?
学生たち:
食べる順番。野菜から食べる。なるべく。
野島光夏さん:
学校の看護師の方から「食べる順番を気をつけた方がいい」とか、「納豆とかキムチとか発酵食品を取りなさい」みたいな話があった。
それにしてもみなさん食べるのが早い…
野島光夏さん:
このあと、さっきのフライトの振り返りがあるので、それに向けて急がないと…日にもよるけど、追われるときは結構忙しい。
午後1時 午前フライトの反省
野島光夏さん:
雲があることを予期して早めに気付けたのはよかったが、上に避けようという判断をしたが右側の方が明らかにあいていた。
小川泰司教官:
訓練前のブリーフィングで出した注意点が今日は本当に起こったわけだから、必ず注意点を出すだけではなく、それに対する対策を立てたうえでフライトに臨む。
学生たちについて小川教官は…
小川泰司教官:
計画通りにやるのであれば、ちゃんとできる状態にはあるので、あとは先行性と判断力を鍛えていけばもう十分パイロットになれる素質はあると思う。
Q.皆さんの授業態度は?
小川泰司教官:
Very Good!
午後2時 座学「航空力学」
航空機が飛行する際に動く力や飛行の原理などについて学ぶ。
午後5時40分 夜間フライト開始
訓練は午後8時頃まで続く。
野島光夏さん:
やっぱり景色がすごい。九州のいろんな海や、長崎の方に行ったら島がいっぱいあるとか、地図でしか見ていなかったのが眼下に広がっているのを見ると楽しいなと思う。
Q.どんなパイロットになりたい?
野島光夏さん:
まずは自分が立派なパイロットになるのが1番大事だと思う。最終的には後輩の女性パイロットたちが働きやすい職場環境を整えられるように、まずはその見本となれるようなパイロットになりたいなと思っている。
学生たちはこのあと、乗客などを乗せて飛行するための「事業用操縦士」と、視界不良の中でも安全に飛行機を飛ばすことのできる「計器飛行証明」のライセンスを取得して卒業。エアライン・パイロットになるための基盤ができあがる。
多くの乗客を乗せ、空を飛ぶ日を夢見る未来のパイロットたち。この宮崎から大空へ羽ばたけ!
(テレビ宮崎)