3400万人が苦しむ「孤独」の解決なるか 遠隔で分身を操作・接客するロボットカフェとは

カテゴリ:国内

  • 東京都内に期間限定でロボット・カフェがオープン
  • 重度の障害者の代わりに働く「分身ロボット」を開発
  • 外出する際に困難を伴う3400万人の移動制約者の「孤独」の解決にもなるか

会話も楽しめる「分身ロボット」

期間限定でオープンしたカフェ「DAWN」

「難病や重い障害のため、身体を動かすことができない。でも働きたい」
これまでこうした想いをかなえることは難しかった。しかし、自分の代わりに「分身」が働いたらどうか。

東京都内、12月7日まで期間限定でオープンしたカフェ「DAWN」。
このカフェでは、「分身ロボット」がお客さんと話し、注文を取り、品物を運んでくれる。ロボットを操作するのは、全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)や事故による脊髄損傷で手足が動かない20代から40代の10人だ。

彼らは「パイロット」と呼ばれ、高さ約120cmの分身ロボットを自宅から遠隔操作する。カフェではロボットはお客さんの座るテーブルの間を動き回り、お客さんはロボットとの会話を楽しむことができる。

重度の障害者にも「働く場」を

ロボットベンチャー企業「オリィ研究所」吉藤健太朗代表

このカフェの企画運営を行っているのは、ロボットベンチャー企業「オリィ研究所」代表の吉藤健太朗さんだ。吉藤さんは、2010年に分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」を開発し、重度の障害のため働くことのできなかった人たちに「働く場」を作ってきた。今回カフェを開設した理由を、吉藤さんはこう言う。

「(重度の障害を持つ人に)いきなりテレワークをと言っても難しいですが、カフェで働くのはハードルが低いのではないかと。なぜこれまでテレワークで接客をできなかったのかを考えると、接客に適した分身(ロボット)がなかったのですね。そこで今回、実験を行っているんです」

寝たきりだったパートナーの強い夢

番田雄太さん

実はこのカフェ構想は、2年以上前からあたためていた。そのきっかけとなったのが、開発パートナーだった「寝たきり秘書」番田雄太さんとの会話だった。番田さんは4歳で交通事故にあい、人生のほとんどの時間を病院の中で寝たきりで過ごしてきた。

「もともと番田と2年半前から『カフェとかやれたらいいよね』と言っていたんですよ。番田と『どうせやるなら友人たちも入れて、寝たきりカフェしよう』と話していました」

同じような状況の子どもに自分と同じ想いはさせたくないと、番田さんがオリヒメの開発に参加したのは2014年。しかし昨年9月、番田さんはカフェの実現を見ることなく若くしてこの世を去った。

「番田が亡くなってから、やる気力を失ったんですけど、やっぱりカフェをやることによっていろんな人たちが働けると思い立ちました。番田はこういう場にいないのは、むちゃくちゃ悔しいと思いますよ」

吉藤さんは、2020年には常設店を作りたいと語る。
「今回10日間やるのでだいぶデータも集まるでしょうし、(分身ロボに)どんな機能が必要かとか見えてくると思っていて、足りないものがあったら研究していきます」

分身ロボットで「孤独」の解決を目指す

分身ロボットは重度の障害を持つ人だけのためではない。オリィ研究所では、分身ロボットによって、いまや社会問題化している「孤独」の解決を目指している。

「現在日本には、病気やけがで学校に通えない子どもが4万人以上います。また、15歳〜39歳人口における広義のひきこもりの推計数は54万人、ひとり暮らし高齢者は900万人という数に上ります。身体障害・高齢・育児などの理由で、外出する際に何らかの困難を伴う「移動制約者」は3,400万人を超えるというデータもあります。孤独は、鬱や認知症の原因になるともいわれており、確実に社会問題化しています」(オリィ研究所ウエブサイトより)

分身ロボット開発の原点は、吉藤さん自身の不登校の経験だ。

移動やコミュニケーションに問題を抱え、社会にアクセスできず孤独に苦しむ人たちを救うため、吉藤さんは分身ロボットの改良を続けていく。

(執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款)

なんでもAIの他の記事