広島市植物公園で、季節を先取りする挑戦が行われている。
大雪の翌日から始まったのは、本来の開花時期よりも早く咲かせるための作業。3月の「さくらまつり」を訪れる人に春を届けたい――その静かな奮闘を追う。
38年ぶりの試み「サクラの開花促成」
降り積もった雪をスコップでかき出すのは、広島市植物公園の栽培展示課長・濱谷修一さん。普段は現場に出ることが少ない濱谷さんだが、サクラの開花だけは自らの手で挑戦する。

「もともと変な時期に花を咲かせることを専門にしていた。その経験もあって、自分がやろうと言って…」
園でサクラの開花促成が行われるのは1987年以来、実に38年ぶりである。今年は開園50周年の節目の年。何か弾みをつけたいという思いも背中を押した。
目標は3月20日開始の「さくらまつり」。例年より約2週間早い満開を目指し、残された栽培記録を参考にしながら準備を進めてきた。過去のデータでは、ビニールをかぶせてから最長30日で満開になるとされる。そのため、今回は開花の進みを調整できるように40日前から作業を開始した。
木を囲む“巨大な温室”づくり
枝を大きく広げたソメイヨシノ。その周囲に金属の骨組みを建て、高所作業車からビニールフィルムを1枚ずつ手作業で取り付けていく。木の周りを保温し、サクラに“春が来た”と感じさせる仕組みだ。
木をすっぽりと覆うほどの“巨大な温室”をつくり上げるのは、想像以上に大変な作業。
濱谷さんは「これで何日…?今日で4日目かな」と笑う。その苦労を語る声さえ、どこか楽しそうだ。成功するかどうかは「神のみぞ知る」としながらも、「成功させます!」と言い切った。
雪の中で続いた地道な作業。ビニールに覆われたその木が、約1カ月後には華やかな景色へと変わるはずだ。
訪れた人に満開のサクラを楽しんでもらいたい――令和の花咲かおじさんの願いが、まだ硬いつぼみにそっと降りかかる。
(テレビ新広島)
