モモが食い荒らされるなどの被害が相次いでいた宮城県登米市で8月、1頭のクマが箱わなにかかった。仙台放送のカメラは自治体と関係者の許可を得て、その捕獲から対処までの一部始終を撮影。冷静に行われた現場の対応と、野生動物との“最前線”を伝える。
※本記事および映像は、クマの出没が続く中での注意喚起・安全啓発を目的として、自治体および関係機関の許可を得たうえで撮影したものです。処分の場面は含まれておらず、クマ被害への対策とクマの生態理解を深めるための内容として掲載します。
「モモが全部食べられていた」
登米市中田町上沼の住宅街。その一角にある果樹園で、8月17日、モモが食い荒らされる被害が相次いだ。目撃情報も寄せられ、野生のクマによるものとみられたことから、市と地元の猟友会が連携し、付近の住宅敷地内に「箱わな」を設置。餌としてモモが入れられ、警戒が続けられた。
威嚇、うなり声…箱わなにかかったクマ
そして8月20日早朝。設置した箱わなに、体長1メートルを超えるオスのクマ1頭がかかっているのが確認された。
取材班は、関係機関の許可のもと、その様子をカメラで記録。金属製の檻の中で、クマは低く唸るような声を上げながら、カメラに向かって威嚇する様子を見せていた。
檻の外からもその緊張感は伝わってくる。体の大きさ、動き、音、鋭い牙と爪。そこにいたのは間違いなく“野生”だった。
プロが見極めた現場の変化
仕掛けた餌のモモは、朝の時点で一つも残っていなかった。箱わな内にいたクマはすでにモモを平らげた後で、落ち着きのない様子を見せていた。
この日は、今年に入ってからこの地域で続いていた出没のなかでも初の捕獲となった。地元・登米支部の猟友会関係者は「目撃件数は多かったが、こうして無事に確保できたのは初めて。住民の安心にもつながる」と胸をなで下ろした。
住民「子供もいるので心配だった」
撮影現場近くに住む住民は、「ほっとしています。子供もいるので心配でした」と語った。これまで、果樹園や道路沿いでの目撃情報はあったものの、実際に住宅近くでの捕獲は地域でも大きな話題になった。
背景に“ブナの実”大凶作…クマの市街地進出
2025年はブナの実の「大凶作」と予測されており、山間部で食料が不足していることがクマの市街地進出の一因とされている。
宮城県は「クマ出没警報」を発令。登米市に限らず、栗原市、大崎市、仙台市青葉区などでも目撃情報が相次いで報告されている。
他人事ではない クマとの闘い
今回、捕獲された現場はのどかな田舎町。一歩間違えば重大事故につながりかねない状況の中、関係者により迅速で冷静な対処が行われた。
私たちの生活圏と野生動物との距離が近づいている今、必要なのは「正しい知識」と「冷静な備え」。恐怖をあおるためでなく、現実を伝え、命と安全を守るための記録として本記事と映像を掲載する。